走りの評価に厳しい鈴木利男氏に「このクルマは最高だ」と言わせたい! という、忘れた頃にやってくるこの企画。今回は日本トヨタ、中国BYD、そして韓国ヒョンデと、三つの国の三つのメーカーが送り出すEVに乗っていただいた!!
※本稿は2024年2月のものです
文/鈴木 利男、写真/TOYOTA、BYD、HYUNDAI
初出:『ベストカー』2024年3月26日号
■本日の対局はEVアジア選手権!
日本を代表するレジェンドレーサーにして、R35 GT-Rの開発ドライバーとしても大活躍した鈴木利男氏に、編集部が選んだクルマに乗ってもらい「参りました!」と言わせたいこの企画。今回は日本、中国、韓国の最新EVを評価するEVアジア選手権となった。
■EV大国・中国からやってきた電気仕掛けのイルカ!! BYD ドルフィン
試乗したのは容量58.56kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を積む「ロングレンジ」。204ps/31.6kgmのFWD車だ。
スムーズに走るのはEVだから当然として、ロードノイズ、風切り音が少なく静か。また、ストローク感のあるサスペンションで乗り心地も良好だ。
ADAS(先進運転支援装置)はやや過敏で、車線変更時に、後ろのクルマとの距離が充分にある場合でも危険と判断し、思いのほか強い力でステアリングを戻そうとするのは初めてだと驚く(オフにもできる)。警報音が大きいことやスイッチ類が少し使いにくいことなど気になる部分もあるが、走り自体はいい感じ。
以下、テスト走行中の利男氏のコメント。
「パワーは充分でボディもしっかりしています。最近のクルマではめずらしくストローク感のあるサスペンションで、乗り心地がいいです。人によってはボディが動くのはイヤだと言う人もいますが、このクルマは前後のバランスが取れていて前のめりになったりしないし、いいですよ。
ただ、路面が悪いところだとフロアに振動がきますね。突き上げが大きい場面もあります。また、大きなガラスルーフがあるせいか(ロングレンジに標準装備)、上屋の重さも少し感じます。
快適な柔らかさはこのクルマの最もいいところでしょう。車格、価格以上の走りで、ちょっとびっくりしました」
●鈴木利男の評価
サスペンションはストローク感がありながら節度感もあり、乗り心地は今回の3車で最もよかった。その分うねった路面での動きの収束に時間がかかる面はあるが、ボディがしっかりしていて前後のバランスもよく、思いどおりにリアに荷重をかけられる。全体的に柔らかな動きで快適性が高かった。
ステアリングのセンター付近に不感地帯があるが、そのフィールが柔らかな走りには合っていて、慣れると心地よくなる。
■日本再上陸を果たした半島からの刺客!! ヒョンデ KONA
容量64.8kWhのリチウムイオン電池を搭載する「ラウンジ」に試乗。204ps/26.0kgmのパワースペックで航続距離541kmのFWD車だ。
斬新なデザインと装備で話題となったアイオニック5、燃料電池車のネッソに続く日本販売第3弾モデルで2023年秋に登場。アイオニック5はEV専用車だが、KONAは本国ではガソリン車もある。
ドルフィンよりサスペンションが締まっており、乗り心地も硬め。その分スポーティな乗り味だが、利男氏の評価はどうか?
「パワーは同等ですが、トルク感はBYDのほうがありましたね。ロードノイズ、特にリアから聞こえる音が大きめです。BYDが静かだったので、余計に気になりますね。
サスペンションのストローク感がなく、バタつきを感じます。特にリアがバタつく感じで、タイヤ(クムホECSTA)の硬さもその要因かもしれません。また、ステアフィールも気になります。重さを感じるし、戻す力がセンター付近で強めに出る違和感のある動きをします。
でも、足が締まっているから、うねった路面での動きは抑えられています。シャキッとした感じが好きな人は、BYDよりこちらのほうが好ましく思うかもしれません。
強く利かせようとすると、けっこう踏力が必要なブレーキも違和感があります。EVの回生ブレーキはやはり難しいのかもしれませんが、BYDでは違和感はなかったので、改善を求めたい部分ですね。
ただ、モニターがワイドに広がる未来感のあるインテリアは、こういう新しい感覚が好きな人にはたまらないでしょうね」
●鈴木利男の評価
硬めのサスペンションでスポーティだが、道路の継ぎ目でタイヤがバタつくし、路面のミューによってザラザラ感を感じることもあった。また、ステアフィールに違和感があり、ロードノイズも大きめ。踏力が必要なブレーキも改善の余地があるように思える。
bZ4X同様、もう少しサスペンションを動かしたい。最近のクルマは足を動かさず、ダンパーとタイヤで吸収しようとしていることが多いが、このクルマもその方向だ。
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