EVなのに4万リットルの燃料タンク? ダイムラーが航空機給油車を始めて電動化!

EVなのに4万リットルの燃料タンク? ダイムラーが航空機給油車を始めて電動化!

 「レフューラー」とも呼ばれる航空機給油車は、名前の通り航空機に給油するための車両で、空港のグランドハンドリング(地上支援業務)には欠かせない特殊車両だ。

 4万リットルの燃料タンクを搭載しながら、トラックもボディも純電動という航空機給油車をダイムラー・トラックが初めて製造し、排出ゼロに向けて先進的な取り組みを行なっているシュツットガルト空港に納車された。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG

航空機給油車を始めて電動化

EVなのに4万リットルの燃料タンク? ダイムラーが航空機給油車を始めて電動化!
eエコニックの航空機給油車

 2024年3月1日、ドイツのダイムラー・トラックグループのメルセデス・ベンツ・スペシャル・トラックスは全電動の給油車をシュツットガルト空港に納車した。ベース車両はダイムラーのバッテリーEV(BEV)低床トラック「eエコニック」だ。

 航空機の給油サービスを行なっているスカイタンキング社が使用する車両で、4万リットルのタンクを搭載するボディも電動となっている。エステラー社が開発したボディは車両の走行用バッテリーから(電気で)動力を取り出しており、電動ポンプの駆動に用いる。

 ダイムラー・トラックのBEVトラックとしては初めての航空機給油車であり、シュツットガルト空港でもこのクラスの車両を電動化するのは始めてとなる。純電動なので騒音と熱の発生が抑えられ、もちろん車両はCO2やPM(粒子状物質)を排出しない。

 グランドハンドリングは車両の近傍で行なわれるため、これらの利点は作業員に大きなメリットがあるという。

 各社は次のようにコメントしている。

 「局所的にCO2を排出しないeエコニックの用途が広がっていることを嬉しく思っています。今回、初めてタンク車としての架装を行ないました。純電動トラックにより、シュツットガルト空港のグランドハンドリング業務の排出削減を支援します」。
(メルセデス・ベンツ・スペシャル・トラックスのトップ、フランツィスカ・クスマノ氏)

 「この車両は、弊社としても初めての純電動タンカーとなります。総重量50トンを超える高パフォーマンスの商用車の開発は、私たちにとっても特別な挑戦でした。インターフェースから高電圧技術まで、適切なコンポーネントを選定することはパフォーマンスを最適化するために欠かせません。eエコニックは架装スペースが広くとれるので、弊社の安全技術や制御技術もうまく搭載することができました」。
(エステラーのマネージングディレクター、ユリア・エステラー氏)

 「新型航空機給油車のテストは順調です。バッテリーの充電時、ケロシン(飛行機の燃料)の積載時、航空機への給油中のいずれも作業はシンプルで安全です。航空機への給油のために私たちが必要としているのは、途中で充電することなく1日の業務を行なえることです。このプロジェクトで集めたデータが未来に向けた出発点となります」。
(スカイタンキングのネットワーク・IT担当地域マネージャー、オスカー・サナブリア氏)

低床BEVトラックに電動の4万リットルタンクボディ

EVなのに4万リットルの燃料タンク? ダイムラーが航空機給油車を始めて電動化!
低床トラックのeエコニックは視認性にも優れる

 純電動の「eエコニック」は低床トラック(低床キャブ)「エコニック」のBEVバージョンで、車両の全高は2.8メートル未満に抑えられ、航空機の翼の下を安全に通過することができる。これにより給油作業中に作業員が航空機の燃料タンク(翼の内部にある)の下から移動する必要がなくなる。

 また、パノラマウィンドウがもたらす前方の直接視界と、低い運転席の位置によりドライバーの視野が広く、様々な地上支援業務で混雑するエプロン(飛行機の駐機場)で優れた視認性を実現している。

 ウィンドシールドは温度制御が可能となっており、悪天候時も視認性を確保しているほか、助手席側は折れ戸となっており、天井から床まで視界を遮るものが無い。

 こうしたキャブデザインと、公道でも利用されるeエコニックの様々な安全機能により、全長18.5メートルという大きさの給油車を、人と車両と航空機が行き来するエプロンにも配備することができた。

 安全性に関しては緊急ブレーキの「アクティブ・ブレーキ・アシスト」(第5世代)のほか、バッテリーパック保護のため側方衝突防止用のセンサーが追加されている。

 eエコニックは駆動軸に電動機を組み込んだeアクスル(電動アクスル)を採用し、2基のモーターが330kW(443hp)の連続出力をもたらす。制動エネルギーは回生ブレーキにより電気に変換されバッテリーに戻されるが、これは給油車のようにストップ&ゴーが極めて多い車両にとって非常に有用だ。

 給油タンク用のポンプも電動化し、走行用のバッテリーから電力を得ているのも特徴の一つ。従来の電動給油車のコンセプトは、電動のボディをディーゼル車に載せるというものだったが、運行は明らかに簡潔になり、車両とボディを別々に充電する必要はない。

 ダイムラー・トラックとエステラーはユーザーインターフェースでも協力しており、バッテリーのSOC、残り航続距離、タンク内の残量、エネルギー消費量など、ボディ側の情報も含めて運転席を離れずに確認することができる。

次ページは : 革新的タンクボディと地上支援業務の電動化

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