売れてる車がいいとはかぎらないし、いい車が売れるとはかぎらない。
ここが自動車製品の難しいところであり、面白いところでもあるのだが、実際に買おうと思っているユーザーにとっては、非常に気になるポイントだろう。
本企画では話題のクロスオーバーSUV最量販車である「人気車」トヨタC-HRと、フルモデルチェンジしたてで多くの有識者がいい! と認めている「実力車」スバルXVの頂上決戦を実施しました!!
文:渡辺陽一郎
ベストカー2017年6月26日号
■まずは「人気車」と「実力車」の違いと注意点
「人気車」とは基本的に販売の好調な車種のことだ。多くのユーザーが買っている以上は優れた商品と判断できる。今は昔と違って、宣伝効果だけでは売れゆきを伸ばせない。
ただし販売が低調だからダメな商品とも決め付けられない。典型的な例はスポーツカーだ。
今は居住性や積載性の優れた実用的な車種が売れ筋で、運転の楽しさ、外観のカッコよさなど、趣味性を重視するスポーツカーは全般的に販売台数が下がった。
それでも優れたスポーツカーが用意され、少数でもクルマ好きに愛用されている。
こういった車種は数が売れなくても商品の実力は高い。
ほかのカテゴリーでも、ボディが大きい、後席が狭い、価格が高いなどの理由で売れゆきを低迷させながら、人気車とは違う独特の魅力を備える実力車がある。そこに共感するユーザーに売れている。
クルマは基本的に移動の手段だが、運転感覚から内外装のデザインまで価値観の幅が広い。人気車と実力車が併存することも、クルマの世界が楽しい理由のひとつだろう。
そして人気車と実力車が生まれる背景には販売網の違いもある。例えばC-HRはトヨタ4系列の全店が扱うから、実に全国4900店舗が販売している。
いっぽう、XVを売るスバルは460店舗だから、その数はトヨタの10%以下だ。販売台数の違いを店舗数だけで評価することはできないが、10倍以上の開きがあると影響力も大きい。
ちなみにC-HRは2017年4月に1万3168台を登録した。トヨタの1店舗平均2.7台だが、スバルが同じ台数のXVを登録するには1店舗平均29台を売らねばならない。これは生産規模を含めて不可能だ。
なお、販売ランキングは単純に登録(軽自動車は届け出)台数を並べるデータだが、販売網の違いも考慮しないと人気度を見誤ってしまう。
■さていよいよスバルXVとトヨタC-HRを比べてみよう
スバルXVのベースは5ドアのインプレッサスポーツだから、SUVでも重心があまり高まらない。
しかも、現行型はプラットフォームを刷新したから走行安定性と乗り心地が優れている。最低地上高は200㎜を確保して悪路のデコボコを乗り越えやすく、4WDと相まって走破力が高い。
内装は上質で、現行型は後席の居住性が先代型以上に快適だ。安全装備は、緊急自動ブレーキを作動できる進化したアイサイトVer.3に加えて歩行者保護エアバッグも全車に標準装着した。
「では実際にトヨタC-HRとスバルXVを比べるとどうか?」というと、まず機能はXVが優れている。
SUVだから4WD同士で比べると、動力性能はC-HRの1.2LターボよりもXVの2Lが少し力強い。燃費数値も勝る。安定性は同程度だ。
取りまわし性はXVのほうがよく、C-HRはボディが短いが、後方視界がかなり悪い。最低地上高はXVが45㎜高い。
後席の居住性と荷室の使い勝手もXVが勝る。C-HRはデザインを優先させたので実用性がやや低い。安全装備もXVのほうが高機能だ。
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