レクサス版「LM」なぜ発売? 豪華すぎる中身と市販化のワケ

レクサス版「LM」なぜ発売? 豪華すぎる中身と市販化のワケ

 いまや日本を代表する高級ミニバンにすっかり定着したアルファード/ヴェルファイア。2019年3月の販売台数は、それぞれ7596台と4626台で合計すると1万2222台。

 この台数は日産のセレナに匹敵し、クラウン(同5748台)を遥かに凌ぐ数値。いまやミニバンとしてだけでなく、高級車としてもその存在感は大きくなっている。

 そんなアルファード/ヴェルファイアをベースとしたレクサスの新型ミニバン「LM」が、中国で発表されたのだ。“アル/ヴェル”で充分豪華かつ高級にも関わらず、なぜわざわざそのレクサス版を発売するのか? その狙いとともに、レクサス LMのアル/ヴェルをも上回る豪華すぎる中身を解説。日本導入の可能性も高まっている。

文:鈴木直也、ベストカーWeb編集部/写真:TOYOTA
ベストカー 2019年5月26日号


なぜ? アルファードのレクサス版を作る狙いとは

上海ショーで公開されたレクサス LM300h。同モデルは2.5Lハイブリッドで、ほかにV6・3.5Lエンジンを搭載するLM350も用意される

 2019年4月16日の上海モーターショープレスデイでレクサス初のミニバン「LM」が発表された。

 ご覧になればわかるとおり、これはアルファード/ヴェルファイアのレクサスバージョン。レクサスファミリーに共通するフロントマスクや、サイドに配されたクロームの加飾を取り除けば、外観はほとんどアル/ヴェルと変わっていないことがわかる。

 しかし、実は中身の充実ぶりが凄いのだ。

 チーフエンジニアの吉岡憲一氏によると、アジア圏(とりわけ中国)のショーファードリブンカーの需要拡大は著しく、プレミアムミニバンの広さ、快適性を味わってしまうと、どんな豪華セダンでも狭苦しく感じて戻れなくなってしまうという。

 現状でもアルファード/ヴェルファイアがその需要を満たしていたのだが、富裕層の要求はアルファード/ヴェルファイアでは満たしきれないところまでエスカレート。

 ついに、レクサスブランドで究極の豪華ピープルムーバーを企画することになったというわけだ。

豪華なアル/ヴェルのさらに上を行く驚きの設計

レクサスLMの内装。3列目を廃し、2名掛けとして後席の快適性に特化。ミニバンの枠を越え、上級セダンにも劣らないパッセンジャーファーストの設計とされている

 したがって、開発で最も力を入れたのは、後席パッセンジャーの快適性向上。展示車両はBピラー部分に固定のパーティションが設置されていて、後席はゆったりとした2座配置。アルファード/ヴェルファイアベースなのに、乗車定員4名という贅沢なパッケージングとなっている。

 そのパーティションだが、単なる樹脂の壁ではなく、内部にスチール構造材を仕込んだがっちりとした作り。吉岡氏によると、その強度は「ほとんどロールバー並みで、ボディ剛性アップにも貢献しています」という。

 パーティション上部のガラスは、液晶シャッターによって一瞬でクリアからスモークに切り替えられるほか、必要なら電動で昇降させて前席とコミュニケーションをとることも可能。また、ここには26インチ液晶モニターやワインクーラーが標準で装備される予定だ。

 シートにも周到な気配りがほどこされている。シート内部のウレタン層の下には、低反発枕などに使われる粘弾性ウレタン層があり、シートそのもののダンピング効果をアップ。

 さらに、シートレールの剛性不足からくる不快な振動を抑制するため、後席はスライド機構を廃した固定式として、肘掛部分がそのままフロアに剛結されている。

 そうなると、残る震動源はバックレストになるが、バックレストにはご丁寧なことに4つのダイナミックダンパーが仕込んであるという。

 ほかにも、足回りではスイングバルブ式ショックアブソーバーを採用するなど、乗り心地を中心としたセッティングをさらに煮詰めているそうで、とにかく、乗り心地と静粛性についてはミニバンの常識を超えたレベルを狙っているとのことだった。

【鈴木直也】

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