伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ新世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、最新刊である14巻発売時点で、単行本累計発行部数350万部を突破。さらに2023年にはTVアニメ化が決定、すでに特報PVなども公開されている。
当連載では、同作品内で繰り広げられる『MFG』で活躍するドライバーや、主人公・片桐夏向の周囲を取り巻く人々など、魅力あふれる登場人物たちの人となりを分析し、そのキャラクターや人物像を明らかにしていく。
今回は、片桐夏向にとって最大のライバルとなるであろう、MFGの若き「皇帝」、ミハイル・ベッケンバウアーを取り上げる。天才的なドライビングスキルを持つ完璧な男が目指す場所とは?
文/安藤修也
マンガ/しげの秀一
■クールで冷静なサイボーグ
20歳のドイツ人ドライバー、ミハイル・ベッケンバウアーは、その細やかで正確な走法や振る舞いから、「精密機械」、「サイボーグ」などと呼ばれる。カーナンバーは「12」。つまり前シーズンにランキング12位を獲得しているのだが、彼が参戦したのはなんと前年のシーズン途中から。にも関わらず、”神フィフティーン(ランキング上位15名)”に名を連ねている実力者だ。
髪色はブロンドのようで、髪型はトップが七三でサイドは後ろに流している。ただし右側の前髪は視界に入りそうなほど長めだ。欧米人らしく、色白で鼻筋がとおっていて、アゴはシャープに尖っている。まさに「貴公子」、まるでディ○ニーの世界に登場する王子様のような整ったルックスだ。
このルックスに加えて、クールな表情と冷静沈着な性格を持ち合わせている。並べてみると、まるで『頭文字D』の高橋涼介のような雰囲気だが、今作では主人公の味方ではなく、強大なライバルとして立ち塞がることになる。
ちなみに、ラストネーム(苗字)の「ベッケンバウアー」は、サッカー好きなら誰でも知っている世界的なレジェンドプレイヤーと同じだが、将来、同氏に匹敵するほどのビッグネームになると言われてもうなづけるキャラクターだ。
■ベッケンバウアー対全ドライバーという構図
作中ではポルシェの育成システム出身と明かされている。その施設でも好成績を修めたエリート中のエリートだったという。関係者やファンからは「シュツットガルトからの刺客」とも呼ばれているが、「シュツットガルト」はポルシェが本拠地を置く場所。当然のごとく愛車は、純白のポルシェで、車種は718ケイマンS(ラウンド2からはGTSに変更)である。
ミハイル自身、自らのの出自を誇りに思っているようで、レース中に「偉大なるポルシェ」とも発言している。
初登場シーンは第3話。ラウンド1「小田原パイクスピーク」の予選で、走行中に「何もかもイージーすぎる……」とつぶやいており、どうやらモチベーションが上がっていない様子。さらに、「本気を出して戦うべき対象を見つけられない」「ここはボクがいるべき場所ではなかった……」とMFG参戦2年目第1戦にして、すでに目標を見失っているようだった。
結果、ラウンド1の予選では2位グリッドを獲得。スタート時、前方にいるのはポルシェGT3を駆る石神風神で、2年連続チャンピオンを獲得したドライバーだ。
しかしベッケンバウアーは、このナンバー1に対して、「あなたにそのクルマを駆る資格はあるのか……」と問いかける。「アジアのすみっこの貧相なサル民族に……ゲルマン民族が作った最高傑作のシートに座る資格はあるのか!?」と若干こじらせつつも、決勝レースでは石神を軽くパスしている。
この時の走りは、モンスターマシンのポルシェGT3を相手に、まったく力んでおらず、力を出し切ってるような感じもない。力を持て余しながら開幕戦優勝を果たしている。ほかの神フィフティーン(ドライバーたち)がベッケンバウアーの牙城をいかにして崩すか、それが今シーズンのMFGの基軸となった瞬間である。
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