■それでもオーバーヒートが起きた場合、原因は何?
自動車メーカーが、これだけオーバーヒート対策を行っているのにオーバーヒートが起きるというのは、そこまでのオーバーヒート対策が施されていないもともとが古いクルマだった、車齢10年&走行距離10万kmを超えたクルマのメンテナンス不足か運悪く起きたトラブルと考えていいだろう。
具体的な原因としては、以下のようなものがある。
●冷却水漏れ
ラジエーターや冷却水が流れるゴムホース、冷却水を溜めるリザーバータンクの劣化による破損など。
●冷却水を循環させるウォーターポンプのトラブル
●冷却水を加圧するためラジエーターの上部に付いているラジエーターキャップの劣化
●冷却水が適温になるまでの流れをコントロールするサーモスタッドの故障
サーモスタッドの故障には、水温が低くても常に冷却水が循環してしまう場合と、冷却水が流れなくなってしまう場合があり、オーバーヒートの原因となるのは後者だ。ただ幸い、サーモスタッドの故障はオーバーヒートにはならない前者のほうが多いようだ。
●ラジエーターの冷却効率低下
具体的な原因としてはコイン洗車場などにあり、水が強烈な勢いで出る高圧洗浄機を使った際に誤って水を近くから直角に近い角度でクルマの正面に掛けてしまい、その際にラジエーターのフィンを曲げてしまったなどが考えられる。その際には当然ながら補修が必要だ。
ここまではメンテナンスで防げる可能性が高いオーバーヒートの原因なので、車齢が10年を超えたクルマであれば1年に一度くらいは、ディーラーやそのクルマの専門ショップといったプロに定期点検をお願いし、怪しいところがあればトラブルになる前に対処しておきたい。そのほかにはこんな原因もある。
●雪で走行風を導入するバンパーの開口部が詰まってしまった
これは冬場に限った話だが、激しい雪や何らかのドライビングミスにより雪でできた壁に接触してしまった際に(後者は運よく柔らかいこともよくあり、クルマは無傷で済む場合も多い)、雪でバンパーの開口部が詰まり、走行風を導入できず寒い冬場でもオーバーヒートが起きることはある。
そういった場合は早急に開口部に着いた雪を落としたい。
■オーバーヒートしそう、してしまった際のクルマの変化
●水温計が動く、水温の警告灯が点く
最も代表的な変化が水温計のあるクルマなら前者、ここ15年ほどで当たり前となった水温計がなく、警告灯で済ませているクルマでは後者である。
では、冷却水の温度が上がった際の水温計の具体的な動きについて、メーカーごとに取材してみると。
◆日産
水温計がある場合 → 針、液晶の細かいセグメントで表示されるものともに温度上昇にあわせてゆっくりと上昇。
◆スバル
水温計がある場合 → 温度に合わせてリニアに動く。水温計がないクルマも、現行モデルはマルチファンクションディスプレイに、水温を表示することが可能。
◆ダイハツ
警告灯の場合 → オーバーヒート状態になると、高水温警告灯が赤色で点灯(ダイハツには水温計があるクルマはなく、警告灯の場合は日産、スバルもダイハツと同様)。
水温計の動きに関しては、Hやレッドゾーンがオーバーヒート、その手前なら許容範囲ギリギリといったところだ。
またそもそも水温計があっても、日本車では「では今の水温が何℃なのか?」という具体的な温度がわかるのは、一部のスポーツモデルだけである。
そこで「何℃からオーバーヒートなのか?」というのを考えると、クルマにも異なるが水温は適温が90℃前後なので、「100℃を超えたら警戒、105℃はオーバーヒートの入り口、110℃はオーバーヒート」といったところだろう。
●パワーがない、クルマが重い、遅い
オーバーヒートが起きるのは、前述した目に見えるトラブル以外、多くは夏場を筆頭にした渋滞中なのを考えると体感することは少ないと思う。
しかし、オーバーヒートが起きた、オーバーヒートの兆候があるという際に多くのクルマは、コンピューターの制御により本来よりパワーを下げる方向で保護を行うので、オーバーヒートの範囲になるとパワーダウンを感じることはある。
●グツグツという音が聞こえる
これは、エンジンやラジエーターが前席の下にあるトラックや1BOXカーでオーバーヒートしている場合に限ったことだが、冷却系がドライバーのすぐそこにあるだけに水が沸騰した時のようにグツグツという音が聞こえることがある。
ただその時にはもうオーバーヒートしていると考えた方がいいだろう。
●エンジンルームから水蒸気が出ている
この時はもう完全なオーバーヒート状態だ。
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