走って気になる燃費と乗り心地の実力は?
注目の燃費は、試乗のためアクセルを踏みこみ、撮影時にクルマを動かすシーンが多々ありながら、約150kmを走り20.2km/L。
22.8km/LというWLTCモード総合燃費に対し、実用燃費は、相当厳しい使い方をしたことや大柄なボディサイズを考えても望外の20km/L程度は期待できそうだ。
ハンドリングも、駐車場内を動かした際から滑らか。シットリとしたステアリングフィールに好感を持ちながらワインディングロードを走っても、大きなクルマながらハンドル操作に対し軽快かつ正確に動いてくれ、楽しく運転できる。
乗り心地に不利そうに見えるタイヤ(235/45R18サイズ)を履きながら、郊外の舗装が荒れた路面でも不快な硬さは皆無で、乗り心地も素晴らしい。
新型アコードの高次元なハンドリングと乗り心地のバランスには、強いボディ剛性を持つプラットホームや電子制御でダンパーの減衰力が瞬時に可変するアダプティブダンパーシステムの採用などが大きく貢献しているに違いない。
高速道路を走っても静粛性が高い。さらに、予防安全装備「ホンダセンシング」の機能に含まれる先行車追従型クルーズコントロール(ACC)とレーンキープアシスト(LKAS)の完成度も上々だった。
新型アコードは465万円の価格に見合う「質」を持つ?
室内を見ていくと、タイ製ということで心配するかもしれないインテリアの質感は車格相応に上々だ。
クーペルックながら全長が長いこともあり、リアシートの乗降性はよく、空間自体も広すぎるくらい広く、シートヒーターやUSB電源といった配慮も申し分ない。
また、リアシートの乗り心地も良好で、静粛性もフロントシートと変わらずと実に快適だった。
ラゲッジスペースも、駆動用バッテリーなどで構成されるIPU(インテリジェントパワーユニット)が、小型化によってリアシート背もたれ後方から座面下に移動し、ハイブリッドセダンではトップとなる573Lの大容量を確保。トランクスルーも可能となった。
新型アコードは465万円という価格に対する議論も多い。世界各国で直接的なライバル車となるトヨタ カムリの標準系最上級グレード「Gレザーパッケージ」(433万4000円)と比べると、新型アコードはサンルーフが標準装備となっている。
そのほか装備内容も極力揃えてみると、新型アコードはカムリの15万円高といったところ。そう考えると「(465万円という価格は)絶対的には安くないけれど、不当に高くもない」とは言えそうだ。
新型アコードは「良いクルマ」なのになぜ地味なのか
しかし、新型アコードを「自分で欲しいか」と言われたら、ちょっと悩んでしまう。
ともすれば、やや地味に映ることも含めて「なぜそうなのか」を考えると、「強い魅力に欠けるから」というのが大きいと思う。
300万円を超える高額車は、どのジャンルでも人に自慢できるような魅力が欲しいものである。このクラスの日本車であれば“ディーゼルエンジン”を積むマツダ6や、“世界最先端の運転支援システム”プロパイロット2.0を搭載するスカイラインがその代表だろう。
また、450万円を超える高額セダンとなると、日本車ではクラウン、輸入車ならBMW 3シリーズやボルボ S60と強敵も視野に入り、もともと高級車ではなかったアコードは霞んでしまう。
ホンダによれば「歴代アコードを乗り継いでいるお客様もいらっしゃる」とのことで、アコードは44年間日本での歴史が続いている。シビックですら日本市場で途切れた時期があることを考えれば、これは本当に立派である。
ただ、筆者個人は海外仕様のアコードを無理に日本で売ることもないのではと感じる。
例えば、ハイブリッドセダン「インサイト」の中身を、新型アコードのように上質なものとし、価格は現在のインサイトと同等に。車名をアコードにするという形でも良いのではないだろうか。
これならボディサイズも7代目アコードに近く、取り回しもしやすい(新型アコードも運転席からボンネットがよく見え、ボディサイズの割に取り回しは良いが…)。
いずれにしても新型アコードが「地味だけど非常に堅実な本当にいいクルマ」なのはたしかなので、ホンダ車であればレジェンドを検討している人も含めディーラー試乗などで一度試してみてほしい。
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