■「1mmも変えない正義感あふれるコンセプト。クルマの挙動も自然体」島崎七生人
第一印象は、顔つきが実に(今の)フィアット・パンダっぽい……だった。
といってもコレは一種の褒め言葉であり、従来モデルより遥かに外連味(けれんみ)のない自然体の外観デザインは、誰にでもスンナリと受け入れられるものだと思う。
アーバンカーキ、ベージュ、グレイッシュブルーなどの「道具感」を盛り上げるボディ色もグッド。
メーカーパッケージオプションの内装色カーキを選ぶとかつてのファンカーゴのようにBピラー部分がボディ色となるのはルノー・カングー、シトロエン・ベルランゴを意識してのことか?
CE(チーフエンジニア)の鈴木啓友さんの話によれば「取り回し、視界、燃費を考えれば“小さければ小さいほどいい”は、3列シートのトヨタの最小ミニバンであるこのクルマの価値」といい、たとえば全長×全幅は1mmも変えなかったという。
そんな正義感あふれるコンセプトがいい。
確かに街中での取り回し……ステアリングを切った時の操作に対するクルマの挙動の自然さは印象的。それと、ショートスロープを発明。車椅子の乗せ降ろしを一気に楽にしたウェルキャブには愛がある。
「全車15インチの省燃費タイヤとし、乗り心地も大事にした」(鈴木CE)といい、乗り味は現行アクアに通じる、タプッ! と神経を逆撫でされない快適なもの。
街中での乗り味はスムーズだし、高速走行での安定感も高い。このあたりは、ひと昔前のコンパクトミニバンから大きく進化した部分だ。
9月の販売台数で早くも宿敵モデル、ホンダ・フリードを負かしており、これからグングンと台数を伸ばす人気車となるのは間違いない。
●島崎 七生人のトヨタ シエンタ採点表
・使い勝手:10点
・走行性能:10点
・内外装の質感:10点
・乗り心地:10点
・新しさ:9点
・コストパフォーマンス:10点
(TEXT/島崎 七生人)
■「使う側のことを真面目に考えた細かな機能に大感動!」竹岡 圭
これくらいが適切とボディサイズをむやみに大きくせず、重箱の隅を突っつくようにパッケージング力を磨くことで空間スペースを広げ、3列シートプチバンの真の進化を見せてくれたところが凄いと思いました。
例えば「2列目の開口部高さを上げることで、腰を屈めずに乗り降りできるようにした」。
これは、チャイルドシートに座るくらいのお子様がいるママに優しい配慮だったり、はたまたご高齢者の方の乗り降りにも優しいですよね。
はたまた「2列目の足元空間にスーパーの買い物カゴがストンと置けるようにした」。
これは運転席の横に立って、スライドドアを開け荷物をポンと置き、そのまま運転席に乗り込んで移動。
降りる時も助手席や後方など、他に回り込む必要がないので、毎日のこととなるとかなり便利だったりします。
つまり、プチバンの使われ方を考慮し、一見地味なようでも、本当に必要なものは何かを重視して進化させてきたんだなぁと、ユーザーに感じさせるのが凄いところなんです。
そういう意味で、かなり感動したのがインナードアハンドル。
小柄な方だとドアが大きく開いてしまった場合、掴むところに手が届かなくて大変だったりするんですけど、前席は窓のすぐ下に広い横長のくぼみがあって、とっても掴みやすいんです。
しかも、裏側にきちんと指が引っかかるような凸凹もついています。
後部座席用はBピラーの裏側あたりに縦長に設けられているのですが、外側に出っ張ってないので乗り降りの際に邪魔にならないけれど、しっかり指を引っ掛けられるという絶妙感。
かなり地味ですが感動ポイントでした。
●竹岡 圭のトヨタ シエンタ採点表
・使い勝手:10点
・走行性能:10点
・内外装の質感:9点
・乗り心地:10点
・新しさ:8点
・コストパフォーマンス:10点
(TEXT/竹岡 圭)
●トヨタ シエンタ(Z・7人乗り)主要諸元
・全長:4260mm
・全幅:1695mm
・全高:1695mm
・ホイールベース:2750mm
・車重:1370kg
・エンジン:1.5L、直3DOHC+モーター
・最高出力:91ps/5500rpm
・最大トルク:12.2kgm/3800~4800rpm
・モーター:(F)80ps/14.4kgm(R)3ps/4.5kgm
・WLTCモード燃費:28.2km/L・価格:291万円
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