マツダCX-30長距離試乗でわかった真価 国産「最美」SUVにふさわしい走りか?

■往復600kmのロングドライブで、CX-30は何を感じさせてくれたのか?

 初日はSKYACTIV-Xを搭載した「X 2WD」を試乗。朝7時台の下り方面の首都高は快調。巡航速度で走り続ける時、CX-30がもつ路面を舐めるようなドライブフィールは実に気持ちがいい。ロードノイズも小さく、クルマの遮音性能にも優れるので、走行中であっても、車内での会話に支障はない。

 こうした動性能の質感の高さは、CX-30のみならず、昨今のマツダ車に共通する美点だ。静けさと、落ち着いた雰囲気のインテリアデザインをみていると、なんとも優雅な気持ちになる。

 東名下りの大和トンネル付近では自然渋滞を起こしていた。CX-30には当然クルーズコントロールが備わるため、渋滞中でも楽ちんだ。完全停止しても、アクセルペダルをチョンと踏み足せば、再びエンジン始動して走り始める。ステアリングアシストもあるので、レーンキープもしっかりやってくれる。

高速道路を走っていても、大きな声を出さなくても前後の席で会話ができる静粛性を実現していた
試乗では、マツダがマツダコネクティッドサービスのためにリリースしたアプリ「MyMazda」も体験。マイカーを登録すれば、鍵の閉め忘れや、ハザードの消し忘れなどを車外から操作可能という優れものだ。ネット経由なので、遠く離れていても操作可能
アプリを使えば、わざわざ車両側のナビを操作しなくても、マップで選んだ任意の場所を目的地に設定することができる。この機能が思った以上に便利だった。音声で目的地を探す機能はないため、将来的に追加されることを期待したい

 渋滞を抜けた先は、約200kmのロングツーリング。クルーズコントロールで前走車についていきながら、たまには自分のペースで走らせる。スカイアクティブXのエンジンフィーリングもよく、アクセルペダルを踏み込んだ時の加速サウンドも軽快で、運転していて心地がいい。

 ステアリングのギア比がスローなので、レーンチェンジもまったりとこなせ、同乗者を不安にさせることもなく、運転者としても安心だ。このCX-30の高速道路でのドライブフィーリングは、国産車の中でも随一だと思う。

 目的地に近い、長野県の山間部にあるインターチェンジを降りる。目的地は、マツダから指定された、高原にあるランチ場所だ。徐々に狭まっていく道幅と、アップダウンが増す道では、エンジン回転が上がり、ステアリングの操舵量も大きくなっていく。ギア比がスローなCX-30は、ハンドル操作量が普通のクルマよりも大きめとなるため、二の腕のいい運動になった。

 ランチ後は、高原のなかをひたすらドライブ。山間部の気温は関東圏よりも5度は低く、換気のために窓を開ければ、涼しい空気を感じられた。標高が高まるにつれて上り下りがきつくなり、エンジンは苦しそうに悲鳴をあげていた。

長野県茅野市から、白樺湖、車山高原、霧ヶ峰、美ヶ原高原をつなぐ全長約76 kmの観光道路「ビーナスライン」を走る。標高約800mの茅野市から、1959 mの美ヶ原高原まで一気に駆け上がる
大人3人乗車、エアコンもオンという厳しい条件で、きつい勾配を登っていく。こういったシチュエーションでは特にスカイアクティブXが2Lガソリンモデルよりパワフルだと感じさせる

 舗装路であっても、繰り返し補修されたなどで路面が荒れていると、CX-30がはく大径タイヤは跳ねやすい。場合によっては、速度が出ていると、タイヤグリップを失ってカーブの外側に膨らみそうな場面もある。そんなシーンでは、CX-30でも4WDのほうが安心して走りやすいな、とは感じたが、それもゆっくり走れば、何も問題はない。同乗者を不安にさせない車速コントロールの腕を試されているのか、と頭の中で考えながら運転していた。

 山を越えたころには、ドライブ疲れもピーク。それまでは続いていた会話も、到着する頃には皆無口になっていた。ピカピカだったCX-30もさすがに疲れたように、ボディはだいぶ汚れていた。

 翌日は2.0Lガソリン仕様「20S 4WD」に乗り換え、長野県松本市の観光地巡りからスタート。国宝の松本城は、現存する五重六階の天守のなかで、日本最古の国宝の城だという。また、途中に立ち寄った松本民芸家具の工房でみた、手作り家具からは美しい造形美を感じた。

松本城とCX-30 20S Lパッケージ 4WD(303万500円)。乗り比べると、4WDのほうが路面からの入力に対して安定感が高く走りやすさを感じた
江戸時代からの”ナマコ壁の土蔵”が今でも多く残る商店街の中町通り(長野県松本市)をいく。マツダこだわりのソウルレッドクリスタルメタリックをまとったボディは、白い壁をバックにするとよく映える
江戸時代からの”ナマコ壁の土蔵”が今でも多く残る商店街の中町通り(長野県松本市)をいく。マツダこだわりのソウルレッドクリスタルメタリックをまとったボディは、白い壁をバックにするとよく映える

 松本民芸家具では、パーツを加工する家具職人はもちろんだが、家具の素材となる「木」を、加工に適した状態になるまで半年以上をかけて乾燥・と吸湿といった下処理をして育てる職人がいるという。

 その仕事ぶりを拝見し、筆者も、表面的な技術ばかりに目を奪われるのではなく、そのクルマの背景に込められた、「思想」や「フィロソフィ」を見抜けるようにならねば、と思った。

松本民芸家具の工房。普段は見学ツアーは行っていないのだが、特別に見学させてもらった。松本民芸家具は、かつて旧陸軍航空本部用の木製格納庫などの軍需産業に携わっていたが、戦後建具の製造を手がけてきた歴史を持つ
ミズメザクラという機械加工には向かない材料を使用しており、職人がパーツを一つひとつを丁寧に仕上げる。特定の職人が作ったことを前面に出さず、同じ製品を松本民芸家具の特徴を出しつつ製造することを理念としている。クルマ造りに通ずるものがある

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