日産はこのほど、2023年度決算を報告したが、通期営業利益は対前年比51%増の5687億円にものぼった。一見、絶好調に見える日産の今後は果たしてどうなのか、国沢光宏氏が鋭く切れ込む!
文/国沢光宏、写真/日産、ベストカーWeb編集部
■販売台数は当初目標を15%下回る結果に
34年ぶりの円安という強い強い追い風を受け、多くの自動車メーカーが史上最高レベルの決算発表をしている。とはいえ内容を詳細に見ていくと、単純に喜べない状況のメーカーも。
なかでも「大丈夫ですか?」と突っ込みたくなるのが日産だ。2023年度通期の営業利益は前年比51%増となる5687億円。そして2024年(2024年度)は営業利益6000億円を予想しているという。
ただ、発表内容を見ると「驚くほど楽観的ですね」と思う。説明しよう。
2023年度が始まる2023年4月時点で、400万台を販売すると発表した。結果といえば目標を15%も下回った。その理由として「多くの市場における競争の激化により、グローバルの販売台数は344万台に留まりました」。
日産の主張どおり競争が激化したか? トヨタを見てもわかるとおり、日本勢は有利である。
■トヨタの売れゆきが伸びたのは「メーカーもユーザーも得をする」から
なぜかといえば電気自動車の販売は伸び悩み、燃費のいいクルマの売れゆきが伸びたからだ。トヨタの売れゆきを見ると世界規模で大人気! 作れば作るだけ売れる。
日本市場を考えていただきたい。アルファードもノアもクラウンもプリウスもシエンタも生産がまったく追いつかない状況。納期1年という車種だって珍しくない。いや、商談すら行っていない車種が半分以上を占める。
そこでトヨタは売れゆきをコントロールするため、上級グレードしかラインナップしなくなった。ユーザーからすればフル装備車を買うとなれば高いものの、数年後のリセールバリューを考えたら高く買っても手放す時に高い値が付く。
「ベースグレードと同じ予算で豪華装備車に乗れる」ワケです。「メーカーもユーザーも得をする」は自動車ビジネスの理想系だと思う。
メーカーからすれば利幅の大きい上級グレードを値引きしないで売れるのだから2重においしい。5兆円を超えたトヨタの決算発表を受け、「収益増の理由は値上げ」と書いた大手メディアもあったけれど、調べればすぐわかるとおりトヨタの値上げ幅は日産より圧倒的に少ない。
前述のとおり、上級グレードを値引きしないで売っているため、当然ながら営業利益は増えるのだった。
■トヨタと対照的なビジネスをするのが日産?
対照的なのが日産だ。「いいクルマ作り」や顧客満足度なんか二の次。そのうえで大幅値上げ。リーフは100万円、ARIYAなんか120万円の値上げをしながら、充電ケーブルまでオプションとするなど、1台あたりの収益を追求しまくる。
電気自動車以外も値上げラッシュ。結果、台数が減っても利益は確保できるというビジネススタイルになり、そこから抜け出せなくなってしまった。
2023年度の決算を見ると、目論んでいた販売台数から15%も少なくたって利益を増やせている。一方、クルマの売れゆき減小は深刻。そらそうだ。お客は明らかに損をしている。
トヨタが高いグレードを値引きなしで売っても納期1年という盤石のビジネスをしているのに対し、日産は厳しくなってきたのだろう。日本各地でディーラーへの来客を促すキャンペーンを行い始めた。
「応募で200人に30万円の新車購入支援金」とか「試乗すると900人にその場で10万円の新車購入支援金」、「ノート/ノートオーラに乗り替えるのなら下取り5万円アップ」などなど。
本来ならクルマは営業マンの努力や熱意で売るモノ。くじ引きなんかやっていたら優秀な営業マンなど育たない。そればかりかベテランの日産営業マンが定年を迎えたり、優秀な人材は転職したりしてドンドンいなくなっている。
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