■N-BOXは実用性の傑作だと思う
N-BOXのシートは、軽自動車とは思えないほどのよさ。走り出すとわかるのですが、シートが車体の突き上げなどの振動をずいぶんと吸収していて乗り心地に貢献しています。フロアからは微振動を感じますが、お尻には伝わってこない。このシートのダンピングはとてもいい。へんにフワフワすることなく、衝撃はスッと吸収してくれる。ウレタンの密度も適度で、いい設定の材料を使っています。シート表皮の張り加減も絶妙です。
運転席に座って手の届く範囲にモノ入れがたくさんある。これはモノ入れの傑作、実用性の傑作です。若い開発陣が中心になって、ワイワイガヤガヤやりながら、使い勝手のよさについてをみんなで知恵を出し合ったのでしょう。
さすがにターンパイクの上り坂ではもうちょっとパワーが欲しいです。軽自動車のNAではこの程度でしょうか。
ボディ剛性は高い。車高が高く、前後ドアの開口部、テールゲートの開口部が大きい構造を考えればこれは凄いと思います。操舵に対するレスポンスは機敏ではないものの、中立付近にイヤなアソビはなく反応しないわけではありません。このくらいダルにしておかないと、運転に興味のないドライバーの雑な操作にクルマがフラフラしてしまうためあえてこのようなチューニングとしているのでしょう。
リアがちょっと操舵に対して遅れる印象。これは乗り心地を考慮してリアサスをソフトにセッティングしているためです。「抑え」が足りない印象。フロントのロールに対しリアがちょっと遅れて、しかもフラ〜と深くロールしてしまう。スズキの軽はここでグッと途中からロールを抑えてフロントとうまくバランスさせてくれる。ショックアブのチューニングの違いです。0.2〜0.5m/sec. の領域で縮み側の減衰が立ち上がってくれると、ダラ〜とした動きが抑えられてシャキッと、安定感のあるハンドリング、乗り心地になると思います。現状でも苦労してチューニングしていることはわかるのですが、もう一歩突き詰めて欲しいところです。
■マイナーチェンジでフィットはレベルアップを果たしたか
フィットの運転席に座ると、シート直下のフロアがずいぶんと高くなっていることがわかります。足がシート下に潜らない。ガソリンタンクがここにあるためです。
ブレーキをリリースするとモーターでスルスルと静かに走り出しますが、ちょっとアクセルを踏むとすぐにエンジンが始動してしまいます。せっかくのハイブリッドなのですから、もっとモーターの力を前面に押し出した演出が欲しいです。モーターの駆動力が生み出すトルク感やレスポンスを新しい魅力として上手くアピールするべきだと思います。ある程度速度が乗ったところでポンとアクセルをオフにしたときの回転落ちも鈍い印象です。全体的にパワートレーンがモサッと、レスポンス感に乏しく感じられます。
操舵に対するクルマの動きは気持ちいい。ガソリンタンクやバッテリーなどの重量物がフロアの低い位置、そしてホイールベース内に収まっているため、重心が低く前後重量配分にも優れるためです。フロントタイヤの接地荷重が抜けません。そのため舵の効きがいいし、コーナリング時の4輪接地グリップが生かされ、懐の深いハンドリングが生み出されています。
乗り心地のよさもこのパッケージングのメリットです。フロアの振動を重量物のバッテリーが吸収して抑え込んでいる。この乗り味はとても魅力的です。乗り心地やハンドリングはずいぶんと進化していると思いますが、ハイブリッドらしいモーター駆動力をもっと味わいたいです。エンジンが勝ちすぎてしまっている印象で、ハイブリッドらしさを感じません。こうした部分で最近のトヨタのハイブリッドの『楽しさ』の演出はよくできています。
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