N-BOX・フィット・ルノートゥインゴを比べてみたら…!?

■欧州実用コンパクトを目指したトゥインゴ

トゥインゴです。後ろからエンジン音が聞こえてくるのは、なにか楽しいのですが、スマートと比べると音が雑な印象。スマートはもっと重厚な音がします。マフラーの構造が違いますね。

インパネにせっかくホワイトのパネルを使っていますが、インテリアにはもうちょっと粋なアソビ心が欲しい。メーターパネル上部につや消しブラックのフードがついていますが、これは白いパネルがフロントウィンドゥに映り込んでしまうため、後から急遽付け足したのでしょうか!? なにやらとってつけた感です。

スマートにはない3ペダルの5MTですが、スマートのようなミニポルシェにでも乗っているようなスポーティな感覚やしっかり感は感じません。操舵感なども実用車の感覚で、フラリフラリとした印象。スマートはニュルで鍛えた圧倒的なスタビリティを感じます。フランスの田舎道を走るのなら、この感じがちょうどいいのはわかります。ただ、これではアウトバーンは走れません。スマートはアウトバーンやタフな山岳路でも安心して走れます。

エンジンはちょっと非力です。ギア比は全体的にハイギアードで上り坂は2速を多用しないと上りません。

ブレーキの効きにリニア感がない。踏み始め初期のちょっと効きの甘い印象から踏み増していくと、急に奥の方でググッと効きが強くなる。ブレーキ力のコントロール性が今ひとつよくないのです。

同じプラットフォームからクルマを開発しても、スマートとトゥインゴはまったく違うクルマになっています。これがベンツとルノーの差といえます。トゥインゴは徹底的に『普通のクルマ』なのです。リアエンジンなので前軸重量が440kgで後軸重量が520kg。本来であればフロントをもっとビシッと固めて操舵に対しキビキビと動かすセッティングとなりそうなのですが、トゥインゴはフロントもリアも緩めのセッティングでフラフラした印象で、やっぱりフランスの田舎道の印象しか出てきません。

水野氏「トゥインゴはスマートと同じプラットフォームとは思えないほど別のクルマになっている」。後部荷室下に直列3気筒998㏄エンジンを搭載するトゥインゴは、基本プラットフォームをスマートと共用するのだが、仕上がったクルマの乗り味はスマートとは大きく異なるものとなった


今回試乗した3台の『ここがいい』『ここがダメ』

ホンダ N-BOX G-L(採点…90点)

徹底的に使い勝手のよさを追求したパッケージングは大きな価値。例えばリアシートのスライドや収納性といったユーティリティや、後席側から助手席の前後スライドやリクライニングまで動かすことができるレバーなど、使う人のことを考え抜いた作りや仕掛けはお見事。小物入れが随所にあり使い勝手に優れる。

走りの部分では、クルマ好きにとってはちょっと操舵に対する反応などもの足りない部分はあるが、主たるユーザーのクルマに興味のない主婦などにとってはむしろちょうどいい。ただ、リアサスだけはもうちょっと減衰を高めフロントと動きをバランスさせたい。

水野和敏 取材メモ

■若い開発者たちがワイワイガヤガヤやりながらよりよいクルマを目指して開発した、活気ある開発現場が感じられる
■シートのアレンジやスペースの使い方など、細かい部分まで気を使って作り込まれている
■エンジンはさすがにNAだと非力さを感じるが、実用上は充分

ホンダ フィットハイブリッドL(採点…85点)

ハイブリッド車という観点で評価をするならば、もっとハイブリッドのメリットを活かした方向性を打ち出して欲しいというのが正直な意見。ハイブリッドが燃費のいいだけのクルマという時代はもう終わって、これからは、さらにハイブリッドだからこそのドライバビリティの魅力を作り出していく時代なのだ。モーターのトルク感やレスポンスを生かしたドライバビリティをもっと前面に押し出して欲しい。

いっぽう、ハンドリングや乗り心地には、低重心で前後重量配分に優れるハイブリッドゆえのパッケージングが生きている。これは大きな魅力。

走りの部分では、クルマ好きにとってはちょっと操舵に対する反応などもの足りない部分はあるが、主たるユーザーのクルマに興味のない主婦などにとってはむしろちょうどいい。ただ、リアサスだけはもうちょっと減衰を高めフロントと動きをバランスさせたい。

水野和敏 取材メモ

■せっかくのハイブリッドなのだから、もっとモーターの力を使ったパワーマネージメントとしてはどうかと思う
乗り心地など、初期型から比べるとずいぶんと改善されているが、まだまだ細部の煮詰めに余地はある
バッテリー搭載位置もあり、低重心で操縦安定性は優れている

ルノー トゥインゴ ゼン(採点…88点)

実用性を重視した大衆車という側面で評価をすれば、90点を与えてもいいのだが、スマートと同じプラットフォームから開発されているということを考えると、スマートで感じられた「走らせる面白さやしっかりした安心感」がまったく感じられずふわふわした感覚が気になる。実際、使っていてなんの不自由もなく、乗り心地に不満があるわけでもない。箱根の上り坂ではちょっとパワー不足を感じるものの、1L NAということを考えれば『普通』。

ただ、荷室スペースはRRゆえに犠牲になっている。この犠牲をスマートのように走りのよさや粋な雰囲気などでカバーして欲しい。

水野和敏 取材メモ

■スマートと同じプラットフォームとは思えないほど、違ったクルマになっている
■スマートではもっとキビキビしたシャープな操縦感覚だったものが、トゥインゴではゆったりとしたハンドリングで、いかにもフランス車の実用車といった乗り味
■エンジンも基本が同じとは思えないほどアクセルに対するレスポンスなどに違いがある

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元日産のチーフエンジニアにして現行型GT-Rの生みの親である水野和敏氏。
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