フィアット、シトロエン、オペル、プジョー、ダッジ、アルファロメオ、ランチア、ボクスホール……。2021年に誕生したステランティスは、乗用車のグループと思われがちだが、グループの収益の3分の1は商用車事業によるものだ。
2023年に傘下の6ブランドによる「プロワン」が導入され、電動化を契機に2027年までに商用車で世界市場のリーダーに、2030年には同部門の収益を2倍にするという計画だ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Stellantis N.V.
商用車で攻勢をかけるステランティス
FCA(フィアット・クライスラー)とPSA(プジョー・シトロエン)の合併により2021年に誕生したステランティスは乗用車のグループというイメージが強いが、このところ商用車事業を強化している。
グループの「Dare Forward 2030(デア・フォワード20230)」戦略で、2030年までに商用車事業の収益を2倍にするという目標を掲げ、2023年10月には傘下の6つのブランドによる商用車事業として「プロ ワン」(Pro One)の導入を発表した。
(シトロエン、フィアット、オペル、プジョー、ラム、ボクスホールの6ブランド)。
プロフェッショナル向けの製品(=商用車)で世界的なリーダーシップを確立するため、攻勢を強めているのだ。
セグメントとしては、バン型車とピックアップトラック、超小型モビリティをカバーし、内燃エンジンのほかバッテリー電気、水素燃料電池、レンジエクステンダーなど豊富な電動化オプションを用意している。
電気自動車の販売構成比を40%とし、2030年までに自社の炭素排出量を半減させるという計画で、いわば「電動化」という変革を機会として、商用車の市場シェアを一気に伸ばそうという戦略である。
ステランティスは2023年に燃料電池技術のリーダーであるシンビオ社(ミシュランなどが合弁で設立)に出資し、株式の3分の1を保有しているが、これを受けて2024年1月29日には燃料電池バンは早くも第2世代に刷新された。
燃料電池システムを内製化し、航続距離は中型バンで400km、大型バンで500kmに達した。4~5分という燃料の充填時間はBEVに対する優位点となっている。
商用車事業が収益の3分の1に
ステランティスが2024年2月28日に発表したところによると、商用車部門である「プロワン」は同グループの純収益の3分の1を占め、グローバル市場での強さを見せつけた。
2027年までに商用車分野で世界のリーダーになるという計画は確実に軌道に乗っているようだ。
商用車とBEV分野では欧州30か国でのマーケットリーダーの地位を強化し、南米でも市場シェア1位の座を獲得した。中東とアフリカではシェアを7%ポイント増やし、第2位の座に躍り出た。北米市場ではバンセグメントで20%の市場シェアを獲得し、第2位に浮上し全体では3位となった。
また、バンのほか「1トン ピックアップ」も躍進の原動力になっている。
これらの数字からは、ステランティスが商用車事業を強化したことが奏功していることが窺える。
ステランティスの商用車事業担当副社長のザビエル・プジョー氏のコメントは次の通りだ。
「2023年の当社の業績を見ると、ステランティスの世界戦略において『プロワン』が要石となっていると言えるでしょう。バンのラインナップ全体を刷新し、世界で最も広範囲の電動車を揃えたことで、ステランティス・プロワンは最も顧客を重視した製品になると確信しています。
2027年に商用車分野のリーダーになるという目標は、お客様のおかげで達成できそうです」。
ちなみに日本市場ではキャンピングカーの販売が伸び、アジア太平洋地域でフィアット・プロフェッショナルの業績がプラス86%となるなど、グループをけん引したという。
小型商用車は伝統的に日本メーカーも得意とするところだが、電動化を契機に攻勢を強めるステランティスと、グローバル市場での競争がますます激しくなりそうだ。
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