マツダvsスバル ガチ対決 4番勝負【4WD 安全装備 デザイン 業績編】

■デザイン対決

(TEXT/清水草一)

 マツダ対スバルのデザイン対決。これは誰が見てもマツダの勝ちだ。といっても、最近のスバルは失敗がないので、それほどの大差というわけではなく、両社ともに頑張っている。ただ、デザインに関する基本的なスタンスがまったく異なる。

「クルマに命を与える」をコンセプトに、生命感、躍動感のあるデザインを追求したのが、マツダが現在採用している「魂動(こどう)デザイン」だ。これから登場するモデルは、その次世代型となる

 マツダはデザインで世界の頂点すら目指していて、実際にロードスターは頂点に君臨している(断言)。マツダ3のデザインも、あのクラスの頂点かどうかはともかく、頂点レベルにいる。

 CX-5のデザインだって、ジャガーEペイスあたりに決して負けていない。コンセプトモデルを見ても、ヴィジョンクーペは現在世界一レベル。デザイン的にいまひとつなのはデミオだけだ。

 対するスバルは、デザインで頂点を目指そうという意図はまったくない。狙っているのは、質実剛健な先進性の表現、といったあたりではないか。

 現行モデルは今後もキープコンセプトを続け、大きな冒険はせずに、じわじわと熟成を図っていくんじゃないか……。

「安心」をイメージさせるソリッドな“塊感”をベースに、「愉しさ」を感じさせるダイナミックな躍動感を融合させたのがスバルのデザインコンセプト「ダイナミック×ソリッド」だ

 それにしても新型フォレスターのデザインは物足りなかったが、失敗というほどではない。

 スバルを買う人は、大きな失敗のない、わりとフツーで適度にカッコよくて安心できて質実剛健なスバルデザインを期待しているだろうし、それはそれでいいんじゃないか。

 欲を言えば、もうちょっとカッコいい質実剛健を見たいところではある。

■業績対決(2019年3月期決算で比較)

(TEXT/福田俊之)

「似て非なるもの」ということわざがあるが、マツダとスバルの年間売上高は3兆円を超えて会社の規模からみればほぼ同じ中位クラスの乗用車メーカーである。

 ところが、両社の財務諸表を比べるとグローバル販売台数や営業利益率、そして配当金を支払う基準となる配当性向などが極端に異なることがわかる。

 例えば、2018年度の新車販売はマツダが約156万台に対して、スバルは約99万台。両社とも前の年の実績に比べて落ち込んだが、その差は約57万台も開きがある。

 市場別にみても、スバルにとってはドル箱の米国で約65万台以上を販売したが、マツダはその半分以下の約28万台。逆に国内はマツダが約21万台に対し、スバルは度重なる検査不正問題などが販売にも影を落として前年度比28.1%減の約13万台と振るわなかった。

 また、世界一の自動車大国の中国市場では苦戦を強いられたマツダでも約24万台を超えたが、スバルはわずか約2万2800台だった。米国偏重の一本足打法で稼ぐスバルと、分散型のマツダとは似ても似つかぬ販売戦略だ。

 スバルは、リコールによる品質関連費用や今年1月に発生した電動パワーステアリング装置の不具合による主力工場の操業停止の影響などで本業の儲けを示す営業利益は前年に比べてほぼ半減したが、それでも営業利益率は6.2%を維持。トヨタ自動車、スズキには及ばなかったが、ホンダや日産、三菱自動車よりもはるかに上回る。

 一方マツダだが、利益率はわずか2.3%と低く国内自動車メーカー7社では最下位。業績面ではクルマを売っても儲けが少ないマツダに比べれば、現時点では“トランプ関税”問題などのリスクを伴うが米国一点張りのスバルに軍配を上げざるを得ない。

 ただ、会社の「決算報告」はいわば、経営の舵取りをする「社長の通信簿」。取引先や株主などからよくも悪くも手腕や力量が問われる。マツダとスバルは昨年6月、偶然にも時を同じくして社長交代を行ったことから、2019年3月期決算は両社の新社長にとっては初心者マーク付きの見習い運転中。

 そのことを考慮しても、スバルの中村知美社長は相次ぐ不祥事で前社長から引き継いだ再発防止と組織風土の改革に明け暮れて展望が見えにくい。他方、マツダの丸本明社長は、強みと弱みを明確にしながら2025年までの中期経営方針と新世代の独自技術を搭載した新型モデルを公開するなど、スピード感をもって挑戦している。

 下り坂でブレーキがなかなか効かないスバルに対して、通信簿の成績は及第点スレスレでも研究開発費など将来のビジョンを描く経営戦略はマツダのほうが一歩リード。ブランド価値の向上とともに業績回復が期待できそうだ。

*   *   *

「業績対決」でも触れられているが、スバルの相次ぐ不祥事の問題、マツダの販売不振と、両社ともこの数年がまさに正念場だと言っても言い過ぎではないだろう。

 しかしぜひとも両社に忘れないでいてほしいのは、ファンの両社への支持は、まさに「ファンの方を向いたクルマづくり」によって支えられている、ということだ。今回の対決企画の端緒となったアンケート結果も、ある意味そうしたマツダ・スバルのクルマづくりが結実した結果とは言えないだろうか。

 どうか、ファンのほうを向いたクルマづくりを今後も続けていってほしい。

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