歴史的な日産とホンダの協業発表から数日。具体的な内容は電池と駆動系のことしか表面化されなかったが、この先にはどのような展開が待ち受けているのだろうか。国沢光宏氏が分析する。
文/国沢光宏、写真/ベストカーWeb編集部、日産、ホンダ
■会見時に日産とホンダの対応に温度差が?
ホンダと日産の協業の件、さまざまな情報が流れ飛んでいる。協業発表時の会見で一番興味深かったのは、最後に記者団から「握手のカットをお願いできますか?」とリクエストされたのに断ったこと。
また、記者会見で日産の内田誠社長はゆったり構え、協業の内容についても制限をかけなかったのに対し、ホンダの三部敏宏社長、楽しそうじゃなく協業の内容も電池とeアクスルのことしか話に出さなかった。
決定的だったのは記者団からけっこうな項目の質問を受けたのに、答えに”ほぼ”具体的な内容が含まれなかったこと。この件、「これから交際します。まだ手も繋いでいませんが」という発表でしたね、という記事を書いたのだけれど、いろんな人から「面白かった」とか「やっぱりそうですよね」という連絡をいただいた。
それから数日経った。改めてホンダの日産の協業について分析したい。
■日産側からホンダに協業について切り出したというが……
協業の難しさについては『日産とホンダがついに歴史的提携へ? 突如巻き起こった協業報道!! 目的はEVでの巻き返しなのか』という記事で当日ベストカーWebで書いたとおりだと考えていい。
破綻しそうなメーカーじゃないかぎり、相手側の社内基準を受け入れることなどしない。少なくとも4~5年スパンでホンダと日産が共同開発したクルマなど出てこないということ。どちらかが破綻しそうになれば別ですけど。
状況から考えると「付き合っていただけますか?」という申し込みは、お互いの弱みを相談している時に日産から切り出したらしい。ナニかといえば電池だ。電気自動車のキーテクノロジーは電池にほかならない。
どんなに頑張って車体を作ったって、高価だったり、性能低かったりする電池しか持っていなければ戦えない。加えていい電池を安価に入手するには、規模が必要。ホンダも日産も、規模で厳しいという共通認識を持っていた。
ホンダからすると「日産は困っているだろうな」。日産からしても「ホンダの規模だと難しいでしょうね」。お互いの弱みが手に取るようにわかる。ホンダにとって電池の話は悪魔のささやきみたいなもの。もちろん、お付き合いの申し込みを受けた後も自社調達を考えたことだろう。結論は「やっぱり無理」。
電池である程度お付き合いを容認したら、もう少し進みたくなる。企業同士の関係も男女交際と同じ(笑)。電池をタイヤや変速機のような部品だと割り切っちゃえばいい。クルマの味に直結するような内容までは許せないが、電池やeアクスル(駆動系)くらいまではいいか、ということです。どちらかというとホンダが受け身のようだ。日産はもう少し進みたいように見える。
■電池と駆動系の先は資本提携まで進むのか?
日産、車載OSくらいまでは協業したいように思う。実際、車載OSも規模が重要。車載OSとはウィンドウズやmacOSのようなもの。ADASやマイクログリッドなどを効率よく使うために必要になる。
トヨタは「アリーン」という新世代の車載OSを開発中だ。日産とホンダも別々の車載OSを開発しようとしているのだけれど、共用化すれば大幅なコストダウンが可能。しかも車載OSはクルマを動かすための文法なので、クルマの味や個性と関係なし。これまたタイヤや変速機のようなもの。
日産からすれば「そこまではいいでしょ」。ホンダが「もう少し待って」というイメージ。協業自体あまり積極的でないため、先走りされても困るということでしょう。もっといえば協業発表そのものだって前述のとおり、「これからお付き合いしようと思っています」レベル。
電池については両社揃って喫緊の課題だし、すでにホンダも日産系のAESCの電池を軽商用EVの「N-VAN e:」で採用するのでトントン拍子に進むと思う。eアクスルもハードルは低いだろう。
そこからはどこまで進展するか現時点だと読みにくい。つきあい始めて「相性いいね」となったら、資本提携まで含む次のステップに進む可能性はあると思う。といった意味も含め「交際宣言」です。
さてさて。2024年3月19日にスバルがパナソニックとの協業を発表した。こちらも電池。テスラなどと同じ円形のリチウム電池をパナソニックから調達するようだ。最先端の電池をリーズナブルな価格で供給してくれれば成功。
トヨタはパナソニックに散々煮え湯を飲まされて絶縁状態になったが、スバルにはテスラに見せるような笑顔でお付き合いしてくれるのだろうか?
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