ボルボLNG直噴ディーゼルエンジンを搭載
ボルボFHガスパワードの特徴が、「LNGをディーゼルサイクル(圧縮着火)で燃焼するエンジン」を搭載していることだ。このエンジンによってFHガスパワードは、同クラスの通常型LNG車に対して、10~25%も優れた燃費性能を実現する。
LNGは液体化しているとはいえ、あくまでも天然ガスなので、物性上はディーゼルサイクルに適さない燃料とされる。そのため大半のLNGエンジンは、ガソリン車やCNG車と同様のオットーサイクル(火花点火)を使うのが定石で、排ガス浄化もしやすい。そのかわり圧縮比を高くできないため、熱効率がディーゼルより低く、航続性能で劣ることになる。
それに対して、ボルボFHガスパワードが搭載する「G13型エンジン」は、火種として微量の軽油をシリンダ内へ直接噴射して圧縮着火、そこへLNGを噴射してメインの燃焼を行うという、特殊な燃料噴射技術を導入した。これは、カナダのエンジニアリング企業ウェストポート・フュエル・システムズとボルボが共同開発したもので、2017年から欧州市場に投入されており、すでに6000台以上を販売している。
実証運行車は、G13型の最新バージョンである「G13S」を搭載する。G13Sは、排気量12.8リッター・圧縮比17.0の直列6気筒エンジンで、動力性能は最高出力460PS/1404~1700rpm・最大トルク2300Nm/945~1404rpm(欧州仕様)と、ベースのディーゼルエンジン(D13K)と同等だ。NOx低減にはディーゼルと同じく尿素SCRを採用し、欧州最新の排出ガス規制・Euro-6ステップEに適合している。