重機やトラックのスケールモデルを専門とするケンクラフトの店主・ケンさんこと高石賢一さんは、自分でカスタムメイドのモデルを作ってしまう名手でもある。今回はそんなケンさんが手掛けたコンクリートポンプ車、「プツマイスターiONTRON」日本仕様をご紹介しよう。
文/高石賢一、写真/岡村智明
*2024年3月発行トラックマガジン「フルロード」第52号より
コンクリートポンプ車、「プツマイスターiONTRON」の日本仕様
皆さんはミニカーを改造して自分だけのカスタムカーを作ったことがあるだろうか? 無いものは作ればいいのではないかということで、今回はモデル化されていない筆者自ら制作したカスタムメイドモデルを紹介しよう。
商用車スケールモデルを手がけるドイツの老舗コンラッド製プツマイスターiONTRONは、メルセデスベンツがベース。日本仕様はスカニアベースで販売されているが、残念ながら同社はスカニアのキャブは作っていない。
昨年行なわれたプツマイスタージャパンの発表会で見せていただいた実車は、新鮮なカラーリングとともにカッコ良く、見た瞬間にこれは模型にしなければとなぜか使命感のようなものを感じた。
実車をおさらいしておくと、iONTRONの日本仕様はスカニア4軸シャシーがベースとなる。ブームは最大で42m。黒のブームに鮮やかなブルーのパイプが新鮮でカッコがいい。
従来はエンジンからPTOで出力をもらいポンプを稼働させるのだが、現場に電源があれば車両に装備された電源コードを繋ぎ、電気モーターでポンプを稼働させることもできるのだ。
電気モードの場合は完全にエンジンを停止してコンクリートを圧送することができる画期的なシステムだ。エンジンの時よりも格段に静かになりC02排出はほぼ0になるという。国内で導入され活躍する日も近いだろう。
自分だけのカスタムモデルを作る
スカニアのキャビンはRシリーズと比べると全体的に低い、いわゆるPキャブと呼ばれるタイプで、ドア後半のボディも短くルーフはロールーフだ。
スカニアをモデル化しているWSI・IMC・テクノの3社からPキャブのスカニアキャビンを見つけて交換すればと簡単に考えていたのだが、ネクストゼネレーションのPキャブのモデルがなかなか見つからない。
やっとWSIの中に標準ルーフのPキャブを発見、早速入手したものの、ロールーフに改造する必要があった。
写真であたりを付けて糸鋸でカット。プラ板でルーフをそれらしく作りボディと接着。合わせ部分を成形。ルーフは2台目用としてあとで3Dプリントで作り直した。写真のモデルではルーフ上部のプレスラインは表現していない。
せっかくなので手持ちの右ハンドル用インパネ等内装パーツ、ワイパー、ミラーと組み合わせ完璧な日本仕様を目指した。
当初シャシーはコンラッドをそのまま使い、ボディを載せ換えただけで完成させてみたが、どこか違和感を感じ実車を調べたら4軸のホイールベースが違うことが分かった。
またまたWSIの製品を探しまくり「ズバリ」が見つかり、なんとか入手。上に載せるポンプユニットに合わせフレーム後部を切断。リヤフェンダーも実車のように取り付けた。
この時点で高価なモデルを3台も分解して「3個1」という贅沢。さらにコンラッドのモデルでは適当に作られていたシャシー左右の補器類、装備品も再現。テールランプも実車に近いデザインのものを取り付けた。
今回WSIのモデル分解した感想は、モデルに選んだ車種を細部に渡って忠実に再現していることに感心、取り付けの方法も工夫が見られた。ただ、フロントタイヤの切れ角が少なく残念だ。
コンラッドは、たとえばメルセデスもマンもシャシーや補機類もほぼ同じパーツだったりするが、ポイントはしっかり押さえてある。フロントタイヤが実車同様に大きく舵が切れるのはさすがだ。
組み立ては、はめ込み、カシメを使い、ほとんど瞬間接着剤を使用していない。この設計思想は創業当時から変わっておらず、他社が中国で生産しているなか、かたくなにドイツの自社工場で生産している。物作りの哲学の違いが面白い。
さて、カスタムモデルの出来はいかがだろうか? 1台で自己満足しているのでは面白くないので100台くらい作れないかと関係各位に打診しているところ。これが実現するとKENKRAFTプロデュース、初のコンラッドとWSIのコラボレーションモデルとなるのだ。
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