水冷エンジンの冷却水の温度が適温を超える「オーバーヒート」は、平成初期まで目にすることのある車両トラブルだったが、平成以降の日本車はもちろん、輸入車でも平成10年あたり以降のクルマであれば、滅多にない車両トラブルである。
そのため、最近ではベテランドライバーでもオーバーヒート時の対処方法は忘れがちだったり、若い世代では知らないドライバーも多いだろう。
そこで当記事では、秋となり暑い日は減っているなかでも覚えておきたい、オーバーヒート時の対処法など、オーバーヒートについての情報を各方面からお伝えする。
文/永田恵一
写真/Adobe Stock、編集部、NISSAN
■オーバーヒートは最近も起きているの?
この点について、車両トラブル時のロードサービスを行うJAFに取材してみたところ、「ロードサービスの出動理由で『オーバーヒートのため』という統計は取っていないとのこと。
そのため過去の出動理由を見てみると、2018年度1年間では一般道(214万1025回)、高速道路(7万3154回)ともに、一般道では約83%、高速道路では約71%を占めるベスト10のなかでオーバーヒートが関係している可能性がある出動理由は、高速道路の9位となった「エンジンオイルの補充、不足」の773件だけだった。
2018年度をシーズン別に見てもオーバーヒートが関係している可能性があるのは、ゴールデンウィーク中の高速道路(2882回出動)で、8位の「エンジンオイルの補充、不足」(38回)と、10位のラジエーター(25回)。
お盆休み中の高速道路(3542回出動)で、9位の「エンジンオイルの補充、不足」(34回)、10位のラジエーター(33回)。
年末年始(2167回出動)で、9位の「エンジンオイルの補充、不足」(26回)、10位の補機ベルト(22回)くらいだ。そのため広い目で見れば近年オーバーヒートはほとんど起きていないと考えていいだろう。
■オーバーヒートはなぜ減っている?
近年、クルマはメンテナンスと乗り換えのサイクルが長期化しているのに加え、日本の夏は昔に比べると亜熱帯のように暑くなるうえに、渋滞の激しさも変わらないと、オーバーヒートが増えてもおかしくない要素ばかりが浮かぶ。
それでも、今ではオーバーヒートが珍しい車両トラブルになっている理由を考えてみると、それはズバリクルマの進歩だ。
具体的には、自動車メーカーは夏場の平均最高気温が40℃台中盤まで上がる、米国カリフォルニア州にある熱気が抜けにくい盆地かつ砂漠であるデスバーレーでテストし、そこで大きな負荷を掛けてもオーバーヒートしないか確認するという超過酷なテストを行っている。
またメジャーな輸入車であれば、導入前の新型車に覆面を施し夏場に日本の渋滞路を走らせオーバーヒートしないかを確認している。
そういったテストが長年行われているだけに、テスト段階で問題が出ることは少なくなっているのに加え、問題があればラジエーターやファンの容量、冷却を助けるための走行風の導入を増やす、導入後熱気となった走行風の抜けをよくするといった対策を行っている。
これだけテストを行い、対策を施していれば、少なくともラリーのような競技以外で公道を走っている限り、オーバーヒートが滅多に起きないのも納得できるだろう。
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