1989年にあたる平成元年、日本はバブル経済真っ只中で、消費税が導入されたのもこの年。世界に目を向けても、ベルリンの壁が崩壊したり天安門事件が起こるなど、歴史的な出来事が起こっている。そんな平成元年は、国産の名車が数多く生まれたヴィンテージイヤーでもあった。
文/木内一行、写真/スバル、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ
■16年の時を経て復活した伝説のネーミング【スカイラインGT-R】
日産が世界に誇るスーパースポーツ、GT-R。その歴史はハコスカから始まり、ケンメリでいったん途切れたものの、1989年にデビューしたR32で16年ぶりに復活。再びレースで勝つことを目的に開発され、我々をアッと言わせるメカニズムを盛り込んできた。
エクステリアは、ワイドなタイヤを装着するために標準車よりも60mmワイドなブリスターフェンダーを採用。強力なダウンフォースを得るため、大型のリアスポイラーも装着。ボンネットは軽量なアルミ製だ。
圧巻なのがパワートレーンで、エンジンは280ps /36.0kgmを発揮する2.6LDOHCツインターボのRB26DETTを搭載。この強大なパワーを確実に路面へ伝えるため、駆動方式はトルクスプリット型4WDのアテーサE-TSが採用された。
そのほかの部分も抜かりなく、アルミ製対向ブレーキキャリパーや鍛造アルミホイールなどを投入。まさに、勝つことを目的に開発された最強の市販車なのである。
こうして復活したGT-Rは、レースシーンでも圧倒的な結果を残す。1990年から全日本ツーリングカー選手権に参戦すると、同選手権が終了する1993年までの4年間で全戦優勝。前人未到の29連勝を達成し、新たな伝説を作った。
■欧州車に挑戦状を叩きつけたトヨタの新フラッグシップ【セルシオ】
メルセデスベンツやBMWといった欧州プレミアムメーカーに対抗するべく、トヨタが北米で新たに展開したレクサス。そのフラッグシップとして開発されたLSの国内仕様が、1989年10月にデビューしたセルシオだ。
セルシオは「ワールド・ワイドに通用する世界トップレベルのハイ・パフォーマンス・ラグジュアリーカーの創造」を基本コンセプトに開発された。
存在感抜群で機能性にも優れたボディや、高いクォリティで仕立てられたインテリアはフラッグシップにふさわしいものだし、エンジンは最新技術を投入して高精度で作られた新開発の4LV8ユニットを搭載。サスペンションは前後ダブルウィッシュボーンで、最上級グレードには電子制御エアサスペンションのピエゾTEMSも採用された。
もちろん、これらが生み出す走りは世界基準で、優れた直進安定性や操縦性、極限ともいえる静粛性を実現している。
ちなみに、セルシオを開発するにあたって北海道にテストコースを作ってしまったことは、あまりにも有名な話だ。
結果的には、レクサスが日本で開業するとセルシオはLSに変更されたため、3世代16年でその名は消滅した。しかし、初代のデビューは欧州プレミアムメーカーを震撼させたことは間違いなく、それほどセンセーショナルなものだった。
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