■実走でわかったLS500の軽快感と課題 【92点】
ゆっくりと走り出すと、レベルはよくなりましたが、初期モデルで感じたブルブル感が少しリアに残っています。
モード切り替えをコンフォートにすると、よりいっそうこのブルブル感が増してきます。
一方、モードをスポーツに切り替えると乗り心地はやや硬くなりますがブルブルが抑えられてむしろフラットな感じになり、路面の小さな凹凸を乗り越えた際の車体の動きを一発でスッと止めています。
もうちょっと速度を上げてみましょう。改良ポイントはショックアブソーバーだけと説明されていますが、乗った感じでは、前後のバネレートを上げた修正も入っているような動きです。
ボディ全体の動きは明らかによくなりました。操舵に対する前後のロールバランスも動き出しのタイミングもいい。ロール量自体も相当減っています。
大柄な車体にもかかわらず、俊敏な身のこなしがスムーズにできています。これは気持ちいい。クラウンよりも軽快な感じです。これはかなり走り込んで合わせてきましたね。
以前乗った初期型では、バネがまったく機能せず、ショックアブだけで車体の動きを制御していると評価し、そのように記事にも書きました。
この改良版ではバネとショックアブの仕事量をきちっと配分して、車体の動きがコントロールされて、しっかり感のある操安性能がまとめられています。
ただ、ハイスピード領域の操安性能や乗り心地は格段によくなったのですが、一般道で重要な40〜50km/h走行時に、路面の小さな凹凸からの入力に対してコンフォートモードやノーマルモードではブルブル感的な突き上げが出てしまっています。
せっかくここまで仕上げてきたのにこの部分は少しもったいない。リアショックの伸び側の減衰力を0.05m/s付近で20〜30Nm程度緩めてやれば解決すると思います。
連続した小さな入力に対し縮んだショックアブが伸びて戻る前に(縮んだままで)次の入力が入るという繰り返しになってしまっています。
伸び側の減衰を緩めることで「ストロークが戻ってから次の入力が入る」ようになり、路面の細かな凹凸は吸収できると思います。
フロントは現状でちょうどいいです。このリアのブルブル感的な突き上げは小修正のランニングチェンジでさらによくしてほしいところです。
エンジンも滑らかで気持ちいい。3.5Lツインターボですが、ドッカンターボではなく、低い回転からトルクが直線的に立ち上がりますし、アクセル操作に対するレスポンス遅れも感じません。音も気持ちいい。
ものすごく上手に改良してきたと思います。運転していて楽しいですし、気持ちいい。よくここまで短期間で作り込んできたと思います。
この方向性はアリです。この大きなフラッグシップサルーンを、ベンツでもなくBMWでもなく独自の感覚でスポーティに仕上げてきた。これがレクサスの目指す方向性なのでしょう。
■S450はハイブリッドの違和感がない【94点】
走り出すとロードノイズが耳に付きます。レクサスLSは断然静か。これはタイヤ、ピレリP-ZEROの特性によるところと思われます。
またP-ZEROは、サイドが比較的ソフトないっぽうトレッドが硬くしっかりしたタイヤなので、操安性でもちょっとグニャとした動きを感じる場面があります。
サイドの柔らかさとトレッドのしっかりした剛性がこのベンツSクラスの重量には少しバランスが合っていない感じがします。
操舵に対するクルマの動きはとても滑らかで上質感があり気持ちがいいのですが、ロールであるとか車自体の動く量は少し大きめ。
車体が”よっこらしょと”動いている印象で、LSとは対称的な動きです。
マイルドハイブリッド3LターボはフラットトルクでSクラスの巨体を余裕でものすごく上品に走らせますが、アクセルを踏んだときの回転の上がり方に対するトルクの盛り上がりなど、エモーショナルな部分はレクサスの3.5Lが楽しい。
ベンツのマイルドハイブリッドは、モーターとエンジントルクのつながりが自然で違和感なく作り込んでいる点は見事だと思います。
最後に、今回の2台は「どっちがいい!?」と対決するクルマではないと思います。それぞれが異なる方向を目指しています。
ベンツSは徹底的に上質で滑らかな高級サルーンを作っていますし、それはレクサスLSでは味わえない世界で高い完成度です。レクサスの楽しさはこれまた独自の素晴らしい世界です。
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