【新型ヤリスvs新型フィット】次世代コンパクト前哨戦の軍配は!!?

■似てる? それとも別物? 「乗り心地&ハンドリング性能」対決

 では、いよいよハンドリングの話をしよう。両者ともプロトタイプとはいえ、試乗会場はクローズドコースだ。ヤリスの試乗会場は袖ヶ浦フォレストレースウェイ。一方のフィットは北海道にある鷹栖プルービンググラウンドだ。

 フォレストレースウェイでは速度レンジに限りがあるけれども、鷹栖プルービンググラウンドでは高速周回路でのテストも可能だった。フィットの180km/hレベルでの走行安定性は問題なかったけれども、そこまでの高速テストを袖ヶ浦フォレストレースウェイではできない。この点ヤリスの最高速レベルでの安定感に関しては未知数ではあるけれども、袖ヶ浦のストレートで140km/h近くを経験した限りではヤリスの実用高速安定性についても問題はない。

 そこで、両車のパワーユニットについて比較しておこう。まずフィットは、直4の1.3Lガソリンエンジンと1.5Lハイブリッドの2種類。対するヤリスは、3気筒だ。直3の1.0Lガソリン、同じく1.5Lガソリン、そして1.5Lハイブリッドだ。直3 1.5Lガソリンは直噴仕様で、1.0Lとハイブリッドはポート噴射だ。

 ここでは特にハイブリッドで比べると、実用域の加速力ではフィットのシステムは電動モーター走行となるので飛び出しから力強い。ヤリスも電気の出し入れを従来より大きく向上させモーターアシストも強化しているので力強い。ただ実用域の加速力はフィットのストレスのなさに軍配。

 では乗り心地はどうか? どちらもクローズドなコースでの試乗だったが、フィットはメーカーのテストコースだけに欧州路という、一般道とほとんど変わらない路面の荒れたコースも走った。ヤリスの場合の袖ヶ浦フォレストレースウェイは比較的路面がいい。そこで、わざと縁石などをまたぐなどして段差などでのサスペンションの追従を確認してみた。

コンパクトカー向けTNGAプラットフォーム「GA-B」を採用し、クラストップレベルの剛性と、高い操安性を実現。正式発表されたWLTCモード燃費は36.0km/Lとなっている

 ヤリスの場合は、そのような路面状況にもサスペンションがしっかりとストロークして処理していることを確認した。ストロークしても収束はしっかりしていて、尾を引くようなバウンシングもそれほど感じられなかった。これは重量が増すハイブリッドでも変わりはない。

 フィットはより細かく観察できた。フロントサスペンションに関しては、フリクションを徹底的に取り除いた。リアサスペンションではラバーマウントを変更して、2カ所で分散して入力を処理する方式が取り入れられている。これらによってホイールトラベルが細かく路面によく追従している。

 サスペンションストロークそのものは、フィットのほうがあるように感じる。ヤリスではそのような路面を走っていないので100%とは言い切れず、今のところ乗り心地はフィットだ。この点は4人乗車をメインとしているのか? 2人ほどのパーソナル重視か? の差はあるかもしれない。

まだ正式発表はされておらず、燃費性能は不明のフィット。デザインと同じく、走りも優しい

 では、最後にハンドリングである。ヤリスハイブリッドでは、ハイブリッドの回生ブレーキ力を約2倍にすることで、コーナーへのターンインでフロントの入りがとてもいい。逆の言い方をすると、リアが粘りすぎないので気持ちよくコーナリングする。

 対するフィットは、ステアリングギアレシオをヴァリアブルにしているのは、ハイブリッドの16インチ仕様のみ。応答性もよく深い操舵での切り足しにも追従してくれるので、低中高速にかかわらず安心してステアリングを切り込むことができる。ロールはフィットのほうが大きく感じられるけれども、不安感もなく、コーナリング中の路面凸凹処理に必要十分なストロークと感じる。

 ヤリスはコーナリング初期のストロークにフリクションがなく、コーナリング中は新プラットフォームのサスペンションジオメトリーと、バンプストッピングラバーやスタビの剛性でしっかりとロールを抑制してコーナリングさせる印象だ。しかも、ドライブ中でもフィットに比べてコンパクトなフィーリングがしっかりとあり、少ない操舵角でよく曲がり込む。旋回の中心が車体の前方寄りにあるので、少し巻き込むような印象。それが走り屋にとってはたまらなくなるかもしれない。

 一方、フィットはどこまでもスタビリティ重視。やはり4人乗車を見据えたセッティングだ。サスペンションを動かして、タイヤの路面追従性を上げている。したがって、ドライバーの運転操作次第でスポーティにもコンフォートにも化ける。 言い換えれば、間口が広いハンドリングだ。

 FF車の場合、フロントタイヤが操舵と駆動を受け持つので、リアタイヤはざっくり言うとただついてるだけに過ぎない。しかしこれが問題で、フロントが曲がり始めてからリアタイヤに入力が来る。つまり、常にフロントに遅れてリアタイヤが仕事を始めるわけだ。このためどうすればリアが安定するのか? どのメーカーも苦心するところ。リアを固めることによってリアタイヤの反応を早くするなど、前後バランスがとても難しい。

 これを見事に解消しているのがルノーで、メガーヌRSに後輪ステアを採用している。つまり、フロントと同じタイミングでリアタイヤも仕事を始めさせるという考え方。そうすることでリヤを必要以上に固めることなく、リアサスペンションのスムーズなホイールトラベルを実現している。

4コントロール(4輪操舵システム)を採用したルノー「メガーヌR.S.」。クラスも、クルマとしての方向性も2台とは異なるが、そのハンドリングの評価は高い

 これは乗り心地にも好影響だ。また、4輪のタイヤの摩耗にも貢献していてローテーションが可能なのだ。しかしながら、コンパクトカーでそこまで高価なシステムは採用できず、既存の方法のなかで、どこまでハンドリングと乗り心地を追求するかがそれぞれのメーカーの腕の見せ所である。

 今回の結論。ハンドリング面では、やはり許容範囲の広い新型フィットに軍配を上げる。

【画像ギャラリー】バチバチ火花を散らすライバル「ヤリス」と「フィット」を徹底比較!!

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