■テコ入れで実力を高めていったミラージュ
もちろん、三菱自動車も、その現状を良しとせず、改良を重ねることで、商品力を向上させてきた。大幅進化の第一歩となったのが、2014年12月の1.2L直列3気筒DOHCエンジン車の投入だ。
新グレード「1.2G」は、エンジン性能の向上に加え、15インチタイヤとフロントスタビライザーの追加で、走行安定性を向上させていた。その成果をベースに、翌年となる2015年12月には、フェイスリフトを含む大幅改良を実施。
フロントマスクは、クロームメッキ加飾のグリル付きデザインとなり、質感を向上。さらに衝突被害軽減ブレーキなどの装備面も強化された。それと共に、走りについても大幅なテコ入れが図られたのだ。
まずエンジンを1.2Lに一本化。さらにサスペンションのリセッティングや取付部剛性の向上、電動パワーステアリング制御の見直し、CVT制御の改善などが行うことで走りの質感を高めていた。
■フェイスリフトで原点回帰!?
その後、大きな改良はなく、2019年11月、生産地であるタイにて、前後マスクを一新したフェイスリフトモデルを発表。2020年4月より日本導入も開始された。
新ミラージュの特徴は、ダイナミックシールドを取り入れたこと。いわゆる最新の三菱顔となったわけだが、同時に歴代ミラージュの面影を感じさせるスポーティかつフレッシュなものとなった。
さらに先進の安全運転支援機能の強化が図られている。しかし、気になるのは、新型ミラージュの乗り味である。そこで新型ミラージュを試乗してみることに……。
試乗したのは、上級グレード「G」だ。最新型もグレードによる差は、限定的だ。基本的には装備のみだが、フロントグリルにスポーティな赤のアクセントが加わるのが、大きな特徴だ。
インテリアは、黒を基調とした至ってシンプルなもの。ただタコメーター付きのアナログ2眼メーターやデジタル式オートエアコン、衝突被害軽減ブレーキなどを含むスタンダードな先進安全運転支援機能など基本的な機能はしっかりと押さえている。シートも思ったよりもクッションがしっかりしていると感じた。
エンジンを始動すると、3気筒ということもあり、エンジンサウンドは軽め。可も不可もなしといったところだ。
しかし、走り出してみると、予想よりも走りはずっと良い。エンジン性能は78ps/100Nmしかないが、車重も900kgと軽いため、想像よりもずっと軽快。
ステアリングはキビキビした反応を見せるが、軽薄さもなく、高速走行時も落ち着きある動きを見せる。この辺は、足回りの強化と電動パワステの煮詰めの成果だろう。
CVTのDレンジは、燃費重視のようで、巡行時は改定数が低め。そのために3気筒らしいノイズと微振動が気になるが、レンジをSに切り替えると、常用回転数が高まり、3気筒エンジンは軽快なサウンドを奏で、加速もスムーズに。
気持ち高めの回転の方が気持ちよく走れるエンジンのようだ。だから、積極的にSレンジを使いたくなる。
走行中の車内は、エンジン音が伝わるものの、想像よりもずっと静かであった。もちろん、街中では小さなボディを活かし、ひらりひらりと走ることが出来るので、扱いやすい。正直、もっと安っぽいイメージを持っていたのだが、良い意味で裏切ってくれた。
確かに、最新コンパクトのような便利機能やハイテクとは無縁だが、実直なコンパクトカーだと思う。手頃な足車やシンプルなクルマを求める人には悪くない選択だ。
初期のグリルレスと中期型のメッキグリル仕様のミラージュは、やや地味なデザインであったが、最新のダイナミックシールド顔は、スポーティかつ元気な雰囲気があり、イメージは悪くない。
しかし、コロナ下での新車販売不振もあり、2020年4月~9月の半年間の販売台数も1345台と、かなりレアな存在だ。確かに他社の最新コンパクトと比較すると、価格面以外の優位性が少ないのが正直なところ。
その一方で、シンプルイズベストなところが魅力的とも思える。装備がゴテゴテした最新型車が、肌に合わないというユーザーにも好ましい仕様ではないか。セカンドカーなら、概ね不満のない装備は押さえている。
ただあまりにもPRがないため、フェイスリフトモデルの存在は、お手頃なコンパクトカーを探す人たちにも知られていないはずだ。まずは三菱自動車自身に、もっと新型ミラージュの存在を強くアピールして見て欲しいと望みたい。
【画像ギャラリー】本文未掲載写真も! Aセグメント車として生まれ変わった三菱 ミラージュのビッグマイナーチェンジをチェック!!
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