1.9リッターディーゼルの実力
エルフミオを動かす操作はAT車そのもの。ストレート型PRNDゲートと+-マニュアルゲートを組み合わせたシフトセレクターは、電動化が著しい今どきの乗用車よりも普遍的なUIだろう。試乗車はメーカーオプションの電動パーキングブレーキ装着車(標準はサイドレバー)だが、これも特に珍しくはない装備である。
エンジンは排気量1.9リッターの直列4気筒ディーゼル「RZ4E」型で、最高出力120PS/3000-3200rpm・最大トルク32.6kgm(320Nm)/1600-2000rpmを発生する。このエンジンは、2トン積エルフ(3.0リッターエンジンを搭載)より▲120kgも軽い。排ガス後処理で尿素SCRと黒煙除去装置(DPD)を用いているため、軽油のほかに還元剤のアドブルー(尿素水溶水)も消費する。
試乗時は約500kgのダミーウェイトを積載、車両総重量2.7トンほどという状態で、都心の一般道を走ってみた。エンジンの上にキャビンが載るレイアウトゆえディーゼル音は入ってくるが、そのボリュームは過大でなく、室内の空気を震わせる不快さもよく抑えられている。もちろん静かであるのに越したことはないが、2時間ほど連続で運転してもあまり疲れなかった。さすが小トラのトップメーカーである。
このクルマが常用する速度域(微低速~時速60km)での動力性能は、まったく不足を感じなかった。低回転域でのフラットなピークトルク特性は、街中をはじめさまざまなシーンでの走行に適したもので、実にキビキビと走りまわれる。
都心では勾配5%ほどの坂道を通過したものの、この程度では当たり前に軽々と登っていき、対称的に微速でジリジリ進むことも造作なく、一旦停止してからの坂道発進はスムーズである。エンジンは中~高回転域まで軽やかに回り、レインボーブリッジの長大な登坂では一定速巡航はもちろん、そこからの加速も俊敏に受け付けるフレキシブルさを併せもっている。日常的に遭遇しうるシーンでは、充分な動力性能の持ち主だと思う。