アウトランダーPHEV 700km乗ってわかった技術の力、ブランドの力、進化の力


■【開発者インタビュー】気持ちよさの秘密と4WDであること

文:ベストカーWeb編集部×上平真(アウトランダーPHEV 開発者)

ベストカーWeb編集部(以下、編集部) まずは上平さんがこのアウトランダーPHEVの開発に携わったのは何年頃からかをお教えください。

上平真(以下、上平) 2009年頃、このアウトランダーPHEVがデビューしたのが2013年1月ですから、開発初期の頃からずっとやっています。初期メンバーで残っているのはもう私くらいですね(苦笑)。

 ただこう日々改良していくなかで、世界中を回らせていただいて、個人のお客様からディストリビューター(販売店)の皆さんとお話させていただいて、このクルマの一番いいところはどこなのか、という情報を集めて、どこを伸ばせばよりよくなるのか、というところを集約して改良を進めてきました。

編集部 その「一番いいところ」はズバリ、どこだったんですか。

アウトランダーPHEV 開発者である上平真さん

上平 モーター走行が生み出す気持ちいい走行性能です。カテゴリーは違いますけれども、日産さんのノートe-POWERが評価されているのもそこじゃないですか。

 このモーター走行の楽しさに関しては揺るぎないものがあって、そこは伸ばしていこう、という考え方の背骨みたいなものは、ずっとありました。

 また、私ども三菱自動車はずっとSUVを作ってきました。この分野に関してはパイオニアであるという自負もあります。

 そうなるとSUVの特徴である「室内が広い」だとか「荷物がたくさん積める」だとか、あるいは「エコカーなのに4WDである(=悪路走破性が高い)」、

 そしてこれは私自身がこのクルマを使って実感しているところなんですが、「長距離ドライブでも疲れにくい」という点。

 これらがこのクルマの長所であり、伸ばしていけるポイントだと思っているんです。

編集部 わたしたちは今日、東京からここ(愛知県岡崎市)まで約350km走ってきたんですけども、確かに疲れ方が全然違いました。これは驚いていたところです。

上平 そこは自信があるところなんです。私の実家は長崎なんですが、ここから長崎まで帰る時に使っても(約920km)、大阪とか岡山くらいまでしか走っていない感覚で、長崎まで走れるんですね。

編集部 なるほど。

上平 それとモーター走行領域が多いと、乗り物酔いもしにくいんです。加減速のショックが少ないことや、車高が高くて足回りをしっかり作り込んでいることも大きいのですが、子供を乗せても酔いにくい。

編集部 ああーそれは世の中のお母さんがたは嬉しいでしょうね。

スタイリングとバッテリーも改良

上平 これは2代目アウトランダーを出した時によく言われたことなんですけれども、「もっと三菱らしくしたほうがいいよ」と言われたんですね。

 それで2015年のマイチェンで「ダイナミックシールド」と呼ばれる特徴的なフロントマスクにしました。この顔にする時に意識したのがデザイン耐久性です。特徴的なんですけども、すぐ飽きられてしまったら困るわけです。

 クルマというのは買ったら何年も、時に十数年乗り続けるものですから、そこは毎日ずっと見続けても飽きなく食傷気味にならないようなデザインにしなければいけない。そういう点で自信のあるデザインになっていると思います。

編集部 2017年モデルで「特にここを進化させた」という点をお聞かせください。

上平 いろいろあるんですが、まずは駆動用バッテリーですね。具体的に何をやったかというと、容量を増やしたわけではないんです。ベースは12KW。これは変わりません。

 ただ制御マネージメントを全面的に見直して、通常使用時のバッテリー出力を10%くらい上げてるんですね。

 そこを一割上げるとどういうことが起こるかというと、強めの加速でもエンジンがかかりにくくなって、EV走行が続くようになりました。

編集部 それは「燃費がよくなっている」ということなんですか?

上平 燃費というよりも、モーター走行の楽しさをより長く味わってほしい、という狙いが大きいです。

 このクルマが他社さんのハイブリッド車と大きく違うのって、「駆動用モーターのバッテリーが残り少なくなってハイブリッド走行に切り替わっても、そのバッテリーに電力が貯まればまたちょこちょことモーター走行ができる」という点じゃないですか。

 そうなると、そこでモーター走行できる時間を増やしてやると、楽な時間が増えるっていうことなんですよね。

編集部 EV領域を拡大したと。

上平 それと急速充電(80%充電)が30分から25分に短縮されています。最近、急速充電器は課金制になっているところも増えてます。そうなると充電時間は少しでも短いほうがいいだろうと。

編集部 「EVプライオリティ(優先)モード」も装着されましたが。

上平 実はこの機能は、営業からはずっと「付けてくれ」と言われていたんですけども、開発サイドが断っていたんです。

 「このクルマはもともとEVの頻度が高いし、バッテリーが回復すればまたEV走行できるんだから、いらないでしょう」と判断していたんですが、営業が言うには「選びたい」と。

 お客様は「自分のタイミングでEV走行したいんだ」と言うんですね。それとこれは北欧のお客様から言われたことなんですが、向こうのお客様はエコモードをよく使うんですね。

 エコモードを使うと暖房の効きが悪くなるんですけど、向こうではシートヒーターをONにして膝に毛布をかけて、寒さをしのいで乗っているんです。

 「そこまでしなくても……」と思うんですけど、彼らは「それでもエコロジーが大切だ」と言うんです。

 なぜかといえば、北欧は酸性雨の被害が大きくて、道路脇の枯木がひどいことになっている。そういう景色を日常的に見ていると、お子さんを持つお母さんなどは「(将来のためにも)少しでもEV走行したい」と考えるわけです。

編集部 環境問題が、生活に隣接した問題でもあるわけですね。

上平 そうです。あとは裏話として、お父さんが早朝、家族にこっそりゴルフへ出かける時に、なるべくエンジン音を出したくない……というような事情があったとしても、家の近辺だけは静かなEVだけで走りたい、というようなニーズにも応えられるわけです。

■走行性能と、S Editionへのこだわり

編集部 2017年型はS-AWCも進化しているんですね。

上平 はい。私はこのクルマを担当する前はずっとランエボを担当していたんですが、ランエボでやり切れなかったところを、このアウトランダーPHEVでやれているんです。

 具体的に言うと、このアウトランダーPHEVには前輪用と後輪用それぞれにモーターが入っている4WDなわけですが、これはS-AWCと非常に相性がいいんですね。

 S-AWCは前後のトルク配分をコントロールしてドライバーのステアリング操作により忠実に車両をコントロールする機構なんですけども、それを前後モーター駆動にしたことで、より自由度が高く、制御の細分化ができるようになった。

 しかも4WDなのにプロペラシャフトがないので、前後の干渉によるロスがまったくない。

編集部 ちょっと待ってください、上平さん、ランエボ作ってたんですか?

上平 そうです。このクルマを作っている初期段階は思い通りに曲がってくれなかったので、

 澤瀬さん(澤瀬薫/三菱自動車で長くランエボを担当したパワートレイン系エンジニア。4輪制御技術のスペシャリスト)に「なんとかなりませんか……」と相談したらこの開発に入ってくれて。毎年毎年調整してくれて、どんどんよくなっているんです。

編集部 エコカーで4WD、というのも珍しいですよね。

上平 そうなんです。4WD車はやっぱりプロペラシャフトを通さなくてはいけない関係で燃費に悪影響が出るため、エコカーではなかなか設定しないものです。

 しかしアウトランダーPHEVは前後別々のモーターで動かすので、駆動のロスがないまま4WDにできる。

編集部 そうかあ。そして何より、ランエボのDNAがこのアウトランダーPHEVに入っている、というのは感慨深いです。2017年型から「S Edition」という、走行性能にこだわった最上級グレードが設定されましたね。

上平 はい。欧州のお客様に「もうちょっとスパッと曲がるクルマにならないか」という要望がありました。

 それも「質感を持って曲がるクルマがいい」とおっしゃるんですね。欧州の田舎道をそれなりの速度で曲がっても、安定して走れるグレードがほしいと。

編集部 贅沢だなあ。

上平 そこをなんとかしなくちゃいかん……ということで、ビルシュタイン製のサスペンションを入れて、そのサスにキチッと仕事してもらうためにリア周りの剛性を上げています。SUVというと、どうしてもリア周りの剛性が足りなくなるんです。

編集部 まあセダンと比べるとバルクヘッドが一枚少ないわけですから、仕方ないですよね。

上平 そうなんですけど、なんとかリア周りの剛性を上げなきゃいけない。そこでリア周りの取り付け部に構造用接着剤を塗布して、ねじれ剛性を抑えたわけです。

編集部 それで「しっかり感」が出たわけですね。

上平 あとはホイールに使っている「ダーククロームペイント」って、ランエボXのファイナルエディションで使っていた色なんですね。やっぱり私もエボをやってきた人間ですから、そういうところはさりげなくですけど残しておきたかった。

編集部 ここにもエボのDNAが。

上平 ついでに言うと、S EditionのアクセルとブレーキペダルはランエボXのSST(スポーツシフトトランスミッション)と同じものなんですよ。

編集部 そうだったんですか! なんというか……これはかつてのランエボ乗りには感涙ものの心遣いですね。

上平 そう受け取っていただけると、作ったほうもありがたいです。

アウトランダーPHEVとともに

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 年々進化を続けるアウトランダーPHEV。それは初期開発から携わっている……いやそのずっと前から三菱を支え続けてきたランエボとその開発者たちのDNAが各所に息づいていた。

 そういえばランエボもデビューしてからも年々進化を続けていた。アウトランダーPHEVもまた、最先端技術を詰め込まれていながら、いや最先端であるからこそ、これからも歩みを止めずさらに進化を続けるのだろう。

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