トラクタ(トラック)と連結して運行する「トレーラ(被けん引車)」には、自ら走行する機能はない。しかし欧州では「トレーラにバッテリーとモーターを載せて駆動力を持たせる」というアイディアが実用化直前である。トラクタがディーゼルでもEVでも連結可能という「電動トレーラ」には、どのようなメリットがあるのだろうか。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/「フルロード」編集部、Daimler Truck、Krone、Trailer Dynamics、DB Schenker
トレーラ車軸で発電・回生そして駆動
電動トレーラ(eトレーラ)をほぼ実用化させつつあるのが、欧州大手トレーラメーカーの独・クローネおよび電動トレーラ技術を開発した独・トレーラ・ダイナミクス(TD)社だ。「ほぼ実用化」というのは、欧州の現行法規では「トレーラ=駆動軸を持たない車両」と定義しているので、そのままでは違法になるためだが、国連欧州経済委員会(UN/ECE)ではeトレーラの認可に向けた、改正法規の条文案を検討しているところである。
クローネとTD社は、2020年からeトレーラの共同開発を進めてきた。eトレーラは、トレーラにEVのようなモーター兼発電機付アクスル(電動アクスル)と高電圧バッテリーを搭載して、トラクタの牽引走行をアシスト(発進時、登坂時など)するとともに、制動時には、連結車の巨大な慣性エネルギーを利用した回生(かなりの電力になるとみられる)も行なって、高電圧バッテリーに充電するというシステムである。
このeトレーラ技術を、クローネの低床カーテンサイダー3軸セミトレーラ(欧州のトラック輸送でメジャーな車種のひとつ)に搭載したプロトタイプ車の走行試験では、牽引するディーゼル・セミトラクタのCO2排出量(燃費)を、なんと20〜40%も改善させた。しかも高電圧バッテリーは回生だけで500km以上の運行がカバーでき、EVセミトラクタと連結運行する場合では、最大1000kmもの航続距離が確保できる見込みという。