日本における新車の実に98%を占めているオートマチックトランスミッション(AT)。
今では6速・7速といったATが当たり前ですが、実は30年前まで“オートマ”は、3速・4速しかなく、燃費や伝達効率など性能面でもマニュアルトランスミッション(MT)に対して劣っていました。
しかし、平成に入ってからAT技術は目覚ましく向上し、現在では“10速”が登場するなど、多段化はもちろん、かつて「MTに対して劣る」といわれた苦手分野でも飛躍的に進化。
この30年間でATには、もの凄い勢いの技術革新が起こっています。
文:佐々木亘
写真:編集部、NISSAN、TOYOTA、VW
30年前まで“4速”しかなかったAT
1959年にトヨタが日本で初めて採用したATは2速セミATでした。
1968年にはホンダがN360に3速フルATを採用、国産車での採用はまだまだ珍しい時代でした。
1980年代に入ると、日本国内でATは広く普及をはじめます。1991年にはAT限定免許制度が開始となり、現在では新車販売台数の98%をAT車が占める“AT大国”となりました。今日では免許取得者の2人に1人が、AT限定免許を取得しています。
電子制御式4速ATでマイコン制御のオーバードライブ機構を初採用したのが、1981年のクラウンロイヤルサルーンです。
このあたりをきっかけに、ATの制御システムの改良をしながら、多段化へと技術発展していきます。
1989年、日産セドリック/グロリアに初めて5速ATが採用されました。ATの多段化は、適切なギア比選択によって滑らかかつ静かに走行するために必要な技術で、同時期にBMWやメルセデスも5速ATを導入しました。
ついに“10速”も登場!! 30年で急速に進んだATの多段化
それから12年後、2001年の新型BMW 7シリーズのデビューとともに6速ATが登場、その翌年には、7速ATがメルセデスベンツ Eクラスに世界初採用となりました。
この時代、日本ではATからCVT(無段変速機)へ多くの車が移行しており、多段ATの開発では欧州に一歩先を越されていました。
そんななか、2006年にレクサス LS460が世界初の8速ATを載せて誕生します。レクサスのフラッグシップカー LSが、日本初導入と併せてフルモデルチェンジし、日本でもAT多段化技術を高める流れが復活しました。
9速ATは、2014年ランドローバー・レンジローバー イヴォークで初採用となり、時代は10速ATを待望するようになります。
アイシンAW、ZF、ジャトコといったトランスミッションメーカーがこぞって10速ATを研究開発し、実車への採用が待たれました。そして2017年、レクサス LC500が乗用車世界初の10速ATを搭載し、AT多段化はひとつの区切りを迎えます。
2019年現在、11速、12速ATを搭載した乗用車はまだなく、実用域での10速以上の多段化は進んでいません。現在は、10速以上の多段化をすすめるよりも、10速ATの質を向上させる方向に技術革新がシフトしています。
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