日本を代表する伝統の四輪駆動車が、8月いっぱいで37年の歴史に幕。
1982年に登場し、“クロスカントリー4WD”の世界を大きく変えた三菱 パジェロが、間もなく日本において37年の歴史に幕を下ろす。
ジープの開発を通して培ってきた高い技術力とノウハウを結集して生み出されたパジェロは、卓越した悪路の走破性と耐久信頼性を武器に、SUVの代名詞的な存在に。パリ-ダカールラリーでの栄光も後押しとなり、世界にまでSUVファンを広げた。
世界170カ国で販売され、1990年代からはSUVのベンチマークとなっている。ランドクルーザープラドの今があるのも、よき先輩のパジェロがいたからだ。追いつき、追い越せと頑張り、栄光の座を掴み取った。
そして、このパジェロが2019年8月をもって国内向けモデルの生産を打ち切る。生産終了を前に「ファイナルエディション」も700台限定で発売されたが、すでに8月下旬時点で生産はほぼ終了し、現在は一部販売店での「在庫」を残すのみ(※当サイト調べ)という。
日本での“現役引退”が刻一刻と迫るパジェロに最後の試乗。改めて感じたパジェロの“古臭さ”と魅力。そして、今後とは?
文:片岡英明
撮影:池之平昌信、写真:MITSUBISHI
2006年発売の現行型限りで37年、4代の歴史に幕
日本での“最後のパジェロ”となったのは2006年に登場した4代目だが、モノコックボディにラダーフレームを溶接したビルトインモノコック構造はキャリーオーバー(編注:旧型の流用)だった。
また、パワーユニットやサスペンションなどのメカニズムも継承している。4WDシステムも3代目から「スーパーセレクト4WD II」を受け継いだ。4H(ハイ)と4L(ロー)を切り替えられる副変速機を備え、2WD、フルタイム4WD、デフロック付きの4WDを選べる。
また、滑りやすい路面で片側のタイヤが空転し、もう一方のタイヤが止まってしまう状況でもトラクションを確保してスタックを回避するアクティブスタビリティ&トラクションコントロール(ASTC)も装備した。
デビュー時は3ドアのショートボディと5ドアのロングボディを設定していたが、ショートボディは2018年2月に生産を終えている。
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最終仕様に搭載されるエンジンは、3LのV型6気筒(ガソリン)と3.2L直列4気筒クリーンディーゼルだ。
ファイナルエディションは、エクシードの寒冷地仕様をベースにルーフレールや電動ロングサンルーフ、本革のパワーシート、サイド&カーテンエアバッグなど、魅力的なオプション装備を積極的に採用。
また、リアデフロックも標準装備している。ボディカラーは4色が用意された。
「時代」を感じさせる久々のパジェロ
ファイナルエディションが積むのは、先述のディーゼルターボで排気量3200ccの4M41型エンジンだ。クロスオーバーSUVに慣れていると、運転席はよじ登る感覚だし、始動もプッシュ式ではない。久しぶりに乗ると、このギャップに笑みが出る。
ディーゼルターボは低回転からパンチのあるトルクを発生し、扱いやすい。ガソリンエンジンの4.5L級の豊かなトルクを1000回転台から発生する。低回転は得意だ。
だが、5速ATだから100km/hクルージング時の回転数は2000回転に迫る。加速時はエンジン音が耳障りだし、信号待ちではアイドリングストップしないから振動も大きく感じる。ノイズと振動は今のSUVと比べると大きく見劣りする部分だ。
高回転側も3500回転手前で頭打ちになる。が、実用域のトルクは充分に確保されているし、振動とエンジン音も高まるから引っ張る意味はない。
ちなみに、ガソリンエンジンは2970ccのV型6気筒(6G72型)で、パワー&トルクは178ps/26.6kgmを発生。ディーゼルターボより車重は150kgほど軽いが、それでも2100kgあるから多人数乗車のときのパンチ力と軽快感は今一歩だ。
が、静粛性と滑らかさはディーゼルターボを相手にしない。高速道路、街中の走りともに快適である。
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