■凍結した急こう配の下りカーブも安心してステアリングを切っていける
試乗スタート地点の旭岳は標高が高い山間の地。天候はくもりで気温はマイナス7℃。降り積もった雪は解ける気配をみせない白銀の世界だ。
私は雪道の感触を確かめながら圧雪路を慎重に走りだす。すると、VRX3はアクセルペダルに力を込めた分だけ車体を前に進めていける感触を与えてくれた。水気が少ない圧雪路では、ステアリングを切り込めば、切ったなりに素直に曲がる印象。
1年ぶりに雪上を走ったにも関わらず、それほど緊張感を感じていない自分に驚かされた。滑り際の振る舞いを確かめるべく、ブレーキを少し強めにかけてみると、ギュギュっと雪を掴みながら、安定した姿勢を保って停まろうとする。一歩先の挙動を予見させる走りは、グリップ感を把握しやすい点で安心感がもてた。
忠別湖に降りる県道は急勾配の下り坂でカーブが連続する。外気温はこの時点でマイナス5.5℃からマイナス2.5℃に上昇。乾いた新雪が積もっているが、山の陰では雪の下に凍った路面が顔をだす。VRX3はペダルを踏む力加減に応じて、丁寧に路面を捉えながら進んでいける感触を与えてくれていた。
対向側から路線バスが走ってきたが、安定した状態で走っていられるから、雪壁にそっと車体を寄せながら、すれ違いを難なくこなすことができる。ワインディング路は意のままに、スムーズに駆け抜け、アウディQ5の走りにふさわしい気持ちの良いハンドリングを楽しませてくれた。さらに気温が上がり、雪が溶け始めた場所でブレーキを掛けると、流石にABSが作動したが、そうした状況でも想定したラインから大きくブレて外側に膨らむようなことはなく、予測の範囲で走ることができた。
■氷上性能だけでなく乗り心地やライフ性能などトータルバランスのよさは、雪国のお客さん以外にもおススメだ
旭川の市街地では、外気温はマイナス3℃から0℃に上昇。滑りやすい凍結路やアスファルトが露出した路面に出くわした。停止と発進を繰り返す交差点付近はブレーキを強く踏んだり、一気に加速しようとするとABSやトラクションコントロールの制御が作動しやすい場面といえる。
あらかじめ滑ることを予測しながら緩やかに減速をし始めたり、緩やかに加速していく過程で適度なグリップ感を得やすく、クルマを走らせやすいと感じた。
街中は多くのクルマが行き交う複雑な交通環境だが、ブレーキの際も想定よりも行き過ぎて、ペダルやハンドルの操作で慌ててフォローする必要がないため、ゆったり構えてドライブできる。
さらに、快適性を実感したのは、走行時のロードノイズの少なさと路面に対するタッチの優しさ。発泡ゴムは路面の凹凸を包みこむようにしなやかにタイヤを接地させるのと同時に、空気バネの役割を発揮するので乗り心地も優しい。車体側に身体を揺さぶる嫌な突き上げ感を伝えてこないので、家族や友人との毎日の移動も快適に過ごすことができそうだ。
いまやSUVは日常からレジャーまで幅広く活躍する多用途性で人気を呼んでいるジャンルだ。日常では家族の移動の足として、雪山にレジャーに出掛けるギア的存在としても活躍してくれる。
今回の試走を通じて、SUVで大切な家族や友人を乗せて移動することを想定したとき、ブリザック VRX3は冬道を走る多彩なシーンで移動の安心・安全・快適を支えてくれるタイヤであることを実感することができた。
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