現代自動車は水素燃料電池大型トラックの「エクシエントFC」をウルグアイに導入した。同国でグリーン水素(再生可能エネルギーで作った水素)インフラの開発を行なう「カイロス」プロジェクトの一部で、燃料電池トラックの商用運行は南米市場では初めてとなる。
水力発電とバイオマスの活用が進むウルグアイは発電量の99%を再生可能エネルギーが占め、グリーン水素は政府の戦略上も重要なコンポーネントとなっている。南米で始まった水素エコシステムの拡大は、国連や世界銀行も支援している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Hyundai Motor Company・フルロード編集部
南米市場に初めての燃料電池トラック
韓国の現代自動車は2026年3月19日、南米のウルグアイ市場に「エクシエント・フューエルセル(XCIENT Fuel Cell)」大型トラック8台を導入したことを発表した。エクシエントFCは同社の燃料電池電気自動車(FCEV)大型トラックで、南米市場でFCEV大型トラックが商用運行されるのはこれが初めてとなる。
その狙いとして同社は、グリーン水素(再生可能エネルギーのみを使用して製造された水素)インフラの開発と利用を通じて原木輸送の脱炭素化を目指す地域イニシアチブである「カイロス・プロジェクト」を支援することを挙げている。
このため、導入したFCEVは「実証実験」ではなく「実運行」を目的としている。また、現代自動車もカイロス・プロジェクトに参加し、現地のゼロエミッション物流を加速する。
カイロスプロジェクトは、木材の輸送にグリーン水素と燃料電池トラックを活用し脱炭素化を目指すもので、ウルグアイは世界的に見ても再生可能エネルギーの活用が進んでいる国だ。
ウルグアイ産業・エネルギー・鉱山省によると、2024年の総発電量の99%を再生可能エネルギーが占めた。内訳としては水力が4割を超えており、風力とバイオマスが3割弱を占め、太陽光が3%、化石燃料による火力発電はわずか1%だった。
水力発電はサルト・グランデダムなど巨大ダムが立地することによるのだが、特にバイオマスの比率が高いのが同国の特徴となっており、これは製紙・セルロース産業が急発達し、副産物となるバイオマスの活用が進んだためだ。このため木材や林産物の輸送需要も増えているようで、木材輸送でのFCEVトラックの導入は、まさにバリューチェーン全体の脱炭素化に資するものとなる。
高い再生可能エネルギーの比率から、同国がエネルギーの輸出も視野に入れた重要コンポーネントとして戦略的に重視するのがグリーン水素だ。ウルグアイ政府は2040年までにグリーン水素が21億ドル(約3334億円)規模の産業になると見込み、水素エコシステムの成熟に向けて数々のプロジェクトを開始している。
南米での持続可能なモビリティをどのように推進するか?
カイロスもそうしたプロジェクトの一つで、エクシエントFCを約10年間運用し、地場産業の脱炭素化を実現する。なお、この取り組みは国連や世界銀行も支援している。
4.8MWの太陽光発電所と、年間77トンのグリーン水素を生成できる電解プラントの建設もプロジェクトの一部となっており、2026年11月に操業を開始する予定だ。
8台のエクシエントFCのうち、通常運行するメインフリートは6台で、年間で合計100万kmを走行する計画。残りの2台は、当初はバックアップとして提供するが、サービス拡大が可能であれば8台での運行も検討する。
また、円滑で信頼性の高い運行を支援するため、現代と同社の現地販売代理店を務めるフィドカーが専門のチームを結成して、プロジェクトの担当者に対して適切なメンテナンスや操作手順など、包括的な研修を実施する。
ウルグアイは南米で初めてFCEV大型トラックを商用運行する国となり、国内での水素製造から燃料補給インフラの整備に向けた道を開いた。関係者のコメントは次の通りだ。
「私たちはウルグアイの貨物輸送の脱炭素化に貢献できるこの機会を高く評価しています。プロジェクトは国内のみならず、世界レベルで先駆けとなる取り組みであり、ウルグアイがこの分野のハブとしての地位を確立することに貢献できるよう尽力してまいります」
(カイロスプロジェクトのディレクター、フアン・アンドレス・チック氏)
「現代自動車は持続可能な輸送にコミットしています。水素燃料電池を搭載するエクシエントFCは排気ガスを一切出さずに、低炭素な代替手段を提供することでプロジェクトを支援します。ウルグアイで急発展した製紙産業のバリューチェーンを脱炭素化し、より良い未来に向けた行動を、今すぐに起こせることを世界に示します」
(現代自動車ブラジル・中南米の社長・CEOを務めるエアトン・コーソー氏)

