1969年に初代S30型Zが誕生して以来数々の進化を遂げ、今年4月には新型が発売されるなど、絶大な人気を誇るZシリーズ。特に初代と2代目に関しては、某マンガの影響も相まってか、国内外問わず熱狂的なファンが多い。だが発売当時はどうだったのか。今回は2代目且つ海外輸出向けに製造されていた、ダットサン280Zの当時の試乗記を20歳アルバイターがリバイバルし、最後に感想を述べてみた。
この記事はベストカー1978年9月号(著者は徳大寺有恒氏)を転載し、再編集したものです。
■高性能2.8Lユニットを積むZカー!
スポーツカーの歴史で最も生産されたクルマ。これはMGでもジャグァーでもない。ましてポルシェでもない。
それは日本ではフェアレディZと呼ばれ、外国、特にアメリカではZカーと呼ばれるダットサンZ(240、260、280を総じて)である。特にこのクルマはアメリカマーケットで大人気である。
その人気の始まりは完全装備のオートマチックのトランスミッションを有するこのクルマがわずか400ドル以内で売られたコストパフォーマンスにあった。
しかしそれはやがて性能面でも信頼を受け、今やアメリカにおいてZカーの地位は憧れを込めて最も素晴らしいものということになっている。
我々が日本でポルシェに感じるような感情でZカーが評価されているといったら皆さんはどう思うだろうか。正直のところ、私は国内版のフェアレディZにあまり高い評価を与えていない。
それは主として重く、非力なストレート6というパワーユニットにある。あの加速とマキシマムスピードでは正直のところスポーツカーとは思えないのである。
ところが、ヨーロッパへ行っている260Zやアメリカの280Zは少し違う。より大きなユニットをえて充分スポーツカーたるパフォーマンスを得ているのである。
アメリカ向けのダットサン(ついでにダッツンと発音される)280ZのパワーユニットはEGI付きL28、パワーは149ps/5600rpm、22.5kgm/4400rpmである。
280Zのウェイトは1311kgだからウエイトパワーレシオは8.7kg/psとやっぱり立派なものである。それでもアメリカ人のマニアは260Zが速くて良かったという。
その点では私も同感であるが、2Lバージョンしか与えられていない日本から考えれば280Zもかなりのものといわねばならない。
■まるでアメリカンV8エンジン!? 全部のフィーリングが最高すぎる
私が乗った280Zはイエローの5スピードボックス付きである。勝手知ったるという具合で簡単に各コントロール類をチェックしスタートする。フリーウェイに入るためセカンドギアで思いきって引っぱってみる。
ここで2Lの国内版と280Zの決定的な差が表れた。195/70HR14というワイドなタイヤがギュッとひと鳴きすると大トルクエンジンのクルマだけが持つ強力な加速が得られる。
けっしてシャープとは言い難いが、ドン!!と蹴飛ばされたような加速はビッグ6というよりV8の感じである。
バックレストに背中が押さえつけられるフィーリングを残してスピードメーターはアッという間に70ぐらいを指す。
アメリカへ行く前、私はロータリーのRX-7とこの280Zのパフォーマンスはどうであろうかと愉しみにしていたが、これの答えが出た。ゼロスタートでの加速は280Zに軍配が上がる。
0~60マイルくらいまでは280Zが速く、それ以上の加速力はRX-7の方が上手である。どちらが良いかという問題でもないが、実用性(アメリカの交通事情を考えて)の点では280Zの方に少し分がある。
特にオートマチックの場合は280Zのトルクは大いなる武器となるだろう。
ハンドリングの点ではよりデザインの新しいRX-7の方がいいが、ストラットによるオールインディペンデントという280Zも決して大きく見劣りしない。
特に重厚な乗り心地という点ではよく出来た米国車並みで大いに感心したのである。
直進性は極めてよく、55マイル~65マイルを守る以上、ステアリングを話しても不安はない。
パーキングスピードではステアリングは少々重いがセリカほどではなく、このクルマが女性に人気があるのもわかる。
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