イメージ先行での酷評? R33スカイラインは間違いなく正常進化だったのだ!!
実際に両モデルを乗り比べるとR33型は操舵に対するノーズの反応はやや「タメ」があり、シャープにキビキビ反応するという性格ではない。が、けっして「もっさり鈍重」などと言う動きではない。
フロントのサス横剛性は明らかにR32型よりも高まっていて、より高い速度でのコーナリングや、連続する左右の切り返し時の接地感はR33型が圧倒的に高い。高速コーナーで路面のギャップ通過するような場面での車体の安定性もR32型の比ではない。荷重変化を使って意図的にテールスライドに持ち込んだ時の動きも穏やかで、スライド量のコントロールも容易だ。相対的にR32型はテールスライド状態になる限界が低く、そのぶん軽快なフットワークにも感じられるのだが、スライド量やノーズの向きをコントロールするのが忙しかった。後輪の接地性はR33型の高さを知った後だとちょっと心もとなく感じたほどだ。もちろん、R32型だって当時のライバル車から見ればズバ抜けた操安性能だったのだが、R33型はそれをしっかりと正常進化させた、熟成のハンドリングだったのだ。
R33型で批判されたロングホイールベースだが、同時期のBMW3シリーズ(E36型)は2700mmでR33型と20mmしか変わらない。R32型スカイラインと比べれば85mmも長いのだが、当時でもBMW3シリーズの操縦性は高く評価され、このクラススポーティサルーンのお手本とされていた。つまり、ホイールベースだけを根拠にR33型を鈍重だと評価するのは少々乱暴な論調と言わざるを得ない。3シリーズの次期型、1998年に登場するE46型のホイールベースは2725mmへとさらに延長されるが、より洗練されたスポーティセダンとしての評価を高めている。
R33型の操縦性に対する酷評の要因には、直列6気筒2.5リッターターボ(RB25DET)の出力特性も影響していたのではないかと思っているのだ。「リニアチャージコンセプト」と名付けられたこのターボエンジンは、圧縮比を当時のターボエンジンとしては高めの9.0に設定し、レスポンス重視のタービンを採用。過給圧をやや低くすることなどによって全域でトルクを高めるチューニングとした。これって、2010年代あたりから欧州車で広まっていったダウンサイジング過給エンジンの考え方に酷似している。実際、R33型スカイライン「GTS25t」のエンジンは、従来の2リッターターボと比べてターボラグが小さく、2000rpmあたりからジワリとトルクが立ち上がり、フラットトルクのまま回転を高めていく。いわゆるドッカンターボの対極のようなエンジン特性で、あたかも3リッタークラスのNAエンジンのようなドライバビリティだったのだ。RB25DETのスペックは250ps/6400rpm、30.0kgm/4800rpmだった。
現代的な評価軸で見れば、とても優れたエンジンチューニングなのだが、93年当時の感覚では「刺激に乏しいエンジン」、と評価されても致し方なかった。このエンジン特性と、熟成度を増した懐の深い操縦性、そこに延長されたホイールベースというイメージがが相まって、R33型スカイラインは「軽快さを失った駄作」のような酷評を得てしまったのだろう。
しかしスカイラインは本来、ファミリーカーとして使える4ドアセダンにもかかわらず、スポーツカーのような高い操縦性を併せ持つクルマとして存在してきたはず。その意味ではR32型が異端的存在で、R33型で正常進化をして本来のコンセプトに立ち返ったと見るべきだろう。時代を先取りした意欲作で、それが当時は理解されなかったのも過小評価の一因だったのだ。
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