2020年2月に新型が登場予定のトヨタ「ヤリス」とホンダ「フィット」。コンパクトカーカテゴリーではバチバチと火花を散らすライバル同士だが、登場月が重なったことで、その対決の注目度がさらに上昇している。
そんなヤリスとフィットは、プロトタイプではあるが試乗会がすでに行われ、その走りの特徴もすでにお伝えしている。しかし、多くの読者が最も知りたいのは、「その2車を比較するとどうなのか?」だろう。
今回は2台に試乗した、自動車評論家であり現役レーシングドライバーでもある松田秀士氏が、プロトタイプによる前哨戦ではあるが、走りを徹底比較してみた!
文/松田秀士
写真/編集部、HONDA
【画像ギャラリー】バチバチ火花を散らすライバル「ヤリス」と「フィット」を徹底比較!!
■ドライビングの重要な鍵「ドライビングポジション」対決
新型フィットとヤリスが、同じ時期にフルモデルチェンジして登場する。室内スペースの広さや使い勝手がどうのということは、すでにいろんな雑誌で掲載済みだから、ここではその走りはどうよ? というところに特化して書いてくれ、というのが今回のお題。
では、まずこのライバル2車の方向性を見てみよう。すでにいろんな雑誌で掲載済みだから細かいことは書かない。デザインを見ただけでもわかると思うのだけれども、フィットのデザインはどちらかというとユニセックスでファミリー向け。インテリアの広さは外観からすぐにわかるとおり。対するヤリスは、1~2人までのパーソナル向けのコンパクトカーとして思い切ったパッケージングで、この2台が成立している。
まずコクピットに座ってみよう。ヤリスはAピラーを手前に持ってくることで、前方から側方への視界を確保している。
一方、フィットは超ハイトワゴン軽自動車やミニバン系に多く見られる、2本のAピラーを備え(フロント側をフロントピラー、手前をAピラーと呼んでいる)衝突入力を太くしたAピラーで支える。フロントピラーをフロントガラスを支えるだけの細いものにしたことによって、側方の視界をしっかりと稼いでいる。どちらも、ハンドリングを楽しむためと安全性に不可欠の視界確保は問題ないレベルだ。
次に気になるのがドライビングポジション。どちらもチルト&テレスコピックの調整幅はしっかりとってあり、それぞれにベストなポジションが作れる。特徴的なのは、ヤリスのステアリングはよくある3本スポークなのに対して(ただし従来よりマイナス5mmの365mmと小径)、フィットは少しレトロな2スポークとしていること。
フィットの2本スポークはデザイン性を重視した採用だが、過去にポルシェ911にも2本スポークデザインはあったものの、主に視覚的に走りには向いていないと感じる。個人的な見解ではあるが。この点、小径となったヤリスの3本スポークのほうが走りには適していると感じた。ただし、2本スポークのフィットのほうがヤル気の交感神経よりもリラックスの副交感神経優位になると感じたので、疲れないかも?
次に走りに重要なのはシートだ。ヤリスの場合、シートの特性に対して特別なアナウンスはなかったけれども、座った時のフィット感やコーナリング中のサポートに関しては問題はなかった。
ひとつだけターンチルトシートといって、乗り降り時にシートそのものが回転して外側にはみ出し、乗り降りをイージーにする機能がオプション設定されている。しかも、これまでのものより安価で助手席にも設定可能。高齢者だけでなく腰痛持ちや女性にも歓迎される機能で、しかもこれまでの福祉車両に採用されているものよりも安価なのだ。ただこれは走りにはそれほど関係がない。
一方、フィットのシートはボディスタビライジングという新開発モノ。シートフレームを、これまでのSバネ構造からMAT構造と呼ばれる、座面及び骨盤から背骨にかけてを板バネのようなベース構造に変更。
さらに座面クッションの厚みもプラス30mmとしている(リヤシートはプラス24mm)。これまでフィットのシートは座面の形状が少し平らすぎてブレーキング時なのになどに安定性に欠けていたのだけれども、今回のシートはそのような問題はなくさらにホールド性も大きく進歩している。
つまり、走りにとってもコンフォート性にとってもかなりレベルの高いシートに仕上がっている。では、ここでどちらのシートがいいのかと言うと、小柄な僕の体型ではフィットのシートが合っていた。
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