液体水素の燃料電池トラックがついに顧客の元に! アマゾンなどがダイムラー「GenH2」のトライアル実施へ!!

液体水素を効率的に扱う「sLH2」技術を採用

液体水素の燃料電池トラックがついに顧客の元に! アマゾンなどがダイムラー「GenH2」のトライアル実施へ!!
充填技術のsLH2はダイムラーとリンデが共同開発している。比較的安価なステンレスタンクを使いつつ効率的な充填・貯蔵が可能

 水素は脱炭素において重要な役割を果たすとされるが、中でもダイムラートラックは液体の水素の活用を模索している。これは、気体よりエネルギー密度が高く車両用の燃料としてより優れていることに加えて、輸送コストを低くできることも利用の一つとなっている。

 水素自体は軽いが、気体水素を充填する高圧タンクは重く、コストと重量の両面から液体用のタンクに優位性がある。特にトラックでは多くの積載量を確保するためにもタンクの軽量化は重要だ。

 こうした背景もあって、カスタマートライアルでは新しい充填プロセスとなる「sLH2」(subcooled liquid hydrogen)が初めて採用された。これはダイムラーとリンデ社が共同開発しているもので、ISO標準規格として自由に利用できる。

 充填ステーションとタンクの両方での対応が必要となるほか、タンクをマイナス245度以下の極低温に保つ必要があるが、sLH2ではボイルオフ(気化)した水素を再液化して損失を抑える技術などが使われており、従来型の液体水素(LH2)より効率的な水素の充填・貯蔵が可能となっている。

 ちなみに気体水素を使う他社の燃料電池トラック(市販車)では、ヒュンダイ「エクシェントFC」が35MPa、ニコラ「トレFCEV」が70MPaの高圧タンクを採用している。また低温・高圧の極低温圧縮水素(CcH2)を使う場合はさらに高価な複合容器が必要となる。sLH2のタンクはLH2より高圧とはいえ1.6MPaで、安価に製造できる。

 ほかにも一定の圧力で自動停止するため車両・ステーション間での複雑なデータ通信が不要となり安全性が高い点や、LH2より高いエネルギー密度、燃料補充が簡素化され10~15分で完了する点など、液体水素の活用に向けて期待が大きいのがsLH2充填技術だ。

 なお、ダイムラーはsLH2をオープン技術とすることを検討しているそうだ。その目標は他社とのコラボレーションと自動車用の燃料補充技術の協同開発により、新しい充填プロセスを液体水素を扱う際の標準規格としてグローバルな市場で確立することだ。

GenH2トラックとダイムラーのデュアルトラック戦略

液体水素の燃料電池トラックがついに顧客の元に! アマゾンなどがダイムラー「GenH2」のトライアル実施へ!!
ダイムラーはバッテリーEVと燃料電池のデュアルトラック戦略を進めている

 GenH2の開発においては積載量と航続距離、パフォーマンスなどメルセデス・ベンツの「アクトロス」長距離輸送用大型トラックが基準になっている。

 トライアルでは、連結総重量(GCW)40トンに対して積載量は約25トン。sLH2に対応する特殊な水素タンク2基と、セルセントリック(ダイムラー・ボルボ合弁の燃料電池システム開発企業)製の燃料電池により積載量と航続距離を両立させる。

 液体水素タンクはステンレス製でタンク1基が44kg、合計で88kgの水素を充填できる。タンクは入れ子になった2重のチューブ状で、低温を維持するためその間は真空断熱されている。

 燃料電池システムの出力は300kW(2×150kW、約402hp)。加えてバッテリーが(一時的に)400kWを追加で供給可能。70kWhのバッテリー容量はBEVと比較すると少ないが、走行用のエネルギー供給を主目的とするわけではなく、加速時やフル積載での登坂路など、ピーク負荷時に燃料電池をサポートするためという考え方だ。

 重量が嵩むバッテリーの容量を抑えることは積載量の確保につながる。制動時のエネルギー回生や燃料電池システムの余剰電力を蓄えるのもバッテリーの役割だ。燃料電池・バッテリーともに熱管理システム(冷却・加温)が最適な動作温度を保ち、耐久性の確保に貢献している。

 量産前の段階では2基の電動モーターが2×230kW(連続)・2×330kW(最大)を発揮する。単純計算で駆動系の出力は最大660kW(約885hp)となる。

 世界最大の商用車メーカーの一社であるダイムラー・トラックはパリ協定にコミットし、コア市場(欧州、米国、日本)で提供する車両を2039年までにCO2ニュートラル化する。そのため同社は、2030年までに燃料電池トラックを量産化することを目指している。

 バッテリーEVトラックは集配送には最適で、最近発売された「eアクトロス600」だと決まったルートを走る路線便なら(経路の途中での充電が可能なので)長距離輸送も視野に入る。しかし重量物輸送やより柔軟な長距離輸送を行なうには、燃料電池トラックがより優れたソリューションとなるだろう。

 ダイムラー・トラックは、迅速かつコスト効率に優れた方法でエネルギー移行を進めるには両方の技術を活用する必要があると確信しており、一貫してデュアルトラック戦略を採用している。

【画像ギャラリー】ダイムラー「GenH2」トラックと1000kmを走破したハイドロジェン・レコード・ランの様子(11枚)画像ギャラリー

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