■Modulo XでS660は熟成の域へ
2018年7月には、専用のカスタマイズパーツを量産過程で装着したコンプリートモデルの「S660 Modulo X」を発売。専用開発のサスペンションや、空力特性を活かしたパーツなど、スペシャリティカーとしてデビューしている。
また、2020年01月には、ヘッドランプやリアランプ、フロントグリルなどのエクステリアパーツを中心に変更したマイナーチェンジを行っており、S660はこの4月で、デビューから6年目を迎えようとしている。
ホンダには、他にもスポーティなN-ONE RSもある。ターボエンジンを積んだ6速MTの軽スポーツが、この令和の時代に2台もあるなんて、他メーカーではおそらくありえない。
諸先輩方のサポートを受けた若い開発主査のもと、運動性能設計のこだわりと、レイアウト設計の執念、そして車体設計の努力の末に生まれた、S660。S660はホンダだからこそできた、まさに奇跡のクルマだ。
■残り1年、世界に稀に見るミニスーパーカーが集大成へ
【文:ベストカーWeb編集部】
ついに、S660の終焉が発表された。2022年3月をもって生産を終了することがホンダから発表となったのだ。ホンダ関係者に取材すると生産終了の理由は主に法規対応の面とのこと。
衝突安全基準やブレーキ基準など複合的な規制強化などにより、マイナーチェンジレベルでの法対応が難しくなり、フルモデルチェンジ相当の改良が必要になるという関係者の証言もあった。
ミドシップスポーツという特殊性もあり、販売台数から見ればたくさん売れる車種ではない。ホンダとしては7年も生産を続けるのは楽ではないはずで、コストを考えたら生産終了という選択はやむを得ないだろう(寂しいけど……)。
当たり前に存在していたS660がなくなるというのは非常に寂しく、もっともっと身近にいてほしいなんて思ってしまうが、まだ1年間は生産期間は残っている。このタイミングでの発表はホンダからファンへ対する思いやりかもしれない。
当然ながら新車で欲しい場合は残り1年しかなく、欲しい人は後悔しない選択をぜひしてほしい。ビートなどが生産終了から今でも愛されていることを見るに、S660も希代の名車としてこれからもファンに愛される存在なのは間違いないだろう。
S660はあと1年間は標準車とModulo Xは引き続きこれまでのモデルは継続生産されるが、ファイナルエディションとして最後の特別仕様車も揃える。それがS660 Modulo X Verzion X(315万400円)だ。
特別色にシビックでも設定されているソニックグレー・パールを纏い、ブラッククローム調のエンブレム、ブラックホイール、専用アクティブスポイラーなどを装備したVersion Xだが、あえてMT設定のみとするなどピュアスポーツの花道を飾るにふさわしいモデルになる。
ラインで流れるモデルなのでVersion Zもノーマルモデルも台数限定ではなく、基本的にはしばらくこれまでどおりの受注は続く。しかしホンダ広報部によればS660全体の生産キャパシティは決まっており、生産ペースを超える受注がある場合は、早い段階で受注を締め切る可能性はあるとのこと。
価格の高騰や車両サイズ拡大で日本市場離れがささやかれるホンダだが、S660はホンダだからこそできた日本のホンダファンのためにだけ誂えたモデル。
ニッポンの至宝は開発陣の熱意とともに、1年後のゴールへ向かっての旅をスタートさせた。
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