2020年11月11日、中日新聞が伝えた「次期クラウンSUV」の報道。すでに販売店に通達したとの情報もある。
はたして、次期クラウンは本当にセダンがなくなって、SUVになるのか?
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文/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部
写真/ベストカー編集部 トヨタ
CGイラスト/ベストカー編集部
初出/ベストカー2021年1月10日号
【画像ギャラリー】もはや聖域なし!これが令和の新型クラウンSUV!!
「クラウンの名は残るがセダンではない」その証言が意味する真相とは?

2020年11月11日付の中日新聞が突如、次期型クラウンはSUVになると報じた。同記事では具体的に以下のように報じている。
「クラウンはセダンでの生産を現行型で終了し、スポーツ多目的車(SUV)に似た車型の新型車として、2022年に投入する方向で最終調整に入った」として、さらに、
「北米、中国への投入も予定。2023年より米国での生産も計画。北米で販売するハイランダーのプラットフォームを活用する」と、かなり具体的に伝えている。
トヨタのお膝元、名古屋が本拠の中日新聞が報じるだけに、その内容が一気に拡散し、大きな話題となったのは言うまでもない。
しかし、本誌スクープ班はこの報道に驚くことはなかった。
トヨタの開発企画部門に近い関係者から、これより前に「どうも、次期型クラウンの企画に大きな動きがある」と聞いていたからだ。
具体的にSUVになるといった証言はなかったものの、「クラウンクラス用FRプラットフォームの新規開発は凍結した」というのがその情報だった。はっきりとは言わなかったが、次期型クラウンはこれまでの流れから大きく変わるということを示唆する情報だった。
クラウンは一部輸出仕様もあるが、基本的に国内専用モデルとして開発されている。国内営業部門からは、ユーザーニーズとして、全幅1800mm以下がマストと要件が突き付けられている。実際、現行型クラウンのサイズは全長4910mm、全幅1800mm、全高1455mmでホイールベースは2920mmである。
クラウンとて、もはや聖域ではない

国内ニーズが大部分のクラウンは営業部門からの要求で全幅1800mm以下を堅持。現在主力のGA-Lプラットフォームは全幅1800mm以下への対応が難しく4ドアセダンで次期クラウンを企画するためには専用プラットフォームの開発が必須となるが現時点で新規開発計画は凍結されているという
トヨタとしては、大型FRプラットフォームをレクサスLS/LCなどに使うGA-Lプラットフォームに集約したいというのが中期的ビジョン。現行クラウンはGA-Lプラットフォームのナロー版である。
ところが、GA-Lプラットフォームは今後強化される側突対応などにより全幅1800mm以下とすることが難しくなり、クラウン専用プラットフォームを別に開発しなければいけないという。
マークXが現行型限りで消滅し、さらに、先日大幅なマイナーチェンジを実施したレクサスISも、フルモデルチェンジすることなく、マイナーチェンジを繰り返しながら進化しているのも、『全幅1800mm以下に対応する新プラットフォーム開発凍結』と密接に関係しているのだ。
ここで、マツダとの協業によるFRプラットフォーム共同開発の情報が思い出されるが、前出の関係者は「クラウンクラスのプラットフォームを協業とはいえ、トヨタ本体以外に任せることはない」と断言する。
それに「そもそもマツダのFRプラットフォームは全幅1800mm以下には対応していないので、その線はない」。
トヨタとしては、D~EセグメントをFF系プラットフォームに統一していく方針だという。その中心となっているのがカムリなどに使われるGA-Kプラットフォームだ。
カムリのサイズは全長4910mm、全幅1840mm、全高1445mmで、全長は現行型クラウンと同じ。ホイールベースは2825mmでクラウンより95mm短いが、エンジン横置きのFFのため、室内空間はFRのクラウンより広い。
後席足元の広さも圧倒的。レクサスではGSが廃止されて、カムリベースのESが事実上の後継車となっている。
クラウンがFFになる!?


カムリが実はクラウンのサイズをカバーしているのだ。次期型クラウン(に相当するモデル)はGA-Kプラットフォームを使用して、従来のセダン型にとらわれないモデルに発展する、というのが前出関係者の証言を総合した結論だ。
クラウンの名前は残るが、必ずしもこれまでの流れにあるFRセダンであることはない、というのだ。
そしてこのGA-KプラットフォームはRAV4、ハリアーといったSUVにも使われている。ハイランダーはRAV4のホイールベースを延長した3列シート版ともいえるモデルである。
ここで冒頭の中日新聞の報道を思い出してほしい。次期型クラウンはハイランダーのプラットフォームを活用したSUVになる、と伝えているが、本誌スクープ班がつかんでいた情報と符合する。
中日新聞の報道はかなり具体的だ。しかも本誌スクープ班がこれまでにつかんでいた情報との整合性もある。
おそらくは、トヨタの役員クラスが意図的にそれをにおわす発言をして、新聞記事に対する世間の反応を見ているのではないかと予測する。
一方で現行型クラウンは2022年以降もモデルラインナップを整理して継続生産されるという情報もある。
セダン型クラウンの需要は法人需要のみならず、個人ユーザーのニーズも一定数あることは間違いない。
3.5Lハイブリッド、2Lターボは廃止され、2.5Lハイブリッドに絞って継続販売することになろう。
また、公用車などのニーズに対しては、GA-Lプラットフォームをベースに新開発された新型MIRAIもあり、この両面で既存の『セダン型クラウン』のニーズをカバーする。
これが「新型クラウンSUV化」へ向けた計画だと、本誌スクープ班は判断する。

11月23日にオンラインで開催されたトヨタ世界大会で次期クラウンの写真が公開!
最後に興味深い情報をお届けしよう。約36万人の社員や関係者向けに4年に一度開催されるトヨタ世界大会。2020年は11月23日にオンラインで開催された。なんとこの映像のなかで、豊田章男社長が次期クラウンについて言及しているのだ。
このトヨタ世界大会は、俳優・香川照之さんが編集長を務める『トヨタイムズ』が取材した映像で見ることができる。ただし、時々流れる秘匿画像は我々一般の視聴者は見ることができない(トヨタ社員や関係者、香川編集長は見ることができる)。
トヨタの社員や関係者36万人に向けて、豊田章男社長が熱くメッセージを送る形式の映像になっているが、11分15秒過ぎから、次期クラウンについて豊田章男社長は語り始めた。
「お客様が求めるものは日々刻々と変わっていくもの。それに応えることがいつも我々の優先事項です。私の記憶にある限り、クラウンはずっとトヨタのフラッグシップセダンとして君臨しています。
実際、(クラウンは)私より早く生まれているので、とても年寄りと言えるのではないでしょうか。子ども時代を振り返ると、クラウンとの素晴らしい思い出がたくさんあります。
では何故それを変えるのか? 先ほど申し上げた通り、今やどこにも聖域なんてないからです。
私は新型クラウンのデザイナーに、これまでの概念に囚われず、新しい視点で考えるようお願いしました。こちらがその結論です」。
と、ここで新型クラウンの画像が公開される。香川編集長は見ることができたが、我々一般の視聴者はその画像は見ることができない。
やっちまったなあ! さあ、このクラウンはすげえゾ!
これを見た香川編集長は、
「え、やっちまったなあ。マイナーチェンジしない代わりにこうするの? これ欲しいわ。ハーハッハ。できてるよ。運転手さん、楽しいだろうなあと思うもん。ちきしょうめ!」とコメント。
今のクラウンから激しく変わったのが想像できる。でもSUVかどうかは、わからない。香川編集長は、最後にこう締めくくっている。
「さあ、このクラウンはすげえゾ! 見ちゃったゾ!」
香川編集長のリアクションを見る限り、かなり変わったことがわかる。う~ん、見ることができないのが悔しい……。2022年の発売までおあずけとなるのか……。
ベストカーwebでは次期クラウンの最新情報を入手次第、いち早く報告しますのでご期待ください。
4年に一度開催される「トヨタ世界大会」の映像はこちら。豊田章男社長によるクラウンのコメントは11分15秒過ぎから