■コツコツ真面目にやっていれば報われる社会を
記者/今回多くの出展車両が「電気自動車(BEV)」でした。それも遠い将来の乗り物、というより、条件が整えば市販できるようなコンセプトカーが多かったように感じます。この電動化をめぐる状況の変化についてはどうお考えでしょうか?
豊田会長/「やっと現実を見ていただけたんだな」というふうに思っています。わたくしは常々「マルチパスウェイが大事なんだ」と言ってきましたが、とはいえ「マルチパスウェイだけが正解で、BEVの一本足打法は不正解だ」ということを言いたいわけではありません。ただやっぱり実際に使う方、ユーザーがいろいろな選択を持って、それぞれの国や地方の道路事情やエネルギー事情に合わせて、「カーボンニュートラルへの道、山の登り方はいろいろあるよね、現実はこうですよね」ということを言い続けてまいりました。そういう現実の話が、やっと少しずつ理解されつつあるなと思っています。
(たとえばBEVに関して)「理想論」で規制を作られたら、一番困るのは一般ユーザーです。そしてやっぱり、一般ユーザーが喜ぶ現実を、誰かが伝えなきゃいけない。「BEVだけがたったひとつの選択肢だ」といわれていた時代に、(「マルチパスウェイが必要だ」というような)ああいうことを言っていたのはなかなかつらい思いをいたしました。ですけど、今は、前回のG7(広島サミット/2023年5月開催)でも、非常に現実的な意見を、日本政府に言っていただきました。 それに共感した国も多かったと思います。
ですから、そういう意味で、皆さまがた、メディアの皆さんには、ぜひとも「誰に情報を伝えるか」ということを考えていただきたい。やっぱりサイレントマジョリティ、コツコツ、コツコツ、真面目に生活しておられる人たちが、真面目にやっていれば報われるというモビリティ社会を作っていく、えー、そんな日本自動車工業会でもありますので、ぜひとも応援していただきたいと思っております。
記者/「モーター」から「モビリティ」に変わった、と聞いて、「もしかしてクルマはあまり出ないんじゃないか」と思って会場に来たら、実際にはわくわくするようなコンセプトカー、市販前提車がたくさん出ています。この点について、クルマ好きで知られる豊田会長はどうお感じになりましたか。
豊田会長/それは「モリゾウ」に聞いてますか? それとも「豊田章男自工会会長」ですか?
記者/では「モリゾウ」で。
豊田会長/今日ここではちょっと言いづらいなぁ(苦笑)。
記者/で、では豊田会長で。
豊田会長/はい、今回は(前回出展しなかったメルセデスベンツやBYDなど)海外からもご出展いただき、また、海外から記者さんやお客さんもたくさん来ていただけると思います。そうして来られる大半の方は、「どんなクルマでわくわくさせてくれるんだろう?」と思っていると思うんですよ。それで「モビリティに変わった」と言っても、そういう(クルマ好きの)方々の期待も裏切らない内容になっていて、本当に、出展社の皆さんには感謝申し上げております。
ただ、ひとつだけ言わせてもらうと、皆さん「電動化」と「知能化」ばかりで、それがちょっとどうなんだろうなと思います。どこもかしこも同じことを言っていたら面白くないでしょう。やっぱりそこに個性が出てほしかったなというのは思いますね。
記者/うちのサイトで(初日の段階で)一番人気はマツダのロータリーエンジンを搭載したコンセプトカー(「アイコニックSP」)でした。「そういうクルマをもっと」ということですよね。
豊田会長/そうそう。スバルさんも水平対向エンジン車を出してほしかった(笑)。
記者/飛行機が出てましたよ。
豊田会長/ああそうか、飛行機がありましたね!
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