クルマの価格を聞いた瞬間に「昔は安かったのになんでこんなに高いの?」と思うことがよくある。近年ではホンダのインサイトなどがその代表的な車種になっているが、実際は本当に高いのだろうか?
よく考えれば20年前はエアバッグですら装着されていないクルマも多く、横滑り防止装置などは高級車の装備でしかなかった。
そのころと比較すれば軽自動車でも被害軽減ブレーキの装備や、フルオートエアコンの標準化など装備の充実は目覚ましい。
実際クルマの価格はなぜ高く感じるのだろうか? コストパフォーマンスには超絶厳しい渡辺陽一郎氏に聞きました。
文:渡辺陽一郎/写真:ダイハツ、ホンダ
■実は安全/快適装備が満載で割安なこともある
最近はクルマの価格を聞いて「高いなぁ」と思うことが増えた。軽自動車のN-BOXやタントも、売れ筋の価格帯が標準ボディで140~150万円に達する。カスタムなら160~180万円だ。
10年前のタントは、標準ボディであれば120万円前後だったから、20~30万円は値上げされた。比率に換算すれば、10年前の120~130%になる。
しかし装備の内容を見ると印象が変わる。10年前の軽自動車には、緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)や横滑り防止装置は装着されず、4輪ABSも非装着の車種が多かった。
サイド&カーテンエアバッグも同様だ。これらの装備が今では標準装着されるから、20~30万円の値上げで済めば、むしろ割安とも受け取られる。
これと同じようなことが、ライバル車との比較にも当てはまる。価格だけを見た時には割高に思えたクルマが、装備内容と照合すると、さほど高くないことがある。
代表車種はインサイトだ。LXの価格は326万1600円だから、高価格車の部類に入る。
それだけに装備も充実しており、ホンダセンシング、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドランプ、さらにホンダインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器、8スピーカーなども標準装着した。
ライバル車のプリウスの装備内容を見ると、インサイトに相当するグレードはAだ。価格は284万2560円なので、インサイトLXに比べると約42万円安い。
ところがプリウスAに、TコネクトSDナビ+6スピーカーオーディオのオプション価格(35万5320円)を加えると、合計319万7880円になる。インサイトLXとの差額は、一気に6万円少々まで縮まるわけだ。
そしてインサイトでは、ハイブリッドシステムのi-MMDが高機能だ。エンジンが発電機を作動させ、その電気によってモーターを駆動する。
日産のe-POWERに似ているが、i-MMDには、高速巡航時にエンジンがホイールを直接駆動して燃費効率をさらに向上させる制御も備わる。
そのためにi-MMDの価格換算額は、ステップワゴンの1.5Lターボとの比較で47万円、オデッセイの場合は58万円くらいに達する。
対するプリウスのTHSIIは、同じシステムを使うヴォクシー/ノア/エスクァイアなどで見ると、2Lノーマルエンジンに比べて40万円前後の価格上昇に収まる。i-MMDはTHSIIよりも高機能だから、その分だけ価格も高いのだ。
以上のように計算すると、インサイトとプリウスの実質価格差が6万円程度であれば、むしろインサイトの方が割安とも受け取られる。
同じホンダ車同士で比べても、同じようなことがいえる。シビックセダンの価格は265万320円だから、インサイトは約61万円高いが、先に挙げたホンダインターナビなどの装備が合計35万円前後に相当する。
そうなると1.5Lターボのシビックに26万円を加えると、i-MMDを搭載したインサイトを買える計算が成り立つ。比較する車種によっても異なるが「割高に思えたインサイトが、実は20万円ほど割安だった」という判断もできるだろう。
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