現代のクルマの運転席周辺には、さまざまな機能を使うためのスイッチ類が数多く配置されている。なかには一度も押したことがなかったり、その存在すら知らないものも!? そんなスイッチの機能や、押すべきタイミングとは?
文/井澤利昭、写真/ホンダ、写真AC
■ぬかるみにハマった時に役立つ「横滑り防止装置」オフスイッチ
新型生産車は2012年10月から、継続生産車では2014年10月から装備することが義務化され、現在街中を走るクルマのほとんどに搭載されているのが「横滑り防止装置」だ。
ESC(Electronic Stability Control)とも呼ばれるこの装置は、滑りやすい路面でクルマが曲がる際、スリップなどの危険な挙動をセンサーで感知し、クルマがカーブの外側に膨らんだり、内側に巻き込むのを防ぐ役割を担っている。
また、滑りやすい路面での加速時にタイヤの空転を抑え、パワーを路面へと確実に伝える「トラクションコントロール」機能も持ち合わせている。
この「横滑り防止装置」をオン/オフするために用意されているのが、クルマのイラストの下に波線があるマークが入ったスイッチだ。
「横滑り防止装置」は、クルマを安全に走らせるための機能だけに、常にオンの状態にしておくことが一般的。わざわざオフにする必然性がないため、このスイッチを押したことがあるという人は、ほとんどいないのではないだろうか。
では、どんな時にこのスイッチが必要となるのか? それは、ぬかるんだ道路や雪道などにはまってしまい、クルマが立ち往生してしまった場面。
「横滑り防止装置」の機能がオンのままだと、アクセルを強く踏み込んでも「トラクションコントロール」によってエンジンの回転数が上がらず、ぬかるみなどからの脱出が困難になることがあるため、その機能をオフにするスイッチが用意されているというわけだ。
大雨や雪によるぬかるみにはまってクルマが動かなくなってしまった! なんて場合は慌てずこのスイッチのことを思い出し、「横滑り防止装置」機能をオフにしてみよう。
■基本的には押す機会がない、安全運転支援システムを切るスイッチ
「横滑り防止装置」機能と同じく、安全運転を支援するシステムとして近年、搭載の義務化が進んでいるのが「衝突被害軽減ブレーキ」だ。
国産の新型車では2021年11月からすでに義務化が始まっているうえ、2025年12月以降は継続生産車への搭載も標準化が義務付けられているだけに、すでに街中を走るクルマの多くに、この機能が取り付けられている。
俗に「自動ブレーキ」などとも呼ばれる「衝突被害軽減ブレーキ」は、前方に走るクルマや歩行者などの障害物をカメラやセンサーなどで感知し、追突や衝突などの危険がある場合、警告音でドライバーに注意を促したり、自動的にブレーキを作動させ、事故を未然に防ぐシステム。
加えて、停車時や低速での走行中、前方に障害物があるにもかかわらずアクセルが強く踏まれた場合に加速を抑制する「誤発進抑制機能」を備えるものもある。
安全性に関しては非常に優れている一方、警告音をうっとおしく感じたり、稀に誤動作を起こすこともあり、ドライバーが任意でその機能をオフにすることができるスイッチも用意されている。
それがクルマが衝突する様子のイラストが描かれたスイッチだ。
このスイッチを押す(メーカーによっては長押し)ことで「衝突被害軽減ブレーキ」の機能をオフにすることができ、警告音や自動ブレーキを機能させなくできる。
また、同様の機能として、走行中のクルマが車線からはみ出さないようにハンドル操作をサポートする「車線逸脱防止支援」などがあるが、こちらもその機能をオフにするスイッチが用意されている。
とはいえ安全運転支援システムは、交通事故を未然に防いでくれるという観点から考えればやはり頼りになるもの。よほどのことがないかぎりは、これらの機能をオフにするスイッチを押す機会はないだろう。
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