「マフラー」は、エンジンが付いている車であれば、どんな車種にも付いている当たり前のパーツ。
しかし、車の後ろに回ってみると、車種によって、左右どちらかに1本しかないもの、左右にひとつずつあるものなど、その本数や位置はマチマチで全く統一されていません。
なぜマフラーの本数や位置はバラバラなのでしょうか? 差別化する必然性は、技術が発展した今もあるのでしょうか?
本稿では、高級輸入車からコンパクトカーまで、あらゆるマフラーを見てきた元レクサス営業マンの佐々木亘氏が、その理由を解説。
マフラーの意義は時代とともに変わりつつあります。
文:佐々木亘(自動車コンサルタント)
写真:編集部、TOYOTA
かつてマフラーの「位置」にも意味があった
エンジンから排出された高温の排気ガスは、マニホールドからセンターパイプを通り、サイレンサーを通って外に排出されます。
エギゾースト機構のなかで、通称「マフラー」と呼ばれるのは、排気ガスの最後の通り道である「サイレンサー」の部分です。
エンジンは、エンジンルームの中央に配置されることが一般的で、マニホールドやセンターパイプも中央部分に配置されていることが多いです。
そこからパイプが湾曲し、排気口が右や左へと振り分けられます。部品点数や排気効率を考えると、真っ直ぐ来たパイプを、曲げてしまうことにはデメリットしかないように思えますが、これには2つの理由があります。
【1】「左右」の違いは引火を防ぐため
排気ガスは非常に高温で、引火物であるガソリンとは本来、できるだけ距離をとるべきものです。そのため昔の車は、給油口とマフラーの位置が左右反対になっていることが多く、給油口が運転席側であれば、マフラーは助手席側から出ていました。
ただ、現在は耐熱性能が向上し、マフラーの温度上昇をコントロールできるようになったため、ガソリンの引火のリスクがなく、ガソリンタンクとマフラーを近づけても危険性は少なくなりました。
現在も、昔の名残や下回りの部品取り回しから、給油口と反対側に出ている車のほうが多いです。
マフラーの「本数」は大排気量の証!?
【2】「本数」の違いは排気量と静粛性を考慮したため
エンジン排気量が大きくなると、燃料の燃焼量が大きくなり、排気ガスの量も増えます。ひと昔前は、「マフラーの本数は大型排気量の証」であり、一種の「ステータス」であったため、エンジン排気量に合わせて、マフラーの本数を増やしていました。
しかしながら、現在では、小排気量車でも2本出しのマフラーがあり、排気量に関係なく本数のバリエーションが増えています。
また、消音性を高めるために、複数本のマフラーにしている場合もあります。
静粛性を高めるには、サイレンサーの径を大きくしたいのですが、法律で規定されている車両の最低地上高を確保する必要があるため、サイレンサーの径を大きくするには、そのぶん車高を高くする必要があります。
この時、サイレンサーの数を1つから2つに増やすと、サイレンサーの径を大きくしたのと同様の消音性を得ることができます。
つまり、スポーツイメージが強くなる「2本出しマフラー」は、サイレンサーの個数が増えるために、「排気音量アップ」というよりも「音量ダウン」となっているケースもあるのです。
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