2021年12月に登場したマツダ ロードスターの特別仕様車「990S」に、個人的にも注目のモデルだという松田秀士氏が試乗!
新技術のKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)搭載で「人馬一体感」をさらに昇華!
最軽量のSをさらに軽量化した「990S」は、どんな走りに仕上げられているのか?
※本稿は2022年2月のものです
文/松田秀士、写真/ベストカー編集部、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』2022年3月10日号
■バネ下を軽量化した990S登場
ベースモデルの990kg、シリーズ最軽量モデルのSから試乗だ。
Sは最廉価ゆえエントリーモデルととらえられがちだが、開発陣が最も力を入れて開発したモデルだという。ボク個人としても一押しのモデルだ。
軽量なうえに、リアにスタビライザーが採用されていないのでリアサスのストローク感が心地よい。
リアスタビライザーがないと不安定になると思われがちだが、ロードスターのリアサスはマルチリンクでブレーキング時などアンチリフトのジオメトリーの採用により安定感がある。
またリアスタビがないぶんリバウンド(伸び側)ストロークも長くなるので荒れた路面でのロードホールディング性もいい。
■強烈に速いわけではないが気持ちよさは格別!!
ひととおり試乗したうえで今回注目モデルの990Sのステアリングを握る。インテリアを含めて変わらないが、走り始めた瞬間からなんとも言えぬしっとり感。
しっかりと地面に張り付いたような落ち着き。まるでポルシェボクスターにでも乗っているかのようなボディやサスが締まった印象。それでいて普通に流す速度で走っていても乗り心地がいい。
外観でSと異なるのはレイズ製のアルミホイールが採用されたこと。
レイズは日本のモータースポーツシーンには欠かせないブランドだ。1980年代後半からF2、F3000と戦ってきた筆者は、その開発に対する飽くなき探求心をよく知っている。
今回装着されるレイズ製ホイールは16インチのZE40RSで1本につき約800g軽量化されている。つまり4本で3.2kg軽量化されているということだ。
バネ下重量の軽減はハンドリング性能の向上に大きく寄与。しかもホイールやタイヤは回転しているから、ジャイロ効果への影響も大きく、速度の上昇に合わせてさらにハンドリングの向上が見込める。
実際に速度域が上がるにつれて、フロントの応答性がよくなる。バタつき感もない。
バネ下の軽量化に合わせてサスも専用チューニングしているというから、総合的に完成度の高い足に成長した。
またブレーキにはフロントキャリパーにBrembo製対向4ピストンと大径ディスクが奢られ、リアには大径ディスク&キャリパー(Brembo製ではない)を装着。
ブレーキの効きは非常にいいが、初期のペダルタッチに対して効き過ぎると感じたから、まだ改善の余地ありだ。
そして、今回全モデルにKPCが標準装備された。詳細は次項に譲るが、リアスタビを装備しない990Sではその効果をより体感できた。
トラクションコントロールをOFFにすればKPCもOFFになるので、走行中に切り替えて違いをテストしたが、ONにした時のリアの安定感は明らかに高くなる。特に高速になればなるほどその効果は絶大だ。
逆にタイトコーナーでは軽快感よりも安定方向になり操舵角が増える印象だったので、腕に自信があれば切り替えを楽しむのもいい。ただし、その場合はトラクションコントロールもOFFになるので、KPCのみのOFFスイッチが欲しいところだ。
2Lエンジンを搭載するRFにもKPCが採用されたわけだけれども、おおむね990Sと同じようなフィーリングとなっている。
RFはソフトトップに対して重く、サスもよりハードなセットアップが施されている。
2Lエンジンはレスポンスもいいので、アクセルのON/OFFでリアサスの上下動も大きいが、KPCのコントロールによりしっとりと落ち着いたリアサスの動きになる。KPCは加速しながらのコーナリングで心強い味方となると言えるだろう。KPCとRFの相性もいいようだ。
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