■冷却効率のアップで3.5LV6ターボもパワーアップ!
さて、本題といこう。外見上、タイプSの特徴はフロントマスク。エアロの開口部、特にセンターが拡大されて冷却効率のアップとエアロ整流、特にアンダーボディ(床下)への空気の流れを見直した。この効率をさらにアップするためにリアディフューザー整流版の位置や長さ、そして形状も本格的なイメージ。
冷却効率アップの目的はパワーアップした3.5LV6ツインターボユニットだ。まず、ターボ加給圧を5.6%アップし、インジェクターの燃料噴射流量を25%アップ、インタークーラーの放熱量も15%アップしている。その結果、パワーは+22psの529ps、トルクは+50Nmの600Nmを発生する。
また、フロントのツインモーターユニットを20%ローレシオ化。これによってアクセルON時の駆動のツキを上げる目的だ。ほかにもバッテリー出力(10%アップ)と使用可能容量(20%アップ)の向上によってリアモーターの出力を7psアップ。これらによってシステム最高出力は2020年モデルの581psから610psに、システム最大トルクも646Nmから667Nmに各々アップしている。
■2020年モデルよりもタイプSは明らかにパンチ力あり!
試乗では初めに2020年モデルに乗り、そのあとタイプSのステアリングを握るという比較試乗。タイプSは明らかにアクセル操作に対するピックアップがデジタルで、加速感もスムーズなうえにパンチ力がある。
エンジンサウンドに関しては吸気サウンドを引き出しながらスピーカーを使ったアクティブサウンドコントロールで高回転域のレーシーな音を聞かせている。騒音規制の観点からも、アクティブサウンドコントロールは今後重要な技術である。
このような加速レスポンスの向上に伴い、サスペンションでは磁性流動体ダンパーのプログラミング変更によって伸びを抑えることで、安定性と接地感を出しているとのこと。2020年モデルに比べて明らかに路面のアンギュレーションに対するピッチングやバウンシングが少なく、タイヤが路面に追従していることを実感した。
また、トレッドが前+10mm、後+20mmと広がっているが、これはホイールのインセットを少なくしてフェンダーと面一になるほど外に出している。この方法をとると、ロール軸が下がる方向になるので、重心との距離が長くなりロール剛性を下げることになる。
つまり、スプリングをソフトにしたのと同じ効果がある。バネレートなどは2020年モデルから変化がないとのことなので、路面への追従性はこれによるところが大きいのかもしれない。上下動が抑えられているので乗り心地もよく、ソフトになった分をダンパーで制御しているのだろう。
■コーナーへアプローチする際の安心感が段違い
また、ブレーキの初期タッチに対する減速Gの立ち上がりも早く、これならサーキットでコーナー手前ギリギリまでブレーキングを遅らせることができる。この時のノーズダイブがリニアに発生し、フロント荷重をしっかり保ちながらコーナーにターンインできる。
2020年モデルと比較して明らかに異なるのが、コーナーへアプローチする時の安心感。当日は雨が降ったり止んだりの天候で、ウェットもハーフドライもある路面。濡れた路面でコーナーへターンインすることの不安感がタイプSは少なく、コーナー進入の限界速度をつかみやすい。ステアリングから伝わるフロントタイヤのグリップ感が高いのだ。実はタイヤも2020年モデルのコンチネンタルからピレリに変更されていることも影響しているのかもしれない。
舵がよく効き、コーナー脱出ではトラクションも高く姿勢が乱れない。SH-AWDのチューニングも進化している。ウェット路面だとよく感じ取れる。このリアの落ち着きにはアンダートレイ(床下)の空気の流れによるダウンフォース増大が影響しているという。わずか60km/hレベルでも発生しているのだという。
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