■タイヤのビジュアルだってクールじゃないと
そうそう、ネオバといえばその独特なトレッドパターンに触れないわけにはいかない。近年はストレート溝のタイヤが多いなか、AD09は実に複雑な曲線を描いたトレッドパターンになっている。
「あっ、トレッドパターンいいでしょ? これ俺が原画デザイン描いたんだよ。クルマがかっこよくてもやっぱりタイヤのパターンがかっこ悪いとダメでしょ」と織戸選手。デザイン画を描いちゃうなんて多彩すぎやんっ……。
もちろんスタイリングばかりではなくてこの絶妙なパターンがサーキットを攻めてもブロックが捩れたり、飛んだりするのを防ぐ効果があるという。AD09設計担当の堀内さんは、大きな開発方針としてネオバを現代のクルマに対応するべく、まずは剛性を上げることに着手したという。
「剛性を上げるのって実は簡単なんです。すごく単純に言えばどんどん固くしていけばいいので。でもそれだとゴツゴツして乗り心地は悪化しますし、思ったとおりのグリップを得ることができない。このバランスをとるのが非常に難しいのですがAD09は実現しています」と堀内さんは胸を張る。
また製品企画を担当した横浜ゴムの小畑さんによればAD09の開発に着手した時期は2018年頃とのことで、スープラやGRヤリスが登場する前のことだったという。スープラが登場してからは開発車両としてスープラを導入し、86やBRZ、WRX STIなど幅広い車種での開発テストをこなしてきたという。
「どの車種に履いていただいてもマッチングするのがネオバですから、開発車種も少し幅を持たせました。タイヤを変えてすぐにわかってもらえるようなキャラクターにしていますので、サーキットに関わらず市街地でもすぐ性能を感じてもらえますよ(小畑さん)」。
ハイグリップラジアルタイヤと聞くと「サーキット専用」に近いと思う人が多いが、さすがはアドバン・ネオバ。ひと味違う開発方針だったというわけだ。街乗りの法定速度でもクルマの動きをじっくり感じて楽しめるコンセプトが嬉しい。
「スポーツカーに乗っている人ならサーキットのタイムアタックだけじゃなくてもオススメしたい。AD09は自信をもって勧められるタイヤだよ」。白い歯でニッコリ笑う谷口信輝の姿が印象的だった。
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