課題もけっこう多い? 「伝統的価値観」とはかなりのギャップも?? クラウンクロスオーバー公道初試乗でわかったこと

■使い勝手に優れた「マルチパーパスカー」

着座位置が高く乗り降りがラク!
着座位置が高く乗り降りがラク!

 新型クラウンは『クロスオーバー』の名が示すように、最低地上高を一般的なセダンより20mm程度高い145mmまで高め、全高が1540mmとなるのがポイント。

 フロアが高いので前後席ともに座面が高く、乗降性に優れている。

 225/55R19~225/45R21という、SUVサイズの外径の大きなタイヤを履き、艶消しブラックのフェンダーモールをまとったエクステリアはまさにセダンとSUVのクロスオーバー。

 リフトバック風の傾斜角のリアウィンドウはラウンドしたルーフラインからつながり、4ドアクーペというか、ファストバック的なプロポーションを作り上げている。トランクは別体の3BOXだ。

前席の座面地上高は630mm、後席は610mmで、一般的なセダンに対し20mm程度高い。これによって乗降時にスッとお尻の出し入れができ、膝をかがめる負担が軽減されたのは嬉しい
前席の座面地上高は630mm、後席は610mmで、一般的なセダンに対し20mm程度高い。これによって乗降時にスッとお尻の出し入れができ、膝をかがめる負担が軽減されたのは嬉しい

 新型クラウンのボディサイズは全長4930mm、全幅1840mm、全高1540mmでホイールベースは2850mm。

 カムリやRAV4、ハリアーなどにも使われる「GA-Kプラットフォーム」をベースに、リアマルチリンクサス周りなどを完全新設計。

 長いホイールベースによる、後席居住性の高さも特筆ポイント。使い勝手に優れたマルチパーパスカーが新型クラウンクロスオーバーだ。

■キャラクターはかなり強烈 インテリアについてはビジネスライクすぎるか

運転していて「おっ!」という新鮮な驚きはあまり感じないのだが、これこそが開発陣の狙ったところ。「意識させないよさ」だ
運転していて「おっ!」という新鮮な驚きはあまり感じないのだが、これこそが開発陣の狙ったところ。「意識させないよさ」だ

 新型クラウンクロスオーバー初試乗に用意されたのは、THS方式の2.5Lハイブリッドモデルのみ。

 生産立ち上げ時期などの関係で、注目の6ATと2.4Lターボハイブリッドは「次回のお楽しみ」となった。

 こうなると、われわれジャーナリストの悪い癖で、つい先まわりして「GA-Kプラットフォームに2.5LのTHSだから、基本はRAV4といっしょだよね」てなことを言いがちになる。

 まぁ、大きなくくりでは、あながちそれも間違いじゃない。

 最初はモーターで転がり出して、アクセルを踏み込むとシュンとエンジンが掛かり、前後モーターの力強いアシストともに加速する。お馴染みトヨタハイブリッド(E-Four)の乗り味だ。

 しかし、基本プラットフォームとパワートレーンを共用しつつも、新型クラウンのキャラクターはかなり強烈だ。

 まずエクステリア。これは言葉で説明する必要はないと思うけど、実車はボリューム感があって写真以上に存在感アリ。

 街を走っていても周りの注目度も高く、「おっ、もう売ってるんだ!」とか、「これが新型クラウンですか!?」といった声をかけられることもしばしば。劇的に変貌したクラウンの認知度はかなり高いことがわかる。

 いっぽう、インテリアについては率直に言ってビジネスライクすぎると思う。

 内装各部に使用されるマテリアルも、高級車としては「中の下」といったところで、伝統的なクラウンの価値観とはかなりギャップがある。

 最近のトヨタ車としては珍しく「見えるところを削ったな」とキツイことを言いたくなる。

■シャシー性能は徹底的に磨き上げられた

ラウンドしたルーフラインからつながるトランクリッド。ファストバッククーペのようなフォルムが特徴的なクラウンクロスオーバー
ラウンドしたルーフラインからつながるトランクリッド。ファストバッククーペのようなフォルムが特徴的なクラウンクロスオーバー

 そのかわりと言ってはなんだけど、シャシーはかなり凝ってるし、お金もかかってる。

 リアサスをまるまる新設計のマルチリンクとしたほか、後輪操舵システム(DRS)を全車に標準装備。ナックルをアルミ鍛造製とするなど、気合の入り方は尋常じゃない。

 その成果は操安性と乗り心地にしっかり反映されたと言っていい。

 恥ずかしながら、DRSがあまりに違和感なくシャシーに統合されているもので、最初は「このグレードには付いてないのかな?」と勘違いしたほど。

 でも、スッとスムーズに横移動する感じの高速レーンチェンジや、狭い市街地で縦列駐車がやけにラクチンなんだよねぇ……。で、エンジニアの人に確かめたら「全車標準です」というお答え。

 残る課題は平滑な路面でもわずかに残る“ぴょこぴょこ”した乗り心地だが、それをクリアしたら「新型クラウンでGA-Kプラットフォームは一皮むけた!」と絶賛しますよ。

 以上、クラウンという大きな物語の1ページ目を記すファーストインプレッションだけど、今後予定されているモデルバリエーションが登場するたびに、この物語はつぎつぎ書き換えられていいくんだろうね。

●トヨタ クラウンクロスオーバー(G アドバンス)主要諸元
・価格:510万円
・WLTCモード燃費:22.4km/L
・全長:4930mm
・全幅:1840mm
・全高:1540mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:1770kg
・最小回転半径:5.4m
・最低地上高:145mm
・エンジン:直列4気筒DOHC、2487cc
・最高出力:186ps/6000rpm
・最大トルク:22.5kgm/3600-5200rpm
・フロントモーター出力/トルク:119.6ps/20.6kgm
・リアモーター出力/トルク:54.5ps/12.3kgm
・システム出力:234ps
・サスペンション:ストラット/マルチリンク
・タイヤサイズ:225/55R19

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