2018年6月26日に発売され、その後1カ月時点で3万台という受注を記録した新型クラウン。その好調な出足に比例するように、概ね高い評価が目立つ。
では、その真の実力は世界基準に達しているのか!? 同クラスのベンチマークとなるメルセデスベンツEクラスを比較対象に、徹底的にテストを行った。
クローズドコースを舞台に緊急回避性能、ハンドリング、そしてブレーキ性能などのメニューを実施した本テスト、同じコンディションでテストを行うと、両車の“哲学”の違いも明らかとなった。
文&TEST:松田秀士
写真:池之平昌信、平野学
ベストカー 2018年9月10日号『灼熱のダイナミックTEST』より
クラウンとベンツEは安全への考え方も対照的!?
新型クラウンはベンツのダイナミック性能を超えたのか? テスト前におさえておかなくてはならないのが車重とタイヤのスペック。テスト車のデータは以下のとおりだ
■クラウン【2.0ターボRSアドバンス】
・車重:1730kg
・タイヤ:225/45 R18
■E220d【アバンギャルドスポーツ】
・車重:1820kg
・タイヤサイズ:(前)245/40 R19、(後)275/35 R19
Eクラスは車重が90kg重く、それをカバーするように19インチサイズの幅広タイヤを履く。ま、どちらも走りを重視したスペックだ。
興味津々でダブルレーンチェンジをまずクラウンから行う。高速での瞬間的なステアリング操作によるサスペンションへの速い入力。さらに切り返しでの収束性、あるいは破綻した時のリカバリー性、そしてスタビリティコントロールがどの程度フォローするか? だ。
限界速度を試すためそれぞれ2回のチャレンジ。クラウンの限界速度域は高く115〜120km/h。120km/hに近づくにつれてその介入度が大きくなる。
ただ、安定性は極端に破綻することもなく、速度に比例してリアの安定性が低下。つまり、速度が上がるほどに操舵に対してリアが遅れてくるので滑り始めるのだ。
いっぽうEクラスの通過限界速度は105km/h。ロープロファイルで幅広タイヤなのに限界値はそれほど高くない。
興味深いのは105km/hを超えるとVSC(横滑り防止装置)の介入が極端に増えること。そして一気に速度を低下させる。速度超過はドライバーミスと判断し、かなりの主導権をドライバーから奪っているようにも感じた。
いっぽうクラウンは車体の限界値を上げ、VSCは速度段階に比例して介入度を上げる。たったこれだけのテストで、安全対応への考え方が異なるようにも感じた。
ハンドリングはどうか?
さらに興味深かったのがスラローム。こちらはハンドリングの評価なので、ドライブモードをどちらも「スポーツ+」に設定してテストした。
両車ともに60km/h+程度の速度で旋回するのだが、クラウンはリアのスタビリティが高くしっかりと路面を捉えている。なのに、旋回の中心はドライバーのあたりにある。
つまり、リアのスライドは感じさせないのだが後輪もステアしているように感じ、少ない操舵角で綺麗にパイロンをクリアする。電子制御デファレンシャルでも装備しているのか? という感覚だった。
対するEクラスだが、驚いたことにスラローム中リアが滑るのだ。ちょうどスキーのウェーデルンでもしているかのよう。
操舵を強めに入れるとリアが流れ出し、アクセルを踏み込むと適度に加速し滑りは収まる。
この繰り返しなのだが、滑ってもアクセルを踏めば加速するのでタイムは悪くなかった。アクセルを踏まなければVSCによってどんどん減速する。「スポーツ+」モードでのVSC協調介入レベルによるハンドリングの考え方が両車違うのだ。
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