BYDが日本市場に参入する最初のモデルとして2022年に登場した、コンパクトSUVタイプのBEV 「ATTO 3」。テレビCMも放映されるなど、BYDやATTO3の知名度もじわじわと上昇してきており、筆者としても気になるモデルだった。
そんな折、都内で行われていていた某イベントで、短時間ではあったが、ATTO3に試乗することができた。内外装の質感や走りの質など、チョイ乗りで感じた範囲をお伝えしよう。
文:吉川賢一
写真:BYD、エムスリープロダクション
2024年度補助額は減ったものの、依然としてコスパは素晴らしい
日本国内における「ATTO 3」の2023年1年間の販売台数は、1200台ほどであったそうだ。日産「リーフ」は年間1万台程度、「アリア」は7000台程度なので、台数としては少ないものの、「そんなに売れたんだ」という印象を受けた。ATTO 3の価格は税込440万円(2023年の価格、後述するが現在は税込450万円)、2023年度は85万円もの補助金がもらえたので、税込335万円+諸経費で手に入るという、コスパのよさも影響したのだろう。
ATTO 3のボディサイズは、全長4455mm×全幅1875mm×全高1615mm、ホイールベースが2720mm。トヨタ「カローラクロス(全長4490mm)」と近いサイズ感だ。駆動用バッテリーは、BYD独自開発のブレードバッテリーを搭載(リン酸リチウムイオンバッテリー)し、バッテリー容量は約58 kWhで、最大航続距離はWLTCモードで470kmと、60kWhのリーフe+(税込525万円~)の450kmよりも長い航続距離だ。
ATTO 3は、2024年3月に一度目のマイナーチェンジを受けている。内外装の変更点は、ボディカラー追加(コスモスブラック)や内装色追加(ダークブルー)、テールゲートロゴ追加、センターディスプレイの大型化(12.8インチから15.6インチへ)などだが、このマイチェンでのメインの変更点はソフトウェアのバージョンアップで、デイライトOFF機能追加や近接警告音の変更、ナビ案内音量の変更、カラオケアプリ(詳しくは後述)などのアプリケーションを後から追加可能としたなど。商品力がより高められた。
ただ、これらのアップデートと同時に、ATTO 3の車両価格は10万円ほど上がって税込450万円となった。さらに2024年度は補助金に関する新ルールが適用され、ATTO 3への補助額は35万円にまで減っている。コスパのメリットが使えなくなったことは、BYDにとって大打撃となるはずだ。
特徴は「カラオケ」だけにあらず。欧州車風の足回りも光る
今回チョイ乗りさせていただいたATTO 3は、まさにマイチェン後のモデル。エクステリアは、BMWやアウディといった欧州車の雰囲気がどこか感じ取れ、顔つきは好みで分かれそうだが、テスラの「モデル3」や「モデルY」のグリルレス顔の異様さがないことで、馴染みやすい顔だといえる。
インテリアには、若さ溢れる遊び心が多彩に仕込まれており、たとえば、先ほど少し触れたように、中国国内で大流行しているというカラオケが、ATTO 3の車載アプリで楽しめる(マイクも有料オプションで設定)。回転できる15.6インチの巨大な液晶ディスプレイには驚いたが、慣れてしまえば何でもできる(カラオケだってできる)のは頼もしい。エアコン吹出口やドアの内張り、インナードアハンドルなど、様々な部分のデザインが個性的で、筆者は面白いと感じた。SNSでは、「(カラオケ含む)インテリアがダサい」というコメントをみかけることがあるが、むしろ現代の若者の感性に響くのはこちらかもしれない。
走行性能については、今回はチョイ乗りだったのでじっくり味わうことはできなかったが、走り出しの段差にあたったタイヤのタッチはとても柔らかめで、またボディも揺すられることがなく、車体の安っぽさは微塵も感じられなかった。コンパクトSUVにしてはオーバースペックにも思える235/50R18大径タイヤや、リアマルチリンクサスなど、足周りのスペックによる恩恵なのだろうが、ビーム式リアサスの高級BEVとは比べるまでもなく、乗り心地は良かった。高速道路を走ることはできなかったが、加速フィーリングや音も含めて、まるで欧州製のBEVにのっているかのようなフィーリングだった。
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