■運転操作に徹するための内装設計
車内では、走行中の操作を第一に考えた縦型11.9インチの「メディアディスプレイ」(静電タッチ方式)の存在が大きく、ここでもSクラスとの共通項が見て取れます。
Sクラスの画面サイズは12.8インチと一回り大型ですが、新型Cクラスでは運転席側に6度傾けることで11.9インチながら操作性を高めました。数値の上ではわずかな角度ですが効果は大きく、走行中に身体へと伝わりやすい上下動のなかでも一発で目的の画面位置にタッチできます。
BMW3シリーズ、A4、ISともに静電タッチ方式を用いながら物理スイッチやコマンド形式のコントロール機能も併用します。センターコンソール下部に配置された物理スイッチは、S204(2世代前のCクラス・ステーションワゴンで筆者の現愛車)の「COMANDコントローラー」の操作に慣れた筆者にとっても親近感を覚えます。
しかしながらこの先、一般的になるであろうOTA(Over The Air/無線通信)経由による機能アップデートを考慮すると、メルセデス・ベンツが拡大採用を行なう静電タッチ方式による縦型画面は英断といえます。
残る物理スイッチは、ステアリング左右の操作スイッチです。正確には押しボタン式ではなくこちらも静電タッチ方式です。
試乗モデルは異形ステアリングで、スイッチはその左右に機能ごと上下2段にまとめられていました。無骨な車内にあってデザイン上のアクセントになるだけでなく、機能ごとにエリアが明確になるため運転中のブラインドタッチが行ないやすいといった特徴があります。
上下2段式のステアリングスイッチはオプションの「AMGライン」(326,000円)のパッケージに含まれます。標準では一般的な平面スイッチ(静電タッチ方式)で、ステアリング形状もAMGラインの異形ではなく標準タイプに。
こうした縦型画面と独創のステアリングスイッチ、そして「Hi,Mercedes!」に始まる音声入力コマンドのMBUX(Mercedes-Benz User Experience)などは、将来の自動運転社会を見越したHMI(Human Machine Interface/人と機械の接点)として注目されていて、こうしたところからも新世代のメルセデス・ベンツらしさを感じます。
■Cクラスらしく、そしてらしくない走行性能
新型Cクラスで筆者がもっとも驚き、そして感心したのが走行性能です。スペックの上では直列1.5L、4気筒ターボ+電動駆動の形式を踏襲していますが、エンジン型式だけでなく電動駆動の方法も新しくなりました。
出力は204PS/5800~6100rpmと従来型から20PS向上(発生回転数は同じ)、トルクは28.6→30.6kgf・mへと増強され、同時に発生回転数も3000~4000rpm→1800~4000rpmへと大きく拡大されました。
電動駆動の方式は、スターターとジェネレーター(発電機)を兼ねるモーターを、エンジンベルトを通じてクランクシャフトとつなげる「BSG」(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)から、フライホイール一体型のエンジンスターターの「ISG」(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)に変更。モーターもBSGの14PS/16.3kgf・mからISGでは20PS/21.2kgf・mへと増強されています。
ISGの恩恵は発進時から得られます。駐車場や渋滞時に多用する微速のアクセルワークに対して、車両重量1700kgの「C200アバンギャルドAMGライン/リア・アクスルステアリング装着車」ではメルセデス・ベンツが大切にしてきた“しずしずとした走り”が実感できました。
筆者の乗るC350(V型3.5L&7速ATで通常は2速発進、車両重量1680kg)は、1000rpmから30.0kgf・m以上のトルクを発生していますが、まさしく往年の大排気量エンジンが得意とする領域も新型1.5L+ISGはカバーします。
競合車であるBMW320(4気筒2.0Lターボ184PS/30.6kgf・m)、レクサスIS300(4気筒2.0lターボ245PS/35.7kgf・m)と比較しても、微速のマナーでは新型Cクラスが優位です。
こうした力強くフラットなトルク特性は4000rpmあたりまで続くため、山道や高速道路の本線合流時でも力強い加速が体感できます。ただ、その上の領域となると伸びは衰え始めます。
エンジンそのものはボア×ストローク比でほぼスクエア。高回転域までストレスなく回りますが、5000rpmを超えると明らかに加速力が弱まります。排気量が500cc大きい競合各車とはこのあたりで逆転するようです。
乗り心地はW204時代から具現化され、W205の後期モデルで一定の完成を見た俊敏性(アジリティ)と、往年のメルセデス・ベンツらしい滑らかさが融合したまったく新しいものでした。
具体的には、強靱な剛体によるガチッとしたボディと、取り付け剛性を格段にため前後サスペンションと優れたダンパーの摺動性によって、前後ピッチを抑えつつ、じんわりと車体をロールさせる乗り味が堪能できます。
W205初期モデルに見られた身体にズシンと響く衝撃はありません。また、遮音性も高く、ここも競合各車に対する優位点です。
リア・アクスルステアリングは必須オプション装備(145,000円)のひとつ。前述したAMGラインが必須オプションとなるため合計471,000円となるのでおいそれと手が出ません(単独オプション化を強く希望します!)が、悔しいほどに効果は絶大でした。
後輪操舵角度はSクラスの4.5度から新型Cクラスでは2.5度と小さくなりますが(いずれも最大値)、これはボディサイズに応じた慣性モーメントから計算された最適値です。
最小回転半径はW205の5.3mから5.0m(非装着車は5.2m)とホイールベースが25㎜延びているにも関わらず減少。ただし、全長が80mm延びているため実際には前後のオーバーハングが計55mm増えており、後輪操舵による小回り性能の効果はほどほどでした。
ではなぜ必須なのかといえば、走行中のボディサイズが格段に小さくなったように感じられるからです。カーブへの進入から旋回、脱出に至るまでドライバーのステアリング操作に対して遅れなく横Gが発生し、消滅していく、そんなイメージです。
後輪操舵の効果は30km/h程度からすでに実感でき、速度を上げた山道では「Mercedes-AMG A 35 4MATIC Sedan」を超える俊敏性と、メルセデス・ベンツらしい滑らかな乗り味が実感できます。
こうした効果はSクラスでも感じていたことですが、ボディサイズの小さなCクラスでは、さらにこの特性が強く感じられます。今回は試すことができませんでしたが4つのタイヤが効率よく働く(≒摩擦する)ため、緊急回避性能も高まっているのでないかと推察。いずれにしろ、この走りは異次元でした。
もっとも、走行性能に大きな違いがあるので独特の運転操作が必要です。リア・アクスルステアリングを装着したSクラスと同じくロック・トゥー・ロック約2回転のステアリングギヤ比になることも考慮して、いつもの運転操作から気持ち早めに、そしてゆっくりとした荷重移動とステアリング操作を行なうと、ドライバーだけでなく同乗者にも気持ちのよい走りが楽しめます。
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