■高速道路で跳ね馬の「嘶き」を聞け!
ポテンシャルを知るために高速道路に移動した。加速車線でアクセルを踏み込むと40Φウェーバーは息継ぎすることなく7000rpm付近まで気持ちよく跳ね上がる。
大排気量の12気筒エンジンのトルク感がある胸のすく俊敏な加速は魅力的だ。とくに3000~6500rpmまでのレスポンスは心地よく、シフトアップするごとにパワーバンドにつながり加速してくれる。さらにご機嫌なのがエキゾーストノート。官能的で跳ね馬の「嘶き(いななき)」と表現したいほど惚れ惚れする。
加速性能に対して気になるのがブレーキだ。高いスピード域からの減速は意外と制動距離が必要なので調子に乗り過ぎて飛ばさないことだ。
512のブレーキは、前後ディスク式が採用されているが、マスターバックレスなので踏力の強弱でコントロールするスキルが求められる。とはいえ街中を普通に走っている限りブレーキに不安感はなかった。
ラック&ピニオンが採用されたステアリングにパワステ機能はない。ハンドリングは、遊びが多くけっしてクイックなフィーリングではないが、一般道では不満はない。
この時代のスーパーカーに共通しているのは、速度域が高くなるにつれてフロントが浮くような感覚があり直進安定性は褒められたものではないが、旋回性は高く評価できる。
コーナリングのよし悪しは装着したタイヤでかなり評価が変わるが、前後ダブルウィッシュボーンが採用されたサスペンションは、嫌な固さもなく乗り心地はまさに高級サルーン。
以前、後期型を試乗した際にも書いたが、先代モデルの365と比較するとリアサスペンションの動きが飛躍的に改善されている。
コーナーで旋回状態に入るとステアリングを握る手のひらにフロントタイヤの接地感が伝わってくるから限界域が判断しやすい。そしてアクセルを踏みトラクションをかければ、フロントノーズが内側に巻き込みながら危なげなく曲がってくれる。
ノーマルサスペンションのロール感は否定できないけど、旋回姿勢は安定している。エンジンが水平対向で低く搭載できたことと、トランスミッションを一体化してマウントしたことで前後の重量バランスがいいのだろう。
512BB前期モデルの生産台数は929台。現存している個体が何台あるのか不明だが、今回も1970年代の貴重なスーパーカーをインプレッションできたことに感謝しかない。
■Tipo F102B型 エンジン解説
365GT4/BBに搭載していた4.4L180°バンク12気筒エンジンを5Lにボアアップ。512BB初期モデルの燃料吸気システムは40φトリプルチョークのウェーバー4基を装備。
排ガス規制の問題で排気量が600ccも増したにもかかわらず最高出力は360psと先代モデルよりも20ps落ちたが、中間トルクは若干ではあるが向上した。
気候によって左右される傾向にある気難しいキャブレター仕様ではあるが、低速域から高回転まで息継ぎすることなく力強く加速する感覚はKing of Supercarと称される納得のポテンシャル。
縦置きにしたドライサンプ式180°V型エンジンは搭載位置を低くすることでMRとしての運動性能に貢献している。跳ね馬伝統の180°V型12気筒エンジンはテスタロッサへと継承されていく。
パフォーマンスカタログデータは0-100km/h加速は5.7秒、0-400m13.7秒。最高速度はスーパーカーの指針といってもいい302km/hを謳っていた。
●Ferrari 512BB 主要諸元
・全長×全幅×全高:4400×1830×1120mm
・ホイールベース:2500mm
・車両重量:1570kg(乾燥重量1400kg)
・エンジン形式:V型12気筒DOHC24バルブ
・総排気量:4943cc
・最高出力:360ps/6800rpm
・最大トルク:45.8kgm/4600rpm
・ミッション:5速MT
・駆動方式:MR
・サスペンションF/R:ダブルウィッシュボーン式
・ブレーキF/R:ベンチレーテッドディスク
・0-100km/h加速:5.7秒
・0-400m加速:13.7秒
・0-1000m加速:24.0秒
・最高速度:302km/h
コメント
コメントの使い方ここでラック&ピニオンとあえて言うならば、これより前のモデルはボールナット式でしょうか? この2つしか識らないです。