徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回は日産セドリック Y31を取り上げます。Y31セドリック・グロリアの大きな特徴が新しくラインアップされた「グランツーリスモ」。
従来のブロアムに比べると圧倒的にスポーティで901運動の影響もあってファンなハンドリングを持っていました。クラウンよりも若々しいことをアピールすることで差別化を図ったのもこのY31からです。
徳さんもその走りのよさを認めた1987年7月26日号初出の記事を振り返ってみましょう。
※本稿は1987年6月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2017年5月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■従来の伝統を継承したセダンと、飛躍を遂げたハードトップ
新しいセドリックのボディは4ドアセダンと4ドアハードトップの2種だ。その2つのボディは、そのコンセプトをしっかりと分けている。
セダンのほうは旧型まで連綿とこのクルマが受け継いできた権威とか風格(それが表現されていたかどうかは別として)を重視したデザインで、4本のピラーをしっかりと見せるという手法のリーンハウス(編集部註:窓より上のボディ部分のこと)を持っている。
いっぽう、ハードトップのほうは低いルーフは当然としても、このクラスとしては初めて前後ボディにしぼりを入れている。
つまり、全長4.7m、全幅1.7mというサイズめいっぱいに広がったボディというこれまでの手法を変えたのだ。これはすごい発想の転換だ。もともと全長4.7m、全幅1.7mというサイズは現代ではきわめてバランスのよくないものなのだ。
にもかかわらず、セドリック・グロリア、クラウン、デボネアなどは、このサイズにこだわり、“大きく見せよう”というボディを作ってきた。
ところが、ニューセドリックのハードトップは長年にわたるこのクラスのオーソドックスな手法から離れた。このクラスでもユーザーの主力は、オーナードライバーであり、高級なオーナーカーとしてハッキリと位置づけたいという設計意図の現われだ。
ただし、インテリアに関しては依然としてゴテゴテ趣味をそのまま持っている。妙なカラーのベロアシートやグッドデザインとはいえないスティアリングホイールなどは、このクルマを買う日本のユーザーが、こうも趣味が悪いのかと驚くほどだ。これもかの「マークⅡ現象」をいっそう強めたものかと思える。
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