車を購入したら何年間乗るだろうか? 数ヵ月で買い替えるという人は、よほどのお金持ちでない限り、まずいないだろう。
であれば、「飽きない車」ということも大切だが、やはり「疲れにくい車」にしたいと筆者は思う。
疲れやすい車で遠くに出かけたくなるだろうか? エアコンのないビンテージカーを所有していたとして、真夏に毎日乗りたいだろうか? 人によっては楽しいかもしれないが、それでも毎日は遠慮したい。
これは極端な例だが、やはり車に乗るうえで「疲れにくさ」は、ドライバーだけでなく同乗者にとっても欠かせないもの。
本稿では、3つの焦点に絞って、代表的な車種とともに「疲れにくい車」の条件について考えていきたい。
文:松田秀士
写真:編集部、TOYOTA
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「疲れにくさ」に影響大!! 3つの指標と条件とは?
「疲れにくさ」にもいろいろと指標があるもので、その指標を3つに分けてみた。
【1】乗り心地(足回り・シート・ボディ)
【2】視界の良さ(SUVなどアイポイントも含む)
【3】運転支援システムの使い勝手
という3点に焦点を絞り、国産車を中心に500万円未満という条件付きでモデルを挙げつつ話を進めていこう。
【乗り心地】を考えるとき、なぜ500万円未満かというと、電子制御サスペンションなど付加パーツによって乗り心地を作り出すような邪道は後出しじゃんけんのようなもの。本来のボディ構造の出来に自信がないからそのようなものを付加するのだ、と考えたい。
やっぱりコンベンショナルなサスペンションでボディの出来を含めた乗り心地が重要なのだ。500万円未満でも電子制御サスペンションを装備したモデルもあるかもしれないが、本稿では除外して考える。
疲れにくい条件【1】乗り心地に優れる車は?

で、筆者が良いと思える車はまずホンダ CR-Vだ。リアゲートも開けられる5ドアでありながらボディ剛性がガッシリとしている。
リアゲートを持つタイプのモデルは、トランクのあるセダンなどとは異なり、リアセクションに隔壁(バルクヘッド)を持たない。例えるなら、段ボール箱の蓋を開けたようなもので、グニャグニャになってしまう。
そのような構造でもボディにしっかりと剛性を持たせなくてはならない。剛性があって初めてサスペンションを動かして乗り心地を良くすることができるのだ。
この点、CR-Vはとても良くできている。実にスムーズにサスペンションが動き、マンホールなどの段差による突き上げの振動感も小さく、不快さを感じさせない。しかもハンドリング性能も高く、狙い通りのコーナリングラインに乗せることができるのだ。
もう1台はマツダのCX-8。
こちらは米国で販売されているより大型SUVのCX-9のプラットフォームを採用する。これにCX-5のサスペンションを移植しているのか? と思いきや、なんとサスペンションもCX-9のパーツを使い、しかもトレッドを詰めるためにわざわざ短くして組み上げているのだ。
つまり、1クラス上の足回りとボディいうことになる。それゆえにしなやかに動く足回りと振動感のないボディ。
もうひとつ、シートのホールド性が良いことに加えGVCプラス(※ハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させる車両制御システム)によって、すべての乗員の横揺れが最小限。3列シートゆえにこの点は重要。
マツダは人間工学に基づき多角的に乗り心地を考えているところが面白い。
疲れにくい条件【2】視界が良い車は?

【視界の良さ】でまず挙げたいのが新型カローラだ。
ダッシュボード上部をフラットにしてAピラーを細く、そしてドアミラーをドアマウントにしてAピラーとの干渉をなくしている。これによって斜め前方の見通しが良い。
ただし、9インチのディスプレイをオプション装着した場合は、若干モニター上部が視界に引っかかるが、フラットなダッシュボードゆえに左前方のコーナーや左側の車幅も認識しやすい。
走り始めてすぐに四隅のサイズを感じ取りやすいので安心。このことだけでもプレッシャーが減り疲れにくいのだ。

もう1台は三菱 デリカD:5だ。
ミニバンはドライバーのアイポイントも高いし、それだけでも視界は良いもの。ただし、デリカD:5はそれだけではなく、車体全体のシェイプがハッキリした角型デザイン。
先代から良いところはしっかりと受け継いでいる感じ。これにより駐車時や市街地での混雑した環境でも見切りが良く、ストレスがない。リバース時モニターのバードビューを含め、ディスプレイが大画面なのも嬉しい。
疲れにくい条件【3】運転支援の使い勝手が良い車は?

【運転支援システム】最近このシステムの技術進化が著しい。将来、自動運転に進化してゆくプロセスの技術でもあるからだ。
運転支援システムとは、前走車に追従して車間と速度を自動的にコントロールするACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)と、カメラで車線を認識して車線内の中央を維持して走行するようステアリングをアシストするLKAS(レーンキーピング・アシストシステム)の2つだ。
ACCは、特に渋滞時も含めた全車速に対応したものが増え、これがポイントとなっている。渋滞時に車の方でノロノロ走る前走車に自動追従してくれたら、これほど楽なことはない。
ただし、重要なのはその「車間距離」。ACCは車間距離を3~4段階にドライバーが設定できるようになっている。この“一番短い車間距離”が渋滞ではモノを言う。距離が長いと簡単に割り込まれてしまうからだ。
この部分に関しては総じて欧州車に軍配が上がってしまう。各社の安全基準の考え方があるからだ。その部分で国産各社はマジメ。
しかし、最近の国産車はハリキリ始めた。筆頭はホンダ インサイト。最短の車間距離もまずまず近い。しかも、前走車の減速にしっかりと反応してブレーキングする。

また、ホンダ(ホンダセンシング)の場合、一度システムをONにすればACCとLKASは独立して作動する。
例えば、ACC+LKASで高速道路をクルーズしているとき、突然前に割り込まれてブレーキを踏んでも、解除されるのはACCのみでLKASのそのまま制御機能を維持する。
例えば、割り込まれたのが緩いコーナーの場合、一気に2つのコントロールがOFFになることはなく慌てない。
実は、このようなコントロールをしているのは国産ではホンダとマツダだけ。
他社の場合ACC+LKASは常にセットでOFFになり、単独で使えるのはACCだけだ。LKASは車線内の中央を走るために無意識に行っているステアリング操作をヘルプしてくれる。これを活用することで本当に疲れにくい。
そこで、もう1台挙げるのがホンダN-WGNだ。軽自動車ながら渋滞追従もこなしLKASの性能もインサイトと遜色ない。
しかも、室内静粛性高く、サスペンションの動きもバツグンな身のこなし。今回この3つの疲れにくさ指標を挙げたが、3つとも高いレベルで達成しているのがN-WGNだ。