しかも4WDなのにプロペラシャフトがないので、前後の干渉によるロスがまったくない。
編集部 ちょっと待ってください、上平さん、ランエボ作ってたんですか?
上平 そうです。このクルマを作っている初期段階は思い通りに曲がってくれなかったので、
澤瀬さん(澤瀬薫/三菱自動車で長くランエボを担当したパワートレイン系エンジニア。4輪制御技術のスペシャリスト)に「なんとかなりませんか……」と相談したらこの開発に入ってくれて。毎年毎年調整してくれて、どんどんよくなっているんです。
編集部 エコカーで4WD、というのも珍しいですよね。
上平 そうなんです。4WD車はやっぱりプロペラシャフトを通さなくてはいけない関係で燃費に悪影響が出るため、エコカーではなかなか設定しないものです。
しかしアウトランダーPHEVは前後別々のモーターで動かすので、駆動のロスがないまま4WDにできる。
編集部 そうかあ。そして何より、ランエボのDNAがこのアウトランダーPHEVに入っている、というのは感慨深いです。2017年型から「S Edition」という、走行性能にこだわった最上級グレードが設定されましたね。
上平 はい。欧州のお客様に「もうちょっとスパッと曲がるクルマにならないか」という要望がありました。
それも「質感を持って曲がるクルマがいい」とおっしゃるんですね。欧州の田舎道をそれなりの速度で曲がっても、安定して走れるグレードがほしいと。
編集部 贅沢だなあ。
上平 そこをなんとかしなくちゃいかん……ということで、ビルシュタイン製のサスペンションを入れて、そのサスにキチッと仕事してもらうためにリア周りの剛性を上げています。SUVというと、どうしてもリア周りの剛性が足りなくなるんです。
編集部 まあセダンと比べるとバルクヘッドが一枚少ないわけですから、仕方ないですよね。
上平 そうなんですけど、なんとかリア周りの剛性を上げなきゃいけない。そこでリア周りの取り付け部に構造用接着剤を塗布して、ねじれ剛性を抑えたわけです。
編集部 それで「しっかり感」が出たわけですね。
上平 あとはホイールに使っている「ダーククロームペイント」って、ランエボXのファイナルエディションで使っていた色なんですね。やっぱり私もエボをやってきた人間ですから、そういうところはさりげなくですけど残しておきたかった。
編集部 ここにもエボのDNAが。
上平 ついでに言うと、S EditionのアクセルとブレーキペダルはランエボXのSST(スポーツシフトトランスミッション)と同じものなんですよ。
編集部 そうだったんですか! なんというか……これはかつてのランエボ乗りには感涙ものの心遣いですね。
上平 そう受け取っていただけると、作ったほうもありがたいです。
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年々進化を続けるアウトランダーPHEV。それは初期開発から携わっている……いやそのずっと前から三菱を支え続けてきたランエボとその開発者たちのDNAが各所に息づいていた。
そういえばランエボもデビューしてからも年々進化を続けていた。アウトランダーPHEVもまた、最先端技術を詰め込まれていながら、いや最先端であるからこそ、これからも歩みを止めずさらに進化を続けるのだろう。
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