冬場の運転訓練といえば、長野県女神湖の氷上コースが定番(長野県北佐久郡にある女神湖は冬場は湖面が凍結する。その湖面に車両を乗り入れて、氷上走行が体験できる)。「凍った湖面の上……そんな危険なシチュエーション、普通に走ってたらありえないのでは?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれない。
しかし「凍結路面」は案外身近にある。この季節、早朝や夜間の日陰でカーブを曲がった出口の路面がいきなり凍ってた、なんてことは日常茶飯事なのだ。
そこで今回は、ここ最近なにかと好評のフォレスターとXV、最新のスバルe-BOXER車両を持ち込んで、得意の低μ路面でそのAWD性能やハンドリング性能をたしかめてみた。
文:鈴木直也 写真:平野学
■e-BOXERの強みとは
「e-BOXER」とはスバルのハイブリッドパワートレーンのニックネームだが、つまりは「電動化したボクサーエンジン」という意味。メカニズムは比較的シンプルで、FB20型エンジン(145ps/188Nm)→リニアトロニックCVT→モーター(10kW/65Nm)→AWDというパワートレーン構成。分類上はパラレル型ハイブリッドということになる。
このタイプのハイブリッドでは、モーターは脇役的な存在だ。アイドリング停止時間の拡大や、低中速域のトルクアシストなど、縁の下の力持ち的に働いてくれる。
それゆえ、ドライの舗装路で乗っているだけだとそれほどモーターの存在を意識しない。たぶん、ガソリンを給油した時に初めて「お、意外に燃費が伸びてる」と、そのありがたみを実感するんじゃないか(フォレスターでJC08モード燃費14.6km/Lが18.6km/Lへ改善)。
しかーし! 今回はここが大事だが、氷上のような低μ路面では、レスポンスに優れたモーターのアシストが大いに活きてくる!
具体的なシチュエーションを説明しよう。
氷上のような超低ミュー路面では、アクセルを開ける→ツルツルの路面でタイヤが滑る→VDCが作動してトルクを抑制するというサイクルが常に発生している。
これは、運転の上手下手関係なし。不断にミューが変化する氷上では、どんなに慎重にアクセルをコントロールしても4輪のうちどこかでスリップが発生する。これは、VDCを完全にOFFできるクルマを走らせてみればすぐ体験できるが、トラクションコントロールシステムがないと氷上ではすぐ滑りっぱなしの状態になってしまう。
こういう状況でe-BOXERのナニが良いのかというと、「滑る→VDCが滑りを止める」というサイクルの波を、ずっと小さく、しかも安定させることが可能となる。舗装路では65Nmのモータートルクがトラクションに影響を与える影響は少ないが、グリップの限界が圧倒的に低い氷上では大違い。レスポンスに優れリニアに反応するモータートルクをうまく使うことで、より安定したトラクション性能を引き出すことができるのだ。
今回はe-BOXERの繊細なトルク制御とともに、AWDのトラクション性能やシャシー性能の領域もしっかり味わえて、ここもスバルらしい安全性と楽しさの両立した走りが好評だった。
■XⅤとフォレスターの違い
XVとフォレスター、あえて両車の特徴をあげると、遊ぶなら軽くて重心の低いXVのほうが面白いかも。軽いということは、何をやっても反応がいいということで、やりすぎちゃった場合の回復性がいいのが助かる。
いっぽう、フォレスターで「さすが!」と感心したのは、調子に乗りすぎてコースアウトしちゃった場合。タイヤがずっぽり雪に埋まって「これはレスキューが必要かなぁ?」という状況だったのだが、ドライブモードに新たに加わった「マッド/ディープスノー」を選択し、DレンジRレンジを素早く切り換えて前後に揺すってあげたら、なんと自力で脱出に成功した。
並みのSUVならスタックする道でも、フォレスターなら脱出できるわけで、これは心強い。
■プロだけでなくクラブ員も大満足
今回の女神湖氷上走行イベントは、「ベストカーClub」が主催した。ベストカーClubとはクルマの楽しさを存分に味わい、その楽しさを発信できるよう日々訓練するための有料コミュニティ(現在新規会員は募集していない)。
スバル車2台はクラブ員にも大変好評で、「この時期、突然の路面凍結などを考えると、AWDは必須装備。しかも頼もしいだけでなく楽しさも実感できるところが、さすがスバルという感じ。特にXVは今まで乗ったなかでは最高峰の楽しさだった」と手放しで絶賛だった。